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    安愚楽牧場事件ー和牛オーナー詐欺(2013年)

    被害額4,330億円を超えた安愚楽牧場事件とは

    私たちが日頃食べている食べ物は、作る人がいて成り立っています。その中でも牛肉は、お店で購入し家で食べる中食やお店で食べる外食の消費割合が多い食料です。また、牛肉は畜産業としても有名でテレビなどのメディアでも取り上げられています。

    そんな日本に必要不可欠な畜産業界では、過去に起きた大規模事件の豊田商事越えとも言われる大規模詐欺事件が日本で起こりました。通称、安愚楽牧場事件です。被害者は7万3,000人を超え、被害額も4,330億円を超えています。

    また、安愚楽牧場事件をきっかけに2022年6月以降、販売預託商法は禁止となっています。販売預託商法とは簡単に言うと、事業者が顧客に販売した投資商品や権利を預かり、配当金などの利益を顧客に渡す取引のこと。顧客は実際に運用されているか気づきにくいのが特徴です。

    今回は「安愚楽牧場事件がなぜ起きたのか」「被害者はなぜ騙されてしまったのか」などについて解説していきます。

    安愚楽牧場事件の真相

    安愚楽牧場事件の特徴は、和牛制度を利用して出資を募った点です。つまり出資者に雌牛を購入させ、雌牛が生んだ子牛を売却することで毎年配当金を支払う仕組みを安愚楽牧場はとったのです。契約が終了した時に雌牛を売却することで、元金が戻ってくる契約内容も魅力的でした。投資商品では怪しいとされる元本保証を、間接的に謳って(うたって)いたのが被害にあってしまった理由ともいえるでしょう。

    ほかにも、テレビCMに大物芸能人を起用して人々からの信用と認知を得ていたのも特徴としてあります。総務省が発表したデータでもテレビの信頼性は、新聞に次ぐ2位と人々の信頼があるメディアとされています。そのため、7万3,000人を超えた多くの人が被害に遭ったと考えられます。

    また、決算数字の偽造も当時話題となり、2011年3月時点で負債は619億円、2011年8月頃の倒産時には負債額が4,330億円。その中身は、出資金を売上に計上していたり、安愚楽牧場側の言い分として「税理士のチェック済みの数値です」と言っていたりしていました。税理士はあくまでも税金周りを確認する人を指し、財務諸表などのチェックは会計士が行うものです。

    言葉の意味を明確に説明できる人でしか気がつかないほどのテクニックが安愚楽牧場事件では利用されたのが被害者を拡大させた理由として挙げられます。

    1.感情に訴える勧誘と国から応援されている信用

    安愚楽牧場事件の勧誘方法は、人の感情に訴える他の詐欺事件の勧誘方法とは異なるものでした。具体的には「日本人が大好きな黒毛和牛のオーナーになりませんか」「国も応援してくれている、畜産を日本からなくしてはならない」などがあります。

    もちろん「元本保証で7%の金融商品があります」などの安愚楽牧場の商品を勧める営業方法もありましたが、やはり国も応援してくれている信頼や畜産業界が日本からなくなるという感情的部分から投資してしまった人も一定数いたようです。

    2.被害者が訴えたことにより国家賠償まで発展

    事件後の進展に関しては、2014年5月に被害者1305人が国に対して65億円の国家賠償を請求しています。その理由は、農林水産省が安愚楽牧場を訪問した時にオーナー数に対して牛の数が少ないという違和感に気づいていれば、今回の事件は防止できたとの主張です。

    また、民主党の海江田万里も和牛のオーナー制度を人々に勧めていたことから、損害賠償請求がされています。首謀者である三ヶ尻久美子らは、牛の識別番号が実在しない番号を使用していた、いわゆる「牛肉トレーサビリティ法」違法の疑いや契約書に虚偽の疑いがあるとのことで、三ヶ尻久美子に懲役2年10か月、元幹部の1人には懲役2年4か月の実刑が言い渡されました。

    事件から10年以上経過した2023年現在でも国家賠償は継続しており、被害者を救済する名目でお金を支払わせる詐欺への注意喚起も弁護団によってされています。2次被害に遭わないためにも被害救済を謳って近寄ってくる人には注意してください。

    被害に遭わないために物事は論理的に考える

    今回の被害者には、首謀者である三ヶ尻久美子を筆頭に「畜産業界を無くしたくない」そんな思いで勧誘されているケースがありました。そこで投資家として、大切なのは感情論ではなく、データに基づいて論理的な思考で投資できるかどうかです。

    投資に感情を持ち込んだ選択をしてしまうと損するリスクが上がるのは、投資家であれば理解しているでしょう。たとえば「この投資は女性の社会進出の後押しになり社会貢献に繋がるから」という理由だけで投資が上手くいくでしょうか?

    運も絡んでくるため100%とまでは言えませんがデータなどに基づいて投資したのと比較すると失敗する確率が高いのは誰が考えても分かるでしょう。少なくとも投資と言っても、その裏には「事業」があるわけですので、本当にその事業がうまくいくのか、その根拠はなにか、しっかりと見定めていく必要があるということです。

    とくに人間は感情の生き物です。そのため対面で感情に訴えかけられると断れない人も多いと思います。過去にあった大規模事件である豊田商事事件でも感情に訴える営業方法が利用されていました。

    とはいっても、投資では感情が必要な場面がないとは言い切れません。

    したがって投資家は「必ずデータに基づいた上で」投資対象を見極めることが必要です。

    [まとめ]初めは全てのものを必ず疑う

    今回の安愚楽牧場事件は、芸能人を起用したテレビCMでの宣伝や投資商品としての売り出しではなくオーナー制度という特殊な勧誘方法、畜産業衰退防止を謳う営業トークまで人が騙されやすいさまざまなテクニックが使用されていました。

    いくらさまざまな投資経験を積んだ投資家でも1回見ただけでは、詐欺かどうかを見極めるのは至難の業です。しかし投資家である以上、儲かる可能性のあるものには投資して利益を得たいでしょう。

    そこで初めて見るものはあらゆる情報を疑い、調べることが大切です。いわゆる「情報のフィルタリング」が必要になります。

    そうすることで、投資で損することに対するリスクヘッジに繋がります。失敗したときでもまた次の投資選定をするときに活かせるため、投資家は必ず信頼できる情報であるかどうかを見極めるトレーニングを日頃から行なっていかないといけません。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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