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2,500人・232億円——「みんなで大家さん」集団訴訟の全貌
年利7%の高利回りをテレビCMで謳い、約4万人の個人投資家から総額2,000億円超を集めた不動産小口化投資商品「みんなで大家さん」。2025年夏の配当停止を機に被害対策弁護団が結成され、2026年3月には集団訴訟の初判決として大阪地裁が全額返還命令を下した。しかし、その直後に判明したのは「勝訴しても戻らない」という残酷な現実だった。
事件の構図
商品の仕組みと運営主体
「みんなで大家さん」は不動産特定共同事業法に基づく小口投資商品。運営主体は共生バンクグループの都市綜研インベストファンド(大阪市)で、1口100万円から参加できる手軽さと年利7%という高利回りを武器に、主にシニア層を中心に急拡大した。
主力商品「シリーズ成田」は、成田空港北西の約45万平方メートルの用地に大型商業施設を建設し、テナント料から配当するという構造だった。2020年11月の第1号から2024年2月の第18号まで、募集総額は累計約1,973億円に達した。
土地の過大評価という核心
2025年12月の読売新聞による調査報道で、事件の本質が明らかになった。共生バンクが投資対象の土地を実勢価格の数十倍から百数十倍に評価して出資を募っていたことが判明したのだ。「みんなで大家さん」が約171万円/㎡と評価した土地の前所有者への売却額は約0.8万円/㎡、実勢価格は0.2〜1万円/㎡だったとされる。
さらに、22億円を集めた商品の口座残高が約500円、290億円を集めた商品の残高も6万5,000円、19商品の口座残高を合計しても660万円ほどしかなかったことも判明。2,000億円近くの資金がほぼ消えていた実態が浮かび上がった。
事件の経緯
2024年6月:行政処分で最初の亀裂
大阪府は2024年6月、都市綜研インベストファンドに対し不動産特定共同事業法違反を理由に30日間の業務一部停止処分を下した。事業計画の重要な変更(ホテル・飲食店から食料品店への絞り込み)を出資者に説明しなかったことが問題視された。処分公表から24時間で470名を超える投資家が解約を申し入れるという事態になった。
2025年7月:配当停止で事態が急変
2025年7月末に予定されていた「シリーズ成田」の配当が支払われず、その後も遅延が続いた。テナントからの賃料が2025年4月以降支払われていないことが原因とされたが、成田1号〜18号すべてで遅延が発生。解約申請者は8,000人超に達し、解約総額は100億円を優に超えた。
2025年9月:提訴と弁護団発足
2025年9月17日、出資者5名がリンク総合法律事務所の小幡歩弁護士を代理人として大阪地裁に提訴。同月19日には被害対策弁護団が発足し、参加希望者が急拡大した。
2025年11月〜2026年2月:計2,500人が集団提訴
2025年11月に約1,200人が114億円あまりの返還を求めて大阪地裁に集団提訴。続いて2026年2月に約1,300人が追加提訴し、原告総数は約2,500人・請求総額232億円超に達した。日本の不動産投資案件では過去最大規模の集団訴訟となった。
2025年12月:国税局が差し押さえ
2025年12月、共生バンクグループが税金約2億7,000万円を滞納し、大阪国税局と大阪府から資産を差し押さえられたことが明らかになった。
2026年3月26日:初判決——全額返還命令
大阪地裁の林田敏幸裁判官は2026年3月26日、原告3人に対し出資金計約1,700万円の全額返還を命じる判決を下した。「当事者間に争いがない」とした判決で、集団訴訟の初判決として注目を集めた。
勝訴しても戻らない現実
全額返還を命じる判決が出た一方で、回収の見通しは極めて厳しい。口座にほとんど残高がない状態は前述の通りだが、弁護団が重視しているのは「資産を早急に押さえる」ことだ。代理人の小幡弁護士は「時間が経つほど出資金の回収が難しくなる。いち早く勝訴を勝ち取り、相手方の資産を押さえることが重要だ」と述べている。
共生バンクが保有する不動産物件(概算600億円規模と報じられた)の売却交渉が続いているが、実勢価格を大幅に上回る強気な値付けが続いており、「絵に描いた餅」になる可能性も否定できない。
なぜ被害が拡大したのか
本件の被害が4万人・2,000億円超に膨らんだ背景には、複数の構造的な問題がある。
- テレビCMによる信用の演出:大手メディアへの広告出稿が「信頼できる投資先」という印象を与えた
- 不動産特定共同事業法の監督の限界:監督官庁が都道府県の大阪府・東京都であり、国レベルの金融庁のような機動的な監視体制がなかった
- 土地評価の不透明性:投資家が実勢価格を検証する手段が実質的になかった
- 過去の行政処分が生かされなかった:2013年にも大阪府から60日間の業務一部停止処分を受けていたが、その教訓が反映されなかった
よくある質問(FAQ)
Q. まだ集団訴訟に参加できますか?
被害対策弁護団(リンク総合法律事務所・小幡歩弁護士)では第2次以降の訴訟参加者を引き続き募集しています。現在出資中の方は弁護団への相談が最初のステップです。個別訴訟との違いや費用についても相談時に確認してください。
Q. 判決が出ても本当にお金は戻ってこないのですか?
判決は「返す義務がある」という確認であり、資産がなければ強制執行しても回収できません。弁護団は裁判と並行して資産の仮差押えを進めています。不動産など換価可能な資産が残っていれば一定の回収は可能ですが、全額回収は困難な状況です。
Q. 今後どうなるのですか?
残り約2,500人分の訴訟が継続中で、今後も追加判決が見込まれます。一方で共生バンクグループの財務状況が深刻なため、破産手続きに移行する可能性もあります。その場合は破産管財人を通じた配当による回収が中心となります。
Q. 同様の手口の詐欺を見抜くには?
「不動産特定共同事業法」に基づく商品であっても、(1)想定利回りが年5〜8%以上、(2)対象不動産の詳細な評価根拠が開示されていない、(3)過去に行政処分歴がある、の3点が重なる場合は特に慎重に確認が必要です。投資前に対象不動産の登記情報・路線価・過去の取引事例を必ず調べましょう。
相談窓口
- みんなで大家さん被害対策弁護団(リンク総合法律事務所):小幡歩弁護士が代理人。公式サイトより相談申込
- 消費者ホットライン(188番):最寄りの消費生活センターに繋がる
- 金融サービス利用者相談室(金融庁):0570-016-811
- 国民生活センター:0570-064-370
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成田国際空港会社(NAA)は2025年11月末、「みんなで大家さん」の運営会社への用地賃借を終了しています。関連記事「成田国際空港会社が集団訴訟に発展した「みんなで大家さん」運営会社への用地賃借を2025年11月末で終了と発表」もあわせてご覧ください。
集団訴訟の制度的な背景については「マネオマーケット集団訴訟の衝撃」も参考になります。




