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    スルガ銀行の「不正融資問題はほぼ解決」声明に強く反発するSI被害弁護団

    スルガ銀行は11月21日に投資家向けのIRの中で(現在は更新され11月22日付けとなっている)スルガ銀行の行った個人向け不動産融資に関する不正融資問題に関して解決に向かっているという趣旨で声明を発表したが、この発表に対して被害者団体や弁護団が強く反発している。

    スルガ銀行「問題はほぼ解決している」と発表

    スルガ銀行が2023年11月に発表した声明の中では、以下のように問題の全体像を解説している。「当社の不動産投資関連融資における問題の全容を明らかにしております。 その全件調査において、投資用不動産融資総物件数(シェアハウスを含む、37,907 物件) のうち約 2 割について審査書類の改ざん・偽造等の不正が発見されたことを踏まえ、これら の債務の元本一部カット等の踏み込んだ返済支援やご相談を行ってまいりました。このよう な取組みを経て、全件調査対象 37,907 物件のうち 5 割強が融資残高ゼロとなり、4 割強に ついてはご返済を継続していただいています。」と記載している、また「 一方、スルガ銀行不正融資被害弁護団(以下「SI 被害弁護団」といいます。)等を通じて、 当社との間で組織的交渉が行われている件数は 864 物件(37,907 物件のうち 2.3%)ですが、これら物件の債務者(以下「組織的交渉先債務者」といいます。)は、対象不動産から得ている家賃収入を自ら留保して当社に対する元利支払を長期間止めている場合もあります。当社は、これらの債務については適切に引当金を計上することによって、財務健全性を担保しており、そのカバー率は99.32%です。」と記載している。

    この文章をみると、スルガ銀行の実行してきた投資用不動産のうち、2割で書類に改ざんがあったという問題があったものの、企業努力によりほぼ問題は解決したような印象を受ける。返済が滞っている割合は1割程度で経営に問題がなく、SI被害者同盟との団体交渉がある物件に関しても2割だけが問題で、8割は問題ないような印象を持つ人もいるかもしれない。

    しかし8割の融資では審査資料に問題がないとしても、係争に発展している2割に関して見れば、問題が100%起こっている事実がある。問題がある融資に関して特に弁護団が組織され、本格的にこじれているのが864物件あり、貸出額にして1000億以上のインパクトがある問題だ。

    SI被害弁護団の強い反発

    こうしたスルガ銀行のIR発表が、投資家向けに誤った印象を与える株価操縦だとSI被害者弁護団は抗議の会見を開いている。弁護団を率いる河合団長は交渉継続中にもかかわらず、事前の相談もなくこうした発表を行ったスルガ銀行を厳しく批判した上で、こう語った。

    「私達が受任している800件以上の被害者は、明らかに通帳や審査資料の改ざんがあった方です。なので不正があった方が100%なんです。ですがスルガ銀行の発表ではあたかも問題はわずか20%しかないように説明しています。この点は株主に誤った印象を与えている悪質な印象操作です。」(河合団長)

    ではスルガ銀行とSI被害弁護団は何を交渉してきたのか

    こうしたSI被害弁護団の強い反発は、スルガ銀行の説明とかなり温度差がある内容だ。スルガ銀行はSI被害弁護団と何を交渉してきたのだろうか。SI被害弁護団の河合団長は語る。

    「第三者員会報告などのいわば自白があったわけですので、私達は2022年時点で被害実態をスルガ銀行側に提出し、調停の場でも調停外の場でも交渉を行ってきました。しかしスルガ銀行は一切認めていません。融資の経緯などを類型化し、20件近くの具体的な物件に関して、スルガ銀行に提示しましたが、かれらはそのうち2件しか過失をみとめない。被害者に落ち度のない審査資料の明らかな改ざんに関しても自らの過失を一切認めない姿勢を貫いています。こんな押し問答をここ数年やっているんです。」(河合団長)

    早期解決として万が一800件近い物件をシェアハウスと同じやり方で解決すれば、経営に大きなダメージがあるスルガ銀行。1000億近い融資が吹き飛び、高値づかみと被害者が訴える相場から乖離した赤字分をスルガ銀行自らが利益から補填しなければいけないとすれば、数百億円の損失が発生する。社会的なメンツも失い巨額の損失が発生するために、経営陣は何としてでも回避したい選択肢と認識しているようだ。

    被害者の被害とスルガ銀行過失

    このように双方の主張には大きな見解の相違があり、対立は根深い。SI被害者弁護団は被害者の救済を目的に、スルガ銀行に物件の返却と債務の帳消し(いわゆる代物弁済)を求めている。一方スルガ銀行は財務的なインパクトを短期的にも長期的にもなるべく軽減させたい。問題を沈静化させたいという点では一致しているが、利害関係は厳しく対立している。

    スルガ銀行が認めたシミュレーション結果を基に物件を購入した。その結果投資が失敗した。たしかにそれだけではスルガ銀行に責任はないように思える。しかしスルガ銀行が本来は銀行業法に違反するため関与してはいけない物件のアレンジを行い、三為取引などの不動産物件を消費者に高値づかみさせてでも融資実績を作る仕組みに積極的に取り組んでいたこと、「スルガ銀行が『融資の審査を行うべき審査部門が審査を行わない』ように社内体制を恣意的に変えていた事実があることに大きな問題があったと被害者は訴えている。不動産業者と連携して消費者に物件を販売する形になった点でスルガ銀行は大きく不正融資に関与しているという主張だ。

    『営業部の判断だけで審査をおこなう体制』にスルガ銀行の営業部門が社内体制を変えていた事実。改ざん資料や客観的な物件価格の査定を行うことなく、不動産業者の提示する価格やサブリース契約を精査せずめくら判を押すだけの骨抜き化が恣意的に進められたスルガ銀行。

    「そんなスルガ銀行が不動産業者と結託して高値づかみをさせたお陰で、生活費から補填しないと返済もままならない状態に陥った被害者も少なくありません。その結果、将来を約束したパートナーとの結婚をあきらめたり、将来を悲観して自死した被害者もいます。」(被害者)

    この被害者の主張は、あまりに半ば公的な銀行という企業のイメージから乖離するブラック企業、詐欺集団のような手口であるために、被害者の被害妄想なのかと思うほどひどい内容だ。しかし被害者が被害妄想で主張している事実無根の内容ではない。実際にスルガ銀行自身の依頼で調査を行った弁護士や監査法人による第三者委員会が作成した報告書にも明確に記載されている内容と一致する。

    第三者委員会報告自体、スルガ銀行をクライアントとする弁護士事務所と監査法人が作成している。いわば社会的に禊をするために忖度が絡んでいる可能性がある実行者がおこなった内容だが、その内容はかなりの断罪ぶりだ。かばいきれないひどい状況がスルガ銀行にあったことを滔々と記載している。

    こうした第三者報告の結果も踏まえて、スルガ銀行は新しいビジネスであるシェアハウスに対する配慮にかけていたという体裁で、シェアハウス問題に関しては、対象物件を事実上引き取る形で、融資を回収した。

    SS被害者同盟(スルガ銀行シェアハウス不正融資被害者同盟)の代表を務める冨谷氏は以下のように語った。

    「40名以上の被害者がシェアハウスもアパマン(アパート・マンション)も購入しており、問題がまだ未解決です。スルガ銀行はシェアハウスに関しては、問題を解決しました。しかしなぜシェアハウス問題は解決して、アパマンの問題は解決しないのでしょうか。同じ行員、同じ不動産業者から同じように購入した被害者も多いんです。私は納得できないです。」(冨谷氏)

    スルガ銀行の当時の行員のすべてが悪事に加担したわけではないだろうが、当時行内で反対勢力を封殺し、社会や顧客の利害ではなく、スルガ銀行の営業成績を第一義とする雰囲気が蔓延し異常な状態に陥っていたことが伝わってくる内容となっている。

    ここまでの内容は状況証拠に過ぎないが、スルガ銀行の営業部門が不動産業者と結託して、営業成績が最大化できるような高値づかみに関与していたという被害者の主張も現実味を帯びてくるし、その被害者が400名以上あつまった弁護団が存在する時点で、かなり黒いと言わざるを得ないだろう。

    スルガ銀行とSI被害者の対立の行方は?

    こうした対立に関してSI被害者弁護団はどのような見通しを持っているのだろうか。河合団長は以下のように見解を示している。

    「最終的には調停でないと解決しないとおもいます。交渉は調停外でもやっていますが、スルガ銀行は引き伸ばして財務上のダメージを緩和できるように引き伸ばしを計っている状況です。ですが裁判所の反応は大きく変わってきました。いままでは当事者間で合意がないと調停なんて成立できないという姿勢だったんですが、見解の相違があるなら事実関係を提示して精査していこうという姿勢に変わって来たんです。大きな前進です。」(河合団長)

    2018年にシェアハウス問題が社会問題化してすでに5年が経過する。その間コロナ禍をはじめとして大きな社会の変化もあった。スルガ銀行の不正融資問題がメディアに登場する機会も減ったが、問題の本質的な解決には程遠い現状がある。問題の風化と沈静化を図りたいスルガ銀行と、スルガ銀行が解決に動かざるを得ない社会の厳しい目を喚起したいSI被害弁護団や被害者団体。両者の利害関係の対立が改めて鮮明になったIR資料を巡る記者会見となった。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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