NFTとは、ブロックチェーン技術を活用して、デジタルなデータが唯一無二であることを証明することができる仕組みです。日本語で表現すると「非代替性トークン」と呼ばれます。このNFTとして唯一無二であることを証明されたデータは、世界に一つしかないことになるので、画家が描いた絵をシルクスクリーンで印刷する際に絵画に連番を振ったり、サインをするように、その作品が一つしかないことを明示できるわけです。
そこには希少性が生まれるため、価値が紐づいていきます。希少性があるものは投資の対象になるということで、アメリカ株やビットコインで儲けた投資家を中心に、投資や芸術家支援の意味を込めたNFTアートの売買が急速に成長しました。Open Seaというポータルサイトでは多数の作品が流通しています。
2021年はブロックチェーン技術が仮想通貨や分散型金融だけではなくこうしたデジタルな作品を保証する仕組みとして注目された年だったといえるでしょう。いまWEB3.0の動きの中で注目されているメタバースでもこの仕組みは活用されています。メタバースで生活するアバターの持っているアイテムはそれぞれ固有のものになっています。
メタバース以外にもNFTゲームと呼ばれる各種のゲームのアイテムもNFT化されています。クエストをクリアすると報酬を受け取れる、といういままでのネットにつなげて遊ぶゲームでは禁止されていたリアルなお金でのアイテム売買を運営がサポートしているような状態になっています。いまMove to Earn(移動して稼げ!)という合言葉で流行している靴系NFTゲームをはじめ、RPGやアクションゲームでもこうした動きが広がっています。いままでとは違う意味でのプロゲーマーとしてNFTアイテムの売買やゲームでの報酬だけで暮らしていける人も出始めていることでしょう。
今後の展開
ゲームのアイテム以外にもリアルなものに付与される活用法として、個体認識に利用できる点が着目されています。まだ具体化はしていませんが、アメリカで銃の売買を行う際に、個体認識できるようにNFTと連動させるという構想が動き出しているようです。Triggersというプロジェクトではスマートガン(生体認証と連動させたり電子的にロックをかけて持ち主以外には利用できなくさせる仕組みなどを備えたIoTとして銃を管理しようという取り組み)を推進しようとしています。
TriggersはNASA、米国防総省、フィリピン警察といった公的組織に存在を認知され、注目されていますが、アメリカでの銃の取り扱いは、自由と管理のはざまにある、とてもデリケートで、利権も関わってくる分野です。このプロジェクトが順調に進むかどうかは予断を許しませんが、ライセンス認証をブロックチェーンで行い権利の所在を管理する仕組みとして、似たような取り組みが近い将来導入される可能性は大いにあります。
同じようにライセンス認証が必要な分野でのブロックチェーン技術を活用した管理には、仮想通貨が重要な働きを果たします。他の分野でも運営主体が大きなシステムコストを負担せず、参加者全員で負担していく分散型の管理が導入される分野は今後も広がっていくことでしょう。
そこには大きなビジネスチャンスがあります。仮想通貨が乱立する背景には、こうしたビジネスチャンスに注目し活動しているプロジェクトが複数勃興しているためです。その多くは形にならず、途中で形骸化していく可能性もありますが、いままでの業界構造を壊す大きなインパクトをもった制度が生まれる可能性があります。