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    ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『文化財保護法』

    『正直不動産』は、2022年春に、NHK『ドラマ10』枠で放送された、不動産業界の裏側をコミカルに描いた作品である。ドラマを題材に不動産取引で気を付けるべきことを学んでいこう。連載最後の第20回は、『文化財保護法』である。

    文化財保護法とは

    皆さんが、家を建てる時、その土地から土器の欠片が出土したら、どうなるか、ご存じであろうか?かなり、大変な事になる。なんと、強制的に発掘調査が入るのだ。それだけではない。発掘調査で文化財だと認められた場合、1年以上かかる本格的な調査が行われる。暫く、家などは建てられなくなるのだ。つまり、土器の欠片ひとつで、あなたの持ち家計画が大きく狂う可能性がある。それが、文化財保護法の恐ろしさなのだ。

    ミネルヴァ不動産の営業

    ミネルヴァ不動産の営業は、どこまでも悪どい。今日も、買収したケアハウスから密告が入る。老人がまた一人、亡くなったのだ。ミネルヴァ社長は、うそぶく。『人の死は、金になる。』嫌な言葉だ。社員も腐っている。土地の売却を希望する相続人に、アパート経営を勧め、既にサブリース契約を締結したという。それも、ミネルヴァの取り分が20%と通常よりも、割り増しだ。その上、オーナーからは中途解約できない。この令和の世に、時代錯誤の不平等契約だ。不穏な空気が漂うミネルヴァ不動産の社長室で、ただ1人、花澤が眉をひそめる。こうした、反乱分子にミネルヴァ社長は敏感だ。『花澤。俺のやり方が気に食わないんなら、いつでも、辞めろ。だが、行き詰っているお前を助けたのは、誰だったかな。』花澤の顔が、一気に引きつる。『申し訳ありません。出過ぎた態度でした。』花澤を含め、ミネルヴァ不動産の社員は、全員、社長に弱みを握られている。そこに付け込み、恐怖で人を操るのが、ミネルヴァ社長のやり方だ。

    哀れな相続人

    今回、家と土地を相続したのは、遠く離れた関西に住む平尾氏だ。既に50歳を過ぎている。ほとんど、身寄りがない老人の遠い親戚で、今回の相続は、ラッキーだったとも言える。平尾氏は語る。『1Kの部屋を11万円で貸すやろう。で、10部屋あるので、ミネルヴァの取り分と、建築資金のローンを差し引いても、不労所得が58万円、毎月入ってくるわけよ。どうよ、賢いやろう。』しかし、よく考えてみて欲しい。誰が、1Kのアパートを11万円も出して借りるのだろうか。平尾氏の未来は、この時点で、既に暗いものとなっていた。しかも、当の本人は、ミネルヴァ不動産にカモにされていることに、全く気付いていないのだ。アパート経営が行き詰れば、ミネルヴァ不動産は一方的に契約を解除し、平尾氏には不良資産と借金だけが残るに違いない。それだけでも、十分なピンチである。しかし、もっと重大な事件が、静かに進行していた。

    縄文式土器

    なんと、更地になった平尾邸から、土器が発見されたのだ。それも、縄文式土器である。土器が出てくると、文化財保護法により、問答無用で、土地の発掘調査が必要になる。その資金は、サブリース契約のオーナーである平尾氏の負担となるのだ。その上、アパートの建築は、1年余りお預けだ。ミネルヴァ不動産に見捨てられた平尾氏は、登坂不動産に助けを求めた。しかし、登坂不動産とて、法律には従わざるを得ない。希望を失った平尾氏は、ふらふらと道に歩み出し、交通事故に遭ってしまう。幸い命は助かったものの、両足を骨折する重症だ。見舞いに来た永瀬と月下に、力なく告げる。『嫁さんは若いし、子どもはまだ2歳やねん。この子が成人する時、わいはもう70や。せやから、アパート建てて、財産を残したかった。それが、借金だけ残るなんて。』この言葉を聞いて、遂に二人は動き出す。ミネルヴァ不動産に、契約解除を交渉するのだ。

    ミネルヴァ社長との対決

    遂に、永瀬と月下が、ミネルヴァ社長と直接、対峙した。ミネルヴァ不動産の花澤も立ち会う。ミネルヴァ社長は、意外にも、二人の依頼をすんなりと受け入れた。『いいでしょう。契約は解除しましょう。』だが条件付きだ。『違約金として660万円を頂きます。』これは、さすがに無理な相談である。『金を払えないんなら、契約解除は無理だな。』ミネルヴァ社長は金が全てだ。月下が噛みつく。『平尾さんは、あなたのお客様です。契約とかお金とかよりも、大切なことがあるんじゃないんですか。』ミネルヴァ社長は冷たい。『君、今すぐにこの仕事を辞めなさい。君じゃ生きていけない。』永瀬が盾突く。『家が変われば、人生が変わるんです。私は、この仕事に誇りを持っています。あなたは、誇りをもっていますか?』ミネルヴァ社長は動じない。『永瀬君、不動産は金を得るための道具だ。そんなものに希望を持つな。希望を持つから絶望する。』誰もが、交渉決裂を覚悟した、その時、登坂社長が乗り込んできた。手にはアタッシュケースが握られている。『1000万ある。平尾さんの違約金、うちで肩代わりさせて貰おう。』ミネルヴァ社長は金だけだ。『いいでしょう。それで手を打ちます。』だが、登坂社長は、何もお土産だけを持参したわけではない。『その前に、聞きたいことがある。平尾邸を解体した業者が言うには、解体時に大量に土器が出土したと。それをミネルヴァ不動産に報告したら、口止め料を貰ったらしいが、この話、本当かね。』ここまで事実を突きつけられても、ミネルヴァ社長は、顔色すら変えない。『さぁ、知りませんね。』ここで、花澤の堪忍袋が破裂する。『社長、それが事実なら、行政処分だけでなく、詐欺罪になります。最悪の場合、弊社は業務停止か、免許取消の可能性も。』飼い犬に手を噛まれ、さすがのミネルヴァ社長の顔も歪む。登坂社長がとどめを刺す。『出るとこ出るか、それとも違約金なしで契約解除するか。』だが、ミネルヴァ社長は、なおも抵抗する。『その話が真実かどうかもわかりませんから。』あくまで、逃げ切るつもりだ。ここで、永瀬が前に出る。『本当です。我々は、嘘が付けない不動産屋なんで。』静かに引導を渡す。あくどい手口を重ねたミネルヴァ社長を、応援する者など、誰もいない。ミネルヴァ不動産の社員達を含め、全員が冷ややかな視線を送る。『金はいらん。帰れ。』遂に、ミネルヴァ社長が負けを認めた。そんな、ミネルヴァ社長にさえも、登坂社長は、フェアだ。300万円を机に置き、『更地にかかった費用だ。つりは要らん。』そして、全員を引き連れて、去っていった。

    この話には、実は裏がある。土器を発掘した業者を突き止めたのは、登坂不動産の元社員である桐山だ。登坂社長への恩返しなのだ。登坂社長は、温情で人を引き付ける。この人の為ならと、部下が、進んで働くのだ。その遺伝子は、確実に部下達に引き継がれている。明日はあなたの元に、正直不動産の永瀬と月下が訪れるかもしれない。溢れ出すカスタマーファーストの心を持って。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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