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    スルガ銀行不正融資問題:国会での追及と金融庁の対応

    投資と詐欺でも長期間密着取材を行ってるスルガ銀行不正融資事件。最近にわかに国会の委員会答弁で取り上げられる機会が増え、事件の進展に影響があるであろう内容も出てきました。今回は最近の答弁の内容をいくつか取り上げ、状況をご紹介したいと思います。

    第217回財務金融委員会における高井崇志議員(れいわ新選組)の質疑(2025年4月9日)

    スルガ銀行の不正融資問題は、2025年4月の国会で複数の政党から追及されました。特にれいわ新選組の高井崇志議員は、この問題の被害者の一人がれいわ新選組から立候補していたこともあり、強い問題意識を持って質疑に臨みました。

    不正融資問題の整理

    高井議員は冒頭、スルガ銀行の不正融資問題を以下のように整理しました:

    「スルガ銀行の話はですね、まあ、シェアハウス融資、もう、かぼちゃの馬車事件。かぼちゃの馬車というね、シェアハウスの融資とそれからアパートマンションの融資、2つあって、まあ、このシェアハウスの方は、実は2018年9月に第三者委員会の報告書が出てですね、まあ、そこで、もう、組織的不正があったということを報告書にも書いてあるわけでありますが、ところがこのアパートマンション融資についてはね、全く解決が図られていないわけです。」

    金融庁監督局長の回答

    これに対し、伊藤監督局長は以下のように回答しました:

    「金融庁といたしましても、18年当時、検査に入りまして、その結果も踏まえて業務改善命令打っておりますけれども、その中でも述べておりますけれども、シェアハウス向け融資に加えたアパマン向け融資につきましても、スルガ銀行の組織的な不正行為というものを確認しているところでございます。」

    シェアハウス融資とアパートマンション融資の対応差に関する質問

    高井議員は、シェアハウス融資は解決しているのにアパートマンション融資は解決していない理由について質問しました。

    伊藤監督局長の回答:

    「私どもの業務改善命令におきましては、シェアハウス向け融資、アパマン向け融資を区別することなく、先ほど申し上げましたように、組織的な不正を確認をいたしまして業務改善命令を打ち、債務者の方、一刻も早くその解決に至るということを銀行側に求めているところでございますけれども、**シェアハウス向け融資につきまして、**そのアパマン向け融資と異なるこの解決に至っているという理由として、私どもが認識をしておりますのは、物件の賃貸状況が長期的に見出す、シェアハウス向け融資はですね、長期的に生み出すキャッシュフローの水準が債務の返済可能性を大きく左右するなど、顧客の債務額が大きくなる傾向にあるなどという、こう、一群のですね、特徴があったことによって、これは、一律な解決が行われたという風に認識をしております。

    で、アパマン向け融資については、銀行の職員のですね、不正の関与の度合いにつきまして、その銀行側と、その被害者側、その債務者側との間で認識の齟齬がある物件がありですね、これについて未だに、その解決に至ってないという風に認識をしておりますけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたとおり、一刻も早い解決に至ることを、求めておりまして、引き続きこういうスタンスで、銀行に要求をしていきたいという風に考えております。」

    第三者委員会設置に関する質問

    高井議員はアパートマンション融資についても第三者委員会を設置すべきではないかと提案しましたが、これに対し伊藤監督局長は:

    「第三者委員会につきましては、18年当時の第三者委員会は、このアパマン向け融資につきましても、シェアハウスと区別することなく調査をしておりまして、これで第三者委員会の考え方は出ておりますので、改めて第三者委員会を設置する必要については、私どもとしては認識をしていないところでございます。」

    と回答しました。

    金融庁の責任に関する追及

    高井議員は、金融庁が2014年から苦情を受けていながら、2017年に当時の森金融庁長官がスルガ銀行を「得意なビジネスモデルで高い収益を上げている地銀のモデルケース」と称賛していた点を指摘し、責任を問いました。

    加藤金融担当大臣の回答:

    「今おっしゃった森長官のご発言とスルガの不正融資問題との関係、これなかなかお答えすることは難しいということも、これまでも申し上げているところであります。

    他方この不正融資問題に関連してスルガ銀行の経営管理体制や内部管理体制に一部業務停止命令や業務改善命令を行うに至った重大な問題があったにもかかわらず、これを事前に察知することができなかった、このことは事実として受け止めなければならないと考えております。金融庁としては、そうした認識のもと債務者にとって可能な限り早期に問題解決が図られることが重要であり、引き続きスルガ銀行の経営陣に対して、様々な機会を通じて債務者との協議に真摯に応じるなど、適切な対応を求めるとともに、その進捗を確認していきたいと考えております。

    今後こうした問題が生じないよう、金融庁のモニタリング能力の向上を図ることも含めて、金融担当大臣としての職責を果たしていきたいと考えております。」

    警察の対応に関する質問

    高井議員は警察庁の代表者に対し、明らかな書類改ざんや通帳偽造があるにもかかわらず、捜査が進んでいない理由を質問しました。

    警察庁 松田長官官房審議官の回答:

    「個別の案件につきまして、警察の対応につきましては、お答えを差し控えさせていただきます。

    なお、一般論として申し上げれば、警察は個別の事案の事実関係に即して、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づき適切に対処しているところであります。」

    高井議員はこの回答に納得せず、多くの党派が国会で取り上げている問題に対して、警察庁として専門的なプロジェクトチームを設置すべきだと提案しました。

    これに対し松田審議官は:

    「一般論として申し上げれば、警察庁には知能犯罪捜査を担当する捜査第二課に、都道府県警察に対し全国的な見地等から必要な指導を行うため、この種の金融関係犯罪を担当する係が置かれているところであります。

    また、重大で複雑な事案が発生し、この係のみで対応することが困難な場合には、必要に応じて柔軟に体制を状況、増強するなどしているところであります。

    引き続き、都道府県警察において法と証拠に基づき適切な対応が取られるよう必要な指導を行ってまいりたいと考えております。」

    と回答しました。

    第217回財務金融委員会における末松義規議員の質疑(2025年4月9日)

    同日の財務金融委員会では、末松義規議員もスルガ銀行問題について取り上げました。

    不正融資からの利益に関する質問

    末松議員は、スルガ銀行が過去の不正融資から現在も利益を得ている問題を指摘しました:

    「このスルガ銀行ってのは、業務停止命令が明けてですね、2019年5月以降で不正融資は1件もないと言っているんですけども、業務停止命令以前の融資には不正融資が数多く、存在してます。この不正融資の金利をですね、未だに得ているんですね。で、莫大な利益を上げてるんですよ。これ、金融大臣としてですね、過去の不正融資からスルガ銀行が利益得てることに対して、これを是として認めるんでしょうか?」

    「この不正融資から得ている利益をですね、本来の債務者に返還すべきではないかと思います。スルガ銀行の不正融資被害弁護団の試算がですね、この資産によって言ったらですね、793億円もの不正利益を得ているということなんですね。」

    加藤金融担当大臣の回答

    「まずあの、スルガ銀行問題でありますけれども、スルガ銀行の不正融資の借り手となっていた顧客に対して1人1人の状況を踏まえ、ま、可能な限り顧客の理解、納得を得られるよう尽くす必要があるというふうに考えており、金融庁としてはスルガ銀行に2018年10月に発出した業務改善命令に基づき、融資関連資料の改ざん、偽造等による不正な融資を受けた借り手に対しては、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど適切な対応を図ることを求めてきてるところであります。ご承知のようにシェアハウスについては問題の解決が図られたと認識をしておりますが、一方、アパマン向け融資については、銀行と債務者の間で現在、民事調停の協議交渉と並行して保有する物件の任意売却による債務の返済を実行するなど具体的な解決法について調整が行われていると承知をしております。債務者にとって、可能な限り早期に問題が図られることが重要であり、従来より様々な機会を通じて、債務者との協議に真摯に応ずるよう金融庁としても求めてきたところであります。引き続き適切に対応することを経営陣に対し直接求めていくとともに、その進捗をしっかり管理していきたいと思っております。」

    数字については詳細を把握していないとして、後日改めて説明するとしました。

    被害者と銀行の認識の齟齬に関する質問

    末松議員は被害弁護団の試算とスルガ銀行の報告に大きな違いがあることを指摘し、金融庁として調査すべきだと訴えました。

    加藤大臣はこれに対し:

    「いや、そこはあの、まず数字がどう違うかってのはまず把握をさせていただきたいと思います。その上でそれがどういうところに寄っているのか、そこも見ないとですね、どういう対応ができるかについて、今段階で予断を持って申し上げるのは、ちょっと難しいということをぜひご理解いただきたいと思います。」

    と回答しました。

    消費者問題に関する特別委員会における井坂信彦議員(立憲民主党)の質疑(2025年4月17日)

    4月17日には消費者問題に関する特別委員会で、立憲民主党の井坂信彦議員がスルガ銀行問題を消費者問題として取り上げました。

    消費者被害としての問題提起

    井坂議員は冒頭、この問題を消費者被害の問題として位置づけました:

    「スルガ銀行によるアパートマンション不正融資問題について伺います。この問題は単なる金融スキャンダルではありません。物件の購入者が金融機関との間で重大な情報格差のもと、著しく不公正な契約に巻き込まれた深刻な消費者被害の問題であります。

    内部告発をしたスルガ銀行の行員が身元を特定されて解雇されてしまったという公益通報者保護法が十分に機能しなかった事件でもあります。

    スルガ銀行は物件の販売業者と最初から結託をして、物件価格の水増しや、購入者の年収、預金通帳の改ざんなどを行った上で、不動産売買の経験がない購入者に対して確実に儲かるとか、自己資金ゼロでOKといった甘い言葉で契約を結ばせた事例が数多く報告をされています。

    これらの手口はすでに不法行為が認定されたシェアハウスかぼちゃの馬車事件と同様で、消費者契約法第4条が禁じる不実告知に明らかに該当するのではないかと考えております。」

    消費者庁審議官の回答

    消費者庁の黒木審議官は消費者契約法の適用について以下のように説明しました:

    「消費者契約法は消費者の利益を守るため、事業者と消費者の間に締結された消費者契約について、不当な勧誘による契約の取り消し権を規定をしております。

    融資契約など、金融、ま、様々な契約後あるかと思いますが、金融機関と消費者との間で契約された場合には、消費者契約に該当し、この消費者契約法の対象になると考えてございます。委員がご指摘になりましたような不実告知などが、この消費者、あの、消費者金融機関が消費者と締結する契約を締結する際に、なされた場合に、このような消費者契約法の要件を満たす場合には消費者が、え、その契約を取り消すことができる可能性があるものと考えております。」

    しかし、スルガ銀行の事件を消費者被害事件として認めるかという質問に対しては:

    「消費者契約法と言いますのは民事ルールでございますので、行政の方で何かあの判断をするという関係にはないということでございます。消費者である当事者が、契約の取り消しを主張して、事業者と交渉する、あるいは訴訟するという中で、最終的には裁判所において判断がなされるものと承知しております。」

    と回答を避けました。

    証拠隠蔽と立証責任の転嫁に関する質問

    井坂議員はスルガ銀行の対応について以下のように指摘しました:

    「このスルガ銀行は被害者救済について、自社のホームページでこう書いてあります。当社は真摯に取り組を進めていると。しかし実際には弁護団が求める懲戒処分がされた行員の氏名とか、処分理由といった被害救済に不可欠な資料の開示をスルガ銀行は拒んでいるわけであります。で、さらに行員が関与した証拠資料についても黒塗りで、隠蔽をし、行員の関与自体が確認できないという立場をスルガ銀行が取っているという実態があります。

    一方で被害者側が、偶然入手をした不動産業者のパソコンの画面には、このスルガ銀行のある行員が業者とやり取りをしていた、行員の関与を裏付ける明白な証拠が残されていたそうであります。にも関わらずスルガ銀行はどの程度行員が関与していたかという判断を被害者側に立証させようとしていて、事実上責任の転嫁を図っているようにも見受けられます。」

    これに対し消費者庁の尾原審議官は個別事案であることを理由に回答を避けました。井坂議員が一般論として、証拠を隠蔽し被害者に過度な立証責任を負わせることについてどう考えるか尋ねても、消費者基本法の条文を引用するだけの回答に終始しました。

    消費者大臣の回答と今後の課題

    最後に井坂議員は、消費者庁としての積極的な介入の可能性について伊東大臣に質問しました。これに対し伊東大臣は:

    「金融機関に対しましては、関連法令に基づき行政処分がなされるものと承知しておりまして、これはあの、金融庁でありますとか、当該、所管官庁にまずはお尋ねをいただきたいということであります。また、あの、裁判中の係争中の事案ということもございますので、消費者庁といたしましては、これ以上の介入というのはなかなか難しいかなと思っております。」

    と回答しました。

    井坂議員はこれを「残念な答弁」と評し、以下のように締めくくりました:

    「被害者を分断したり、萎縮させるような、このような手法についても消費者庁にはガイドライン整備など何らかの対応を求めたい」

    今後の課題

    国会での質疑を通じて明らかになった課題は以下の通りです:

    1. 行政指導の実効性確保:業務改善命令から6年半経過しても問題が解決していない現状を踏まえ、より実効性のある行政措置の検討
    2. 省庁間の連携強化:金融庁、消費者庁、警察庁など関係機関の連携による包括的な対応
    3. 被害者救済の枠組み構築:被害者を個別対応させるのではなく、集団的に救済する仕組みの検討
    4. 情報開示義務の強化:被害救済に必要な情報を企業側が積極的に開示する義務付け
    5. 監督体制の見直し:金融機関のビジネスモデルや融資審査体制をより詳細に監査する体制の構築

    これらの課題に取り組むことで、スルガ銀行問題のような金融機関による組織的な不正融資被害の再発防止と、被害者の迅速な救済が期待されます。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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