『正直不動産』は、2022年春に、NHK『ドラマ10』枠で放送された、不動産業界の裏側をコミカルに描いた作品である。ドラマを題材に不動産取引で気を付けるべきことを学んでいこう。第11回は、『建築条件付き土地』である。
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建築条件付き土地とは
建築条件付き土地をご存じであろうか?特定の建設業者に家を建築依頼することが条件となっている更地である。この契約なら、既に完成した家を売る建売りとは違い、ある程度、顧客の希望を住宅に取り入れることができる。顧客が自分で理想の家を建てられる注文住宅に、より近いスタイルなのだ。一方で、デメリットもある。業者が決まっているということは、価格交渉もしづらく、また、住宅の工法なども自ずから決まってくる。顧客は、より慎重な判断が必要となる。
桐山とのタッグ
永瀬と桐山は、社長室に呼ばれた。3億の案件を二人で担当するよう指示された。竹鶴工務店の建築条件付き土地である。6棟のアパートが建つ。だが、永瀬は乗り気になれない。桐山はスパイかも知らないのだ。だが、社長は二人で進めるように厳命する。そして、桐山も乗り気がない。竹鶴工務店の業績が芳しくないのだ。廃業寸前といってよい。実際、竹鶴工務店はダメ会社であった。社員はみな時間を貪っている。工具類も放置され、錆び放題だ。仕事は、下請けに丸投げしているのだ。だが、これは、建設業法違反だ。少なくとも、買主の同意が必要なのだ。しかも、竹鶴社長が親から相続した土地を今回、売りに出した。間違いない、廃業するつもりだ。それでも、諦めない永瀬は、ある夫婦に商談をかける。注文住宅が建てられると前向きな二人に、永瀬がぶっちゃける。『フリープランとは名ばかりで、変えられるのは壁の色だけです。それに、あの工務店が建てたら、せいぜい、掘っ立て小屋しか立ちませんよ。』もちろん、商談はパーである。もともと、乗り気がない桐山は、ここでリタイヤした。だが、ここから、永瀬は1人、奮闘する。掘っ立て小屋しか建てられない、現在のプランを見直すことにしたのだ。もちろん、竹鶴工務店が受けるはずがない。そこで、下請けの秋川工務店へと出向いた。だが、秋川工務店の現場監督は、永瀬の話を聞こうともしない。竹鶴工務店の意向を無視して、社員達を露頭に迷わすわけにはいかないのだ。この日から、永瀬は毎日、秋川工務店の現場で、働き始めた。現場監督と話をするチャンスを作るために。もちろん、手弁当だ。数日後、現場監督が変心する。永瀬の働きが、届いたのだ。二人は、新しい建築プランを練り上げた。
桐山との激突
竹鶴社長は、新プランに激怒する。そこに、ミネルヴァ不動産の花澤が姿を表す。しかも、花澤は、あろうことか永瀬が作った建築プラン見直しのことまで、口にした。永瀬の動きは、ミネルヴァ不動産に筒抜けなのだ。やっぱり、スパイは桐山か。永瀬は飛び出した。永瀬が桐山の襟元を掴む。『スパイなんて卑怯なまねしやがって。』桐山は動じない。『竹鶴工務店は腐っている。下請けがいくら頑張ったって、何も変わりませんよ。』桐山が反転攻勢を開始する。『一体、あんた、今まで、さんざんライアー営業しやがって、今更、正直営業なんて、笑わせんな。人は、簡単に変われない。』永瀬も負けない。『俺は今、変わろうとしている。ずっと客のこと、カネだと思ってきた。だが、今は違う。客との本当の関係は、契約書にサインを頂いた時から始まる。家を売るということは、その人の人生を背負うことだ。』二人の魂が、ぶつかり、弾けた。
最強タッグ誕生
その夜、桐山が戻ってきた。NPO団体が、6棟全てを買い取るという。秋川工務店も了解済みだ。後は、竹鶴工務店を説き伏せるだけだ。『永瀬さん、一緒に来て貰えますか?見せてください。あなたの正直営業を。』桐山、本気だ。今、登坂不動産最強タッグが誕生した。翌日、最強タッグで、乗り込む。竹鶴社長、プランを見るや、またも、激怒だ。だが、桐山は引かない。『でしたら、告発の準備を進めます。』脅しだ。建設業違反を訴えるのだ。竹鶴社長が爆発する。『ふざけるな、俺を脅す気か。』ここで、永瀬が立ち上がる。『今の言葉、そっくりそのまま、お返しします。今まで、下請けの人達を脅してきて、よく言いますね。』『黙れ。』『黙りません。下請け会社にも、それぞれ職人さん達がいて、また、その家族がいる。あなたが今まで、どれだけの人を苦しめてきたと思っているのですか?』二人の攻撃に、竹鶴社長が、崩れ落ちた。
辞めるな桐山
スパイが判明した。ほとんど、存在感のない課長だった。ミネルヴァ社長に弱みを握られ、脅されていたのだ。晴れて、スパイ容疑が晴れた桐山と、永瀬は、揃って、社長に勝利報告である。竹鶴工務店は廃業し、秋川工務店と組んで、NPO団体のシェアハウスを建てるのだ。だが、ここで、桐山が、意外なものを取り出す。退職願いだ。桐山は、ミネルヴァ社長から、こう脅されたという。『欠陥マンションを建てた父親の息子から、誰が自分の住む家を買いたいと思うかね。当然、そんな人間を雇っている登坂不動産の信用もどうなることか。』桐山は、父親の過去の噂話で、ミネルヴァ社長から脅されていた。それが、登坂不動産に飛び火しないように、辞めるのだ。そして、自身の夢もあるという。登坂不動産で作った実績を元手に、会社を興すのだ。桐山の父親のようなまじめな社員が報われる職場を作りたいという。当然、留意する社長にも、桐山の気持ちは変わらない。それでも、永瀬は諦めない。『一緒に仕事して、どれだけ、客の事を考えて仕事してるか、よく分かった、俺はおまえともっと仕事がしたい。辞めるな、桐山。』だが、未来への一歩を踏み出した桐山が、立ち止まることは無かった。