近年ではマルチ商法やオレオレ詐欺など、詐欺に巻き込まれてしまう人が後を絶ちません。そんな中で昔、ニュースにもなった事件があります。1985年に起きた豊田商事事件をご存知でしょうか?
豊田商事事件とは、詐欺企業(豊田商事株式会社)によって引き起こされた詐欺事件のことです。さらに、その事件の首謀者だった永野一男(32歳)がマスコミの目の前で刺殺された衝撃的結果で幕を閉じたことで世間から注目を浴びました。
今回は豊田商事事件がどんな事件だったのか、犯人について解説していきます。
※豊田商事株式会社は、永野一男が金地金の商品取引会社として仮に設立した会社です。
目次
豊田商事事件の真相
豊田商事事件は、金をまるであるかのように全国の高齢者を中心に売りつけた事件です。(現物まがい商法 別名:ペーパー商法)また、3万人から4万人と多くの人が被害に遭いました。その後、首謀者である永野一男はマスコミの前で何者かに刺されて終わっています。犯人は飯田篤郎(当時56歳)と矢野正計の2人。現在は、2人ともすでに出所していて余生を過ごしているとされています。
豊田商事事件の被害金額は2000億円
豊田商事事件の被害金額は2000億円にも及んだと見積もられています。オレオレ詐欺や振り込め詐欺を超える過去最高の被害額です。また、ここまで被害額が大きい理由は、お金を持っていてかつ判断力が低い全国の高齢者をターゲットにしたからです。
2021年に政府が出した統計によると、貯金額が60歳〜69歳は2537万円、70歳以上は2318万円と発表されています。(https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2021_gai4.pdf)
銀行に預金するだけで、お金が増えたバブル期全盛期の36年前は、さらに多くのお金が口座に預金されていたと推測できます。(1985年年利5.5%)(https://www.smbc.co.jp/kojin/special/moneyguide/asset-management/column/003/#:~:text=%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB%E6%9C%9F%E7%9C%9F%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%A0%E4%B8%AD,%E3%81%8C%E5%BE%97%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82)
クーリングオフ制度
クーリングオフ制度は豊田商事事件をきっかけに作られた制度です。この背景には、豊田商事事件が社会問題になるほどの規模に発展したことが原因にあります。当時から考えると、この規模の事件はありませんでした。そのため、対応できる機関がなく豊田商事事件で被害にあった人で、政府に人が集まり事態は騒然。そこで作られたのが、「豊田商事被害者専用の窓口」と、定められた期間であれば返品できる「クーリングオフ制度」です。
なぜこんなにも多くの人が騙されたのか
多くの被害者がでた原因は、豊田商事(詐欺集団)の営業力の高さと精密機械のように訓練された組織だったことが挙げられます。衝撃的なことに家にあがったら、5時間以上は必ず営業トークをしていたそうです。営業トークに関してはターゲットの自宅に入室したら以下の手順で営業をしていました。
1.将来の不安を煽る
2.購入することへの罪悪感を取り除く
3.他の人も購入していることを目の前で見せる(嘘の履歴)
また、電話でのアポイントから商品を購入させるクロージングまで徹底的にマニュアルで組織化されていたのも多くの被害がでた原因の1つです。
徹底的に訓練された組織
豊田商事では営業マンはもちろんのこと、アポイントをとるコールセンターにもマニュアルで訓練されていました。当時のコールセンターは、家族構成から年齢、資産額まで営業時に利用できる情報全てを聞き出すのが仕事だったそうです。
[営業トーク]1.将来の不安を煽る
豊田商事が使用していた営業方法として、将来の不安を煽る手順があります。具体的には、「老後生活は今のままだと生活できない」「もし夫が死んだら収入が無くなる」などです。この発言によって、相手の思考の選択を奪うことができます。このときには、電話の時点で徹底的に聞き出した家族構成や資産額、現在困っていることについて触れて不安を煽っていたそうです。
[営業トーク]2.購入することへの罪悪感を取り除く
購入することに対する悩みや詐欺なのではないかという人には「イエス・バット法」を利用して罪悪感を取り除いていた。イエス・バット法とは、相手の意見に対して肯定した後に最終的に否定する営業で使われるテクニックの1つです。これを行うことで相手に不快感を与えず自分の意見を伝えられます。
[営業トーク]3.他の人も購入していることを目の前で見せる
最後にクロージングで他の人も購入していること、期間限定であることを目の前で見せていいました。理由は、相手に安心感を与え、悪いものではないことを間接的にアピールするためです。また、上記手順で失敗した場合は土下座までして購入を要求しました。ひどいケースだと家から一歩も出なかったそうです。
[まとめ]詐欺に遭わないためには
詐欺に遭わないためには、営業トークや勧誘トークを信じないこと。そして、自分も騙されるかもしれないと危機感を持つことが大切です。この記事では、豊田商事事件についてだけでなく、詐欺集団である豊田商事が利用した営業テクニックについても紹介しました。
2023年現在でもマルチ商法やオレオレ詐欺の被害にあったというニュースが後を絶ちません。そのため、危機感を持ち日々の生活を送るようにしましょう。