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    スルガ銀行役員訴訟ー営業に形骸化させられた審査部門の長(M氏)

    スルガ銀行とスルガ銀銀行旧役員陣との熾烈な法廷バトル。
    2023年12月より続々と証言台に立つ当時の関係者たち。
    当日、実際に参加した方々から得た証言や裁判資料をもとに記事にしてみました。
    もし事実と相違がある場合はご指摘願いたい。
    今回の記事は審査部門長のM氏である。

    2023年12月1日、スルガ銀行の不正融資問題に関する役員責任追及訴訟で、融資審査を担当していた元行員のM氏が証人尋問に立った。M氏は1990年にスルガ銀行に入行し、2011年から2018年まで審査部門に所属。首都圏を担当する審査第二部長を務めていた。

    スルガ銀行の審査部長というポジション

    M氏は、審査担当代理部長への就任について「当時の上司であったM間さんの方から、私が審査代理部長に就任したのはA生氏の指示によるものだと聞きました」と証言。A生氏は営業部門のトップで、人事に対しても強い影響力を持っていたという。

    A生氏から融資審査への不当な介入については「否定的な意見を述べた審査担当者に対しては激しく叱責したり、異動させたりすることもあった」と明かした。

    審査での指摘について「当初、稟議書に問題点を記載していたが、Y沢さんから『みっともないから詳しく書くな』と指示された」という。Y沢氏は当時の審査部門の執行役員だった。

    シェアハウス問題に対して

    2015年2月、副社長の喜之助氏からスマートライフとの取引禁止指示が出された。M氏は「喜之助さんから直接指示を受けたわけではなく、上司のM間さんから聞いた」と証言。その後、スマートライフの関連会社アマテラスについても取引禁止となったが、「これも喜之助さんの指示だと推測していました」と述べた。

    しかし2016年頃から、イノベーターズという会社にシェアハウス案件が集約されていることに気づいたという。「営業担当者に確認したところ、イノベーターズとスマートライフは無関係だと回答されました」と明かした上で、M氏は「もしかしたら、かぼちゃの馬車がフランチャイズで展開されているかもしれないという意見もあったため、帝国データバンクの方に調査をしてもらったところ、かぼちゃの馬車と名のつくものは全てスマートライフだった。それに伴ってスマートライフの物件を見ていくと、イノベーターズの承認したものがかぶった場所になっている」と疑惑を持っていたと主張。その上で「審査役を通して2名の営業担当から嘘の回答を引き出し、イノベーターズがスマートライフの関連会社だと確信しました」と語った。

    2016年に実施された物件調査でも、シェアハウスの入居率の低さやイノベーターズとスマートライフの関係を把握。「シェアハウスローンに問題があると強く認識するようになりました」と振り返った。

    2014年と2015年に審査基準が変更され、融資実行時の顧客の預金通帳等の原本確認が営業店の所属長の責任に変わった。M氏はこの変更を「所属長なら適切に確認すると考え、承認しました」と説明。一方で、変更後は「審査部では偽造・改ざんの発見が困難になった」とも述べた。こうして形骸化させられていくスルガ銀行の審査体制は、シェアハウスだけではなく、サブリース付きの不動産投資ローン全般に影響を及ぼしていた。
    アパート・マンションでも同様の問題が進行していた。

    物件の家賃については「スルガ銀行の融資で支払われている可能性があるため、確認しても意味がないと考えていました」と証言。ただ、「そのことをY沢さんに具体的に報告した記憶はない」とも付け加えた。

    営業とのプレッシャーで形骸化する審査体制

    M氏自身、A生氏から厳しい叱責を受けたこともあったという。「A生さんに呼び出され、『てめえ、ふざけんじゃねえ』などと怒鳴られました」と振り返り、「Y沢さんに相談すると、『俺もやられてるよ』と慰められました」とエピソードを披露した。

    審査部内では、シェアハウスローンのリスクについて問題意識を持っていたという。2016年5月に開かれたシェアハウス会議では「営業部門を率いる麻生さんから、木造物件であることや入居率の低さなど、シェアハウス特有のリスクについて指摘があった」と明かした。

    にもかかわらず、シェアハウスローンの取り扱いは継続された。「会議の最後には、『東京23区に限定する』『大口の提携業者に絞る』などの条件を付けて継続することが決まりました」と当時を振り返った。

    基本的にアパートマンションの物件が払底し、有望な投資案件がないことから始まったサブリース物件への取り組みだったが、サブリース以外の物件も審査が形骸化した中、シェアハウスよりも多い金額と物件数で案件獲得が進んでいた。そしてその審査もシェアハウス同様に形骸化した審査部門の形式上の審査しか受けていない。A生氏が推進する営業部門の強い後押しで融資が進んでいった。

    黙認という加担

    M氏の証言からは、審査部門が不正融資の問題点を認識しながらも、営業部門からの圧力に屈していた実態が浮かび上がった。「融資の進捗を優先するあまり、不正に気付いても見て見ぬふりを続けてきた」と吐露。「銀行の体質を変えることは難しいと感じていました」と苦渋の胸の内を明かした。

    一連の証言は、スルガ銀行の企業風土や内部統制の脆弱さを物語るものだ。不正を黙認していた役員の責任は重大であり、組織を挙げた再発防止策が急務といえる。M氏は「二度とこのような不祥事を起こさないためにも、ガバナンス体制の抜本的な見直しが必要だ」と訴えた。

    被告席に着いた元経営陣は、こうした証言にどう答えるのか。スルガ銀行の不正融資問題は、日本の金融界に大きな衝撃を与えた。真相解明と再発防止に向け、関係者のさらなる証言が求められる。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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