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    ドラマ「クロサギ」に学ぶ―『ローン詐欺』

    詐欺師を騙す詐欺師。『クロサギ』。TBS系金曜ドラマ」枠で放送された。ドラマで描かれた様々な詐欺を題材にその手口を学んでみたい。第6回は、『ローン詐欺』である。
    ※今回もネタバレとなりますのでご注意を。

    住宅ローンと詐欺

    ドラマでは、借金に苦しみつつも、決して家を手放さない家族の姿が描かれる。家は、多くの人にとって、人生で最大の買い物だ。それだけに、思い入れも強い。家は、単なる不動産ではない。家族を守る象徴だ。住宅ローンは、低い金利で、持ち家を支援する。では、この住宅ローンで、投資用の不動産を購入してよいだろうか?これは許されない。目的外利用で違法となる。金利は高いが、不動産投資ローンを借りる必要があるのだ。銀行は、こうした目的外利用がないか、厳しくチェックする。金利差が、銀行の儲けに直結するからだ。そして、目的外利用が発覚した場合、直ちに一括返済を要求する。特に、書類偽造など悪質な場合は、詐欺となる。

    ローン詐欺とは

    今回のシロサギは、なんと、銀行の支店長である。もちろん、カネを騙し取るような明白な詐欺を働くはずがない。ただ、営業手法が限りなくグレーなのだ。このシロサギは、銀行の支店長メンバーの中でもトップクラスの営業成績を誇っている。銀行の営業成績は、預金額、融資額、回収額などで決まる。シロサギは語る。私は、真摯に顧客に向き合うことで、実績を上げていると。確かに、金融商品自体には、ほとんど差がない銀行業界において、成績の差は、担当者の人間性や顧客のニーズの把握の差と言える。しかし、このシロサギの好成績は、詐欺まがいの手口によるものだ。ターゲットは、経営に行き詰った経営者。レストランの経営立て直しのため、2000万円の融資を依頼する。だが、シロサギは、これを断る。その代わり、住宅ローンの融資を持ちかける。なんと、7000万円だ。シロサギは言う。5000万円で家を買い、残り2000万円をレストランの資金に充てればよいと。これは、目的外利用だ。だが、素人であるターゲットは、違法だとは気づかない。銀行から提案されれば、疑わないのも当然であろう。シロサギは狡猾だ。金額の大きさにたじろぐターゲットに、『家族も増えて、家も必要ですよね。お父さん、ご家族のために頑張りましょうよ。返済に困ったら、いつでも相談に乗りますよ。』と善人面をする。一度は持ち直したレストランに、コロナ禍が襲い掛かる。再び、窮地となったターゲットに、シロサギは、2000万円を追加融資する。しかし、合計9000万円にのぼる借金は重たく、ターゲットは自殺してしまう。悲しみにくれる家族に、シロサギは冷たい。自宅の差し押さえを告げる。自宅が追加融資の担保になっていたのだ。さらには、銀行に抗議に乗り込む家族に対し、銀行は騙されて、目的外利用された側とシラを切る。

    この話を聞いたクロサギは、全て最初から仕組まれた計画だと指摘する。まず、無理なローンを組ませて、家を買わせる。返済が滞ったら、その家を担保にして新しいローンを組む。これで、銀行には融資した実績、回収した実績が上がるのだ。もし、ターゲットが亡くなれば、住宅ローンは保険で返済される。追加融資で担保にした家も手に入る。シロサギは、とりっぱぐれがない。家族は怒りに震え、叫んだ。『まるで、詐欺じゃないの。』

    クロサギの手口

    クロサギは、そんなシロサギに、総合プロデュース業の若手社長になりすまして近づく。いきなり、1億円をドンと差出し、法人口座を開設だ。そして、数日後、相談があると、シロサギを会社に呼び出す。会社では、100人以上の社員があわただしく働いている。立地も良い持ちビルだ。土地建物で10億の価値がある。クロサギが切り出す。『このビルを担保に、3億円の融資をお願いします。』しかし、いきなりの高額融資の申し出に、シロサギは渋い顔だ。ここで、クロサギが仕掛ける。『貸してくれたら、3000万円キックバックしますよ。持ち帰って、検討してもらえませんか。』これには、シロサギも揺らぐ。『かしこまりました。』戦いは次のステージへと進んだ。

     後日、シロサギが新たな条件を突きつける。保証人だ。物的担保に加えて、人的担保をつけて、倒産時でも必ず回収できるようにしたわけだ。しかし、億単位の人的担保は重い。普通は誰も引き受けない。だが、クロサギは即OKする。契約場所は、大企業の会議室。そこに現れた大企業の常務が保証人となり、契約が成立した。

    そして、クロサギの仕上げが始まる。まずは、計画倒産である。あれほど社員がいた事務所は、もぬけの殻だ。さらに、シロサギに訴状が届く。ビルの本当の持ち主が、担保無効の訴え起こしたのだ。ビルの登記簿は、クロサギが勝手に名義変更したもので、書類は全て偽造だ。裁判すれば、シロサギが負ける。保証人も、偽物だ。万年平社員に、常務の所作をレクチャーしたに過ぎない。大会社の会議室を借り、そこに重役面して入ってきただけだ。十分に用意したはずの担保は、全て空振りに終わった。騙されたことに気づき、怒り狂うシロサギに、電話が入る。『ご馳走様でした。』

    だが、クロサギの攻撃は、まだ終わらない。とどめに、3000万円のキックバックをマスコミにリークする。世間の批判を一身に浴びたシロサギは、銀行から追放された。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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