More

    スルガ銀行の「円滑な問題解決が進捗中」の実態と背景。

    スルガ銀行不正融資被害弁護団(SI被害弁護団)は、スルガ銀行との任意交渉について声明を発表しました。声明では、スルガ銀行が公表した投資家情報が事実に反し、交渉に対して真摯な態度を示していない誤った印象を与えるものであると指摘しています。

    スルガ銀行は健全な経営になったのか?問題はないのか?

    スルガ銀行は問題が解決の方向に進んでいると説明している。下記のスライドを見ると問題があるのは約3%だけで、97%は債権でリスクが非常に少ないように読めます。

    おなじ資料の別のページで一棟もの投資用アパート・マンション物件に関して以下のようなページを設けて説明しています。

    貸出金2兆907億円のうち、9582億円が一棟収益不動産物件であること、そのうち延滞が約11.7%にあたる1147億円以上あることが読み取れます。実質破綻先、破綻先として分類されている1086億円がスルガ銀行不正融資事件の被害被害総額とみることができます。3つ目の表で「組織的交渉先」とあるのがスルガ銀行不正融資被害者同盟(SI被害者同盟)などの被害者団体で、実に不良債権のうち894億円(約82.3%)が不動産融資を巡る詐欺事件によるものだと言えそうです。

    この延滞率も延滞金額も地方銀行の水準としては群をぬいており、圧倒的に悪い数字になっていますが、担保評価額は345億円しかありません。

    1000億円も回収不能になるリスクがあるわけですが、充分儲かっていれば飲み込めるリスクなのかもしれません。実際どの程度の影響があるのでしょうか。企業の利益を示す経常利益を見てみると、2023年度の実績は112億円でした。もし1100億以上の焦げ付きを補填するとなると、約10年間分の利益となってしまいます。かなり大きなインパクトがある負の数字だと言えるはずです。担保評価額を引き算しても700億円、約7年分の利益が吹き飛ぶリスク要因です。

    交渉は円滑に進んでいる?SI被害者同盟とSI被害弁護団とスルガ銀行の関係は?

    スルガ銀行にとっても大きなインパクトがあるSI被害者同盟との交渉ですが、その交渉窓口となっているSI被害弁護団とは激しく対立しているようです。弁護団によるといくつも問題点があり、話し合いがまともに成立していない状況であるようで、スルガ銀行がスムーズに不正融資被害者との交渉をすすめている印象操作を行っていると厳しく指摘しています。またSI被害者同盟は連日のようにスルガ銀行の店頭で抗議デモを繰り返す以外に、提携を発表したクレディセゾンの本社の前でも抗議デモを繰り返すようになりました。これはすべて両社の関係が改善どころか深刻な対立関係にあることを意味しています。

    SI被害弁護団によると、弁護団が結成された2021年5月25日から2023年の2年弱の期間で30回の交渉を重ねてきたといいます。 スルガ銀行は2018年段階で、不正融資の実態を金融庁に厳しく指摘され、行政処分を受けています。その際に金融庁の指示で組織された第三者委員会の調査では「不正な融資があった」「企業体質に問題がある」という報告が提出されています。

    「言うまでもなく交渉の議論の出発点は、2018年9月7日の第三者委員会報告書および同年10月5日の金融庁による行政処分書で認定された事実です。ここでは、シェアハウス融資だけでなくそれ以外のアパート・マンション融資(アパマン融資)も含む投資用不動産関連融資全般に不正融資があったことが認定されています。これはまさにスルガ銀行が組織的に不正融資をしていたことが認定されたものです。 この認定事実をもとに当弁護団は2021年12月の段階ですでに、自己資金を証する通帳やレントロールが改ざんされている場合や実態より高い価額で売却融資実行されている場合には不正融資による不法行為被害を認め解決すべきであるとの提案をしています(「プラットフォーム」)。」(SI被害弁護団の声明より)

    第三者委員会という社外の調査を受け入れ金融庁とも実態を共有している状況なので、SI被害弁護団は圧倒的に有利なスタート地点からスルガ銀行と対峙することができたように見えます。しかし弁護団の声明では、スルガ銀行がきちんと話し合いに応じていないという不満が述べられていました。

    「 これに対しスルガ銀行は態度を留保しつづけ、スルガ銀行がようやく対案である『早期解決フレームワーク』を提案してきたのが2022年5月でした。当弁護団 が交渉申し入れをしてから実に1年も経過してからのことでした。 しかも、スルガ銀行から提案された『早期解決フレームワーク』は極めて不十分な解決案であり(①)、かつ、『早期解決フレームワーク』に乗せるべき事案の範囲も著しく限定的で明白な高値掴みさせた事案さえ救済対象外としてしまいかねないものでした(②)。」(SI被害弁護団の声明より)

    クレディセゾンへの忖度?問題解消にむけて前進中というブランドイメージを目指すスルガ銀行

    このようにSI被害弁護団は「スルガ銀行が不正融資に対して真摯に向き合っておらず、交渉において一致を見ていないにもかかわらず、投資家に誤った印象を醸成しようとしている」と痛烈に批判しています。

    こうした情報発信の背景には、救済の手を差し伸べているクレディセゾンやその株主へのポーズという側面も多分にあるでしょう。そうした意図を感じ取ったSI被害者同盟やSI被害弁護団はクレディセゾンへの抗議デモや、問題が解決されていない中でスルガ銀行を子会社化するクレディセゾンとの対決姿勢を強めています。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

    Related articles

    Comments

    Share article

    spot_img

    Latest articles

    Newsletter