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    2024年スルガ銀行株主総会ダイジェスト

    2024年6月26日、スルガ銀行が本店を置く静岡県沼津市でスルガ銀行の株主総会が開催されました。ここ数年、投資と詐欺編集部では独自取材を敢行し、主な議案と回答内容を以下にまとめました。

    スルガ銀行に全て否決された株主提案

    まず、スルガ銀行に提出した株主提案は以下の通りです。

    〈株主(5名・議決権数302個)からの提案(第3号議案から第12号議案まで)〉
    第3号議案 定款の一部変更の件(株主との対話の重視について)
    第4号議案 定款の一部変更の件(不正融資問題等に係る費用の公開と期限の設定について)
    第5号議案 定款の一部変更の件(投資用不動産融資に係る全件調査の再実施について)
    第6号議案 定款の一部変更の件(当社社員が不動産業者から受領したキックバックの返還について)
    第7号議案 定款の一部変更の件(金融資産確認資料の原本確認の義務化に関する定款の一部変更について)
    第8号議案 定款の一部変更の件(クレディセゾンとの提携業務に関する第三者監査委員会の設置について)
    第9号議案 定款第33条の削除の件(剰余金の配当等の決定機関について)
    第10号議案 定款の一部変更の件(監査等委員会の情報公開義務について)
    第11号議案 定款の一部変更の件(役員報酬の個別開示について)
    第12号議案 定款の一部変更の件(「お客様の声」の開示について)

    〈株主(311名・議決権数568個)からの提案(第13号議案から第22号議案まで)〉
    第13号議案 定款第4条の変更の件(指名委員会等設置会社への移行について)
    第14号議案 定款の一部変更の件(株主総会の状況の生中継および動画掲載について)
    第15号議案 会計監査人解任の件
    第16号議案 定款の一部変更の件(役員の退任時の事後交付型株式報酬制度の一時停止について)
    第17号議案 定款の一部変更の件(投資用不動産融資の担保評価額の上限設定について)
    第18号議案 定款の一部変更の件(「シェアハウス等顧客対応室」の名称変更について)
    第19号議案 定款の一部変更の件(金融庁の業務改善命令が解除されない事由の公表について)
    第20号議案 定款の一部変更の件(第三者委員会調査結果と会社発表(IR資料)の整合性について)
    第21号議案 定款の一部変更の件(口座名義人の自筆ではない送金依頼書に基づく送金処理の禁止について)
    第22号議案 定款の一部変更の件(「不正融資反省館」と「業務改善命令の日」の設立について)

    第3号議案から第22号議案までは、株主からの提案であり、取締役会としてはこれらの議案のいずれにも反対ということです。株主提案の多くは不正融資被害者の立場から問題解決を求める要請でした。かなり手厳しい内容も見受けられましたが、スルガ銀行は終始事務的に否決の回答を行っていきました。参加株主からの厳しい追及を含む質疑回答の内容を一部ご紹介します。

    不正融資問題の解決に向けた取り組みは?

    株主質問:去年、現加藤社長は不正融資問題は最重要課題だと言っていました。この最重要課題に対していつまでに解決するなどの期限や経過報告など公表しなくていいのでしょうか?そんなことは銀行としてあり得るのでしょうか?早期解決とはいつのことなんでしょうか?企業としていつまでに何をするという計画が明確ではないのはどうなんでしょうか?アパートマンション不正融資問題の早期解決に向けた取り組みのタイムスケジュールを説明してほしい。

    スルガ銀行加藤社長回答:「当社としては1日でも早い問題解決を図りたい努力をしているところです。具体的には2023年1月に公表した3つの方針に沿って対応しています。ただし、解決の時期を明確に示すことは困難です。」

    株主質問:我々が受けた全ての融資には何らかの不正があるが、スルガ銀行は「不正はあったが不法ではない」と言っている。不正があった債券からいまだに金利という利益を取り続けている状態。企業として本当にそれで良いのでしょうか?法を犯さなければどんな手段をとっても会社が儲かればいいのか?

    佐藤常務執行役員の回答:「不正につきましては、銀行の社内手続き等を含めて適切ではない行為があったということを広く指していると考えております。例えばですが、営業部門が審査部門を欺いて融資を実行させるために、お客様の自己資金の額について虚偽を申請するというようなことは銀行内部の不正でございますけれども、これにつきましてはお客様ご自身について自己資金の金額を正しく把握していらっしゃるという風に思われますので、そのことを持ちましてお客様詐欺というような不法行為を構成するものではないというふうに考えております。」

    業務改善命令の解除

    株主質問:金融庁の業務改善命令が解除されない理由は何か。

    スルガ銀行佐藤常務執行役員回答:「業務改善命令に関する金融庁とのやり取りは守秘義務の対象となっているため、具体的な内容をお答えすることは控えさせていただきます。当社としては引き続き業務改善命令の解除に向けて努力してまいります。」「業務改善命令が解除されない理由は当社が判断できるものではありません」

    クレディセゾンとの業務提携

    株主質問:クレディセゾンとの業務提携の詳細、特に投資用不動産ローンについて説明してほしい。

    加藤社長回答:「クレディセゾンとの提携は住宅ローン、セゾンプラチナビジネスカード、不動産関連事業の共同展開を含みます。投資用不動産ローンについては、定義の問題もありますが、全く行っていないわけではありません。」

    人事評価制度の妥当性

    株主質問:不正融資に関わった社員の人事異動について、人事評価制度の妥当性をどう考えているか。

    秋田監査等委員回答:「監査等委員会としましては、人事評価制度は適切であるというように判断しております。」

    第三者委員会報告書の内容

    株主質問:第三者委員会報告書に改変はないのか。

    加藤社長回答:「当社としては第三者委員会から受領したものを何ら省略や改変をせずそのまま公表した資料です。」

    営利企業として損を絶対に出さないという姿勢で被害者と対立するスルガ銀行

    株主の質問の中で明かされたエピソードでは、ある男性(62歳)がスルガ銀行側からの救済措置をとして仮に受け入れたとしても、物件を全て手放したうえで残債を計算すると1億5000万くらい残るという惨状にもかかわらず、スルガ銀行が提示した”救済措置”では「毎月約35万円を62歳から97歳まで払い続けたら完済」という厳しい条件だった。それによってスルガ銀行は一円も元金は損をしない設計になっていたという。

    加藤社長ほかスルガ銀行側の出席者は、株主質問に対して頷きを交えながら聞いている姿勢を見せていたが、質疑に対しては明確な答えを出さずじまい。司会進行役からは、終始、被害者の発言時間に対して「何分を過ぎております。まとめて話してください。」などと水を差す姿勢が目立ちました。

    最終的に株主提案の採決に移るのですが、強制的に全て否決となり途中で席を立って退場する人が大勢いました。退場した被害者の席には「株主提案に賛成」というプラカードが置かれていました。会場から出るときも「株主軽視の議事進行」と書かれたプラカードを掲げながら出てきます。

    質疑応答を通じて、不正融資問題の解決や業務改善命令の解除に向けた具体的なタイムラインは示されず、スルガ銀行からの歩み寄りの姿勢は見受けられませんでした。株主からは不満の声が上がり両者の溝は深まるばかりのようにみえました。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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