不動産投資は、自己資金以外の銀行融資などを利用して高いレバレッジを利かせながら投資をする、非常に効率的な投資手法です。一般的にはミドルリスク、ミドルリターンな投資と言われています。
しかし、不動産投資には入居状況を偽装したり物件を二重に譲渡したり、さまざまな手法を用いた複雑な詐欺が存在しています。これらの不動産投資に関連する詐欺案件を把握した上で、安全に投資したいと考えている方もいるのではないでしょうか。
今回は、不動産投資における手付金詐欺の内容や対処方法について解説するので、ぜひ資産形成・資産運用に取り組む際の参考にしてください。
目次
不動産投資で悪用されている手付金詐欺とは
手付金詐欺とは、不動産物件の売買契約を交わすタイミングで手付金を支払ったあとに、業者との連絡が取れなくなってしまう被害です。
本来、手付金の授受は、不動産物件の売買契約が成立した証として支払い、基本的には正式に契約成立日までに現金で支払う決まりが設けられています。また手付金は、買手が売手に対して支払う費用ですが、それ以外にも「双方の契約を簡単に解消させない」という目的も備えています。
逆を言うと、手付金を支払えば契約を解除できるということにもなります。金額は双方合意により決めることができるのですが、基本的に売り手側が決めることがほとんどです。通常の商品の売買とは異なり、不動産はなぜか売り手側が強いという商習慣となっていますので、売主主導で契約書が作成されることがほとんどです。
手付金を支払ったあとに買手が契約解除するためには、すでに支払っている手付金を放棄する必要があるため返金されることがありません。同様に、売手側が契約解除する際には、手付金の2倍の費用を買手に支払わなければ契約を解除できない決まりがあるのです。
上記のように手付金には、お互いの契約に重みを持たせて強固にさせる目的があります。しかし手付金詐欺では、不動産売買における契約の流れを逆手に取り、費用を持ち逃げして音信不通にする手法として用いられているのです。
不動産売買における手付金とは 内金や頭金との違い
不動産売買を行う際の手付金とは、売買契約のタイミングで買手から売手に対して支払い、最終的に物件購入費用の一部として充当される資金です。
一方の内金とは、不動産物件の売買契約の成立後に、買手が売手に対して総額分の一部として前払いする費用を指します。一般用語として使用されている言葉ではなく、商業用語・業界用語として浸透している言葉です。
また、頭金とは銀行などの金融機関が提供する「ローン審査への通過確率を高めるために総借入額の一部を支払う費用」という違いがそれぞれあります。
不動産投資の手付金詐欺で注意すべき営業トーク
不動産投資を推奨する仲介業者の営業マンのなかには、言葉巧みに購買意欲を駆り立てて、契約を成立させる人もいるので注意が必要です。
特に不動産業界は、ほかと比べて商品単価が高いため、さまざまな巧妙な手口によって詐欺の被害者が出ています。
以下では、不動産物件を購入する際の手付金詐欺などにまつわる、注意すべき営業トークを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
注意すべき不動産営業マンの言動①:契約を催促する
不動産の営業マンとしては、すぐにでも契約がほしいため、「優良物件なので、今日中に契約しないと物件がなくなる可能性がある」などと契約を催促します。
ほかにも、「本日中に契約を交わすと数十万円の値引きが可能」などのセールストークを聞いた場合は注意してください。
注意すべき不動産営業マンの言動②:将来的な価値が高まる
購入を検討している物件が、「立地やグレード、人気が高い関係から、将来的な価値が高まる可能性がある」と伝えて期待させる内容にも注意が必要です。
人気が高く、いつ購入されてもおかしくないなどと、契約を催促させて手付金詐欺につなげる可能性があります。
注意すべき不動産営業マンの言動③:クーリング・オフ
一定の契約期間内に限り、無条件に契約を解除できるクーリング・オフ制度について説明し、安心させた状態で安易に不動産物件を購入させる手口にも注意しましょう。
不動産営業マンは、契約を交わすことを最優先に考えながら、さまざまなセールストークによって手付金を騙し取る詐欺をはたらこうとしている可能性が高いです。
不動産売買で手付金詐欺に遭わないための対処法
不動産物件の購入などで手付金詐欺に遭わないために、営業マンが使用しているセールストークや詐欺の種類などを把握する必要があります。
また、不動産物件の売買契約では、以下の内容に注意しながら詐欺に遭わないように注意してください。
<不動産物件の売買契約で詐欺に遭わないための注意ポイント>
1.メリットばかり伝える営業マンには要注意
不動産投資には大きなメリットがありますが、デメリットも存在するため、両方を丁寧に説明してくれる営業マンを探すようにしましょう。
2.物件を購入する前に信頼できる不動産なのかを見極める
投資用の不動産物件を扱う会社や仲介業者のなかには物件を転売する三為業者と呼ばれる会社があるので、物件購入時には注意してください。
3.不動産会社の企業概要や実績・口コミなどを確認
優良な不動産物件を購入する際の1つの判断基準が、企業実績や口コミでよい評価を得ているかを確認する点です。また、宅建業の免許番号を確認も併せて行いましょう。東京都の不動産業者であれば、東京都知事免許(X)YYYYYY号という表記が不動産業者のHPに記載されているはずです。特に(X)部分の括弧内の番号は免許の更新回数を表します。現在は5年ごとに更新が必要ですので(2)となっていれば5年以上、宅建業を営んでいるということです。逆に(1)となっている場合は5年未満の業者ですので注意して話を聞いた方が良いと言えます。
手付金詐欺をはたらく企業は、ホームページなどが用意されていなかったり実績がなかったり、怪しい点があるため、事前に確認しておきましょう。
不動産投資で手付金詐欺に遭遇した際の相談先
不動産投資で物件を購入する際に悪質な業者から手付金詐欺の被害にあった場合は、以下の窓口に相談しましょう。
- 弁護士
- 消費生活センター
- 宅地建物取引業保証協会
手付金詐欺にあった場合の相談先①:弁護士
手付金詐欺に遭った場合は、弁護士に相談することで法的な問題に対して的確に対処してくれます。
さまざまな強みを持つ弁護士が存在するため、相談先に悩む方は、政府が設立した法務省管轄の法律支援法人「法テラス(日本司法支援センター)」がおすすめです。
手付金詐欺にあった場合の相談先②:消費生活センター
不動産投資で手付金詐欺の被害や、そのほかの被害に遭った場合には、都道府県などの地方自治体が主体となって運営している「消費生活センター」に相談しましょう。
各事業者間で発生したさまざまなトラブルについて、詳細をヒアリングしながら相談に乗ってくれる機関です。また、消費生活センターとは別に、国民生活センターと呼ばれる政府が運営する独立行政法人でも対応してくれます。
手付金詐欺にあった場合の相談先③:宅地建物取引業保証協会
投資用不動産物件の売買活動などの「宅建業に従事する業者が会員になる団体」であり、詐欺や各種トラブルなどの相談に対応してくれます。
万が一宅地建物取引業保証協会に相談しても問題が解決しなかった場合は、取引額の債権の弁済も行ってくれるため、詐欺に遭った際には連絡してみましょう。
まとめ:不動産投資で手付金詐欺に遭うリスクは勉強で減らせる
不動産業界には、「海千山千」や「千三つ」などの言葉が存在するように、手付金詐欺などに遭う可能性が高い傾向にあります。
甘い誘い文句や、購買意欲を駆り立てるようなセールストークによって、手付金詐欺などの被害に遭うケースが相次いでいる状況です。
詐欺に遭う前には、一定の決まったセールストークで誘われる傾向が高いため、契約を催促したりメリットを強調したり、甘い投資話には注意しましょう。
今回紹介した、信頼できる不動産業者の見極めポイントや、注意すべきセールストーク、被害に遭った場合の相談先を参考に、詐欺に気をつけて投資を行いましょう。