地面師(じめんし)とは、不動産取引において、他人の土地や建物を自分の所有物であると偽り、売却や担保提供などの行為で利益を騙し取る詐欺師のことを指します。
特に、日本では地価が高い土地や都市部の不動産が対象になることが多く、詐欺の規模が非常に大きくなる傾向があります。
目次
地面師の手口
地面師は、不動産取引の複雑さや関係書類の多さを悪用し、巧妙な手口でターゲットを騙します。以下にその代表的な手口を紹介します:
1. 書類偽造
- 偽造された登記簿謄本や印鑑証明書を使用して、自分が土地や建物の所有者であると装います。身分証明書(運転免許証やパスポート)も偽造し、取引相手を信用させます。
2. 偽の土地所有者を演じる
- 詐欺グループ内で役割を分担し、土地の所有者を演じる役者を用意します。
- 面談時に、実在の所有者に成りすまして契約を進めます。
3. 所有者との接触を遮断
- 本物の土地所有者に対する連絡を防ぐため、偽の連絡先を提供し、不動産業者や買主が真実を確認できないようにします。
4. 迅速な取引を促す
- 「早く契約しなければ他の買主に取られる」といった理由で、相手に契約を急がせ、十分な確認を行う時間を奪います。
地面師が標的にする土地や状況
- 長期間使われていない土地
- 持ち主が死亡して相続手続きが完了していない土地や建物。
- 例えば、高齢の所有者が所有しているが利用していない物件。
- 所有者が遠方に住んでいる土地
- 所有者が現地確認しにくい土地が狙われる。
- 権利関係が複雑な土地
- 相続未登記や共有名義の土地で、確認が困難な場合。
地面師による被害例
日本では2000年代に入ってからも大型の地面師詐欺案件が相次いで発生しています。地面師が他人の土地の所有者になりすまし、偽造書類や役者を使って不動産を売却し、多額の金銭を詐取した事例です。被害額は数億円から数十億円に上り、不動産業界や社会に大きな影響を与えました。
発生年 | 事件名 | 概要 | 被害額 |
---|---|---|---|
2017年 | 積水ハウス地面師詐欺事件 | 東京都品川区の老舗旅館「海喜館」の土地取引において、偽の所有者を装った地面師グループが積水ハウスから約63億円を詐取。 | 約55億円 |
2014年 | 新橋白骨死体地主事件 | 東京都港区新橋の土地所有者が白骨死体で発見され、その後、地面師グループが偽の所有者を装い土地を売却。 | 不明 |
2013年 | 溜池アパホテル事件 | 東京都港区赤坂の土地を巡り、地面師が偽の所有者を装い、アパグループに土地を売却し約12億円を詐取。 | 約12億円 |
2012年 | 富ヶ谷台湾華僑なりすまし事件 | 東京都渋谷区富ヶ谷の土地で、地面師が台湾華僑の所有者になりすまし、デベロッパーに土地を売却。 | 不明 |
2009年 | 世田谷区地面師事件 | 東京都世田谷区の土地を巡り、地面師グループが偽の所有者を装い、数億円を詐取。 | 数億円 |
2008年 | 町田市地面師事件 | 東京都町田市の土地で、地面師が所有者になりすまし、土地を売却して数億円を詐取。 | 数億円 |
2007年 | 晴海フラッグ地面師事件 | 東京都中央区晴海の再開発地域で、地面師が偽の所有者を装い、土地を売却。 | 不明 |
2006年 | 新宿区地面師事件 | 東京都新宿区の土地を巡り、地面師グループが偽の所有者を装い、数億円を詐取。 | 数億円 |
2005年 | 渋谷区地面師事件 | 東京都渋谷区の土地で、地面師が所有者になりすまし、土地を売却して数億円を詐取。 | 数億円 |
2004年 | 港区地面師事件 | 東京都港区の土地を巡り、地面師グループが偽の所有者を装い、数億円を詐取。 | 数億円 |
地面師による詐欺を防ぐ方法
1. 本人確認の徹底
- 取引相手の身分証明書や印鑑証明書が本物かどうかを徹底的に確認する。
- 公的機関や専門家(弁護士や司法書士)に確認を依頼。
2. 現地確認の実施
- 売買契約前に、必ず所有者と直接対話し、本人確認を行う。
3. 第三者機関を活用
- 不動産取引においては、登記簿や権利証明書を司法書士や専門調査機関に精査してもらう。
4. 契約を急がせる提案を警戒
- 早急な取引を求められた場合は、慎重に対応し、詳細な調査を行う。
地面師は大手企業も騙すことができる高い「詐欺力」を持っています。投資家が自分の見識だけで嘘を見抜くことは困難でしょう。そこで大事になってくるのが、プロの力を借りることです。
地面師詐欺のまとめ
地面師は、不動産取引の仕組みや法的書類の盲点を利用して巨額の利益を騙し取る詐欺師です。特に大規模な不動産取引を行う企業や高額な土地を所有する個人が標的にされやすいため、十分な確認と慎重な対応が必要です。地面師詐欺の被害を防ぐためには、信頼できる専門家や公的機関の協力を得ることが最も効果的です。