3年で500億円が消えた、、、そう聞くとこの騒動の怖さが伝わってくると思います。2024年10月に船井電機が破産し、約2000名の社員が解雇されました。2000人とその家族に大きな影響があったわけですが、SNS界隈では船井は「半グレの餌食にあった」とまことしやかに噂されています。
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かつて北米1位にも輝いた船井電機の苦境
船井電機は、日本の中堅電機メーカーとして成長し、2000年代には北米シェアNO1にも輝きました。一時は売上規模4000億円を誇った船井電機でしたが、中韓の安価な家電におされ利益が年々ひっ迫。2017年創業者である船井哲良氏の逝去後、2020年には売上が1000億円を割り込み、相次いで建て直しに取り組んだ経営層もはかばかしい成果を上げることができませんでした。こうした状況もあってか創業家も跡目を継がず2021年に秀和システムズに約240億円で事業売却しています。
買収した秀和システムズとは?
IT関係のお仕事をしている方であれば秀和システムズが出版社として書籍も出していることをご存じかもしれません。この秀和システムズは投資事業会社のウエノグループがマウスコンピューターから約10億円で買収して経営に合流した企業でした。ウエノグループは元アンダーセンコンサルティングのコンサルタント上田智一氏が代表を務めていた企業です。買収に際して船井電機のサイトには以下のように記載されています。
「船井電機の公開買付者及び秀和システムの代表取締役である上田智一氏は、1998年5月にアンダーセン・コンサルティング(現 アクセンチュア株式会社)に入社後、主に製造業領域(ハイテク製造業、デバイス製造業)の全社SCM(注1)改革、BPR(注2)プロジェクト及びシステム導入プロジェクトに10年間従事した後、2015年3月には投資事業を主たる目的とする株式会社ウエノグループ(以下「ウエノグループ」といいます。)を創業し、代表取締役に就任しました。その後、2015年12月、ウエノグループは東京証券取引所市場第二部に上場している株式会社MCJからその完全子会社であった当時の秀和システムの発行済株式の全てを譲り受けた後、2016年2月に秀和システムを存続会社、ウエノグループを消滅会社とする吸収合併を行ったことで、現在の秀和システムが発足しております。なお、秀和システムズは、1974年12月に秀和システムトレーディング株式会社として設立され、上記の経緯から、上田智一氏が2016年11月にその代表取締役会長兼社長に就任し、その発行済株式の全てを所有し、IT関連・ビジネス関連を中心とする書籍出版事業、システム構築事業及びソフトウェア開発事業を営んでおります。」(出典:https://irbank.net/E36386/offer?f=S100L0HE)
秀和システムズはこのほかにも不動産業や旅館業などさまざまな業種をM&Aしており手広く事業を展開していたようです。船井電機を240億円の巨額の資金で買収することになりますが、資金調達力には目を見張るものがあります。
出版社による家電メーカーの買収の結末
小が大を呑むM&Aには当時も話題になりました。M&Aに際して、家電事業が苦境であるため非上場化によるコスト削減と複数の新規事業で新しい収益を模索する。その際にM&Aを積極活用するという方針は、まさにM&Aで船井電機を手に入れる秀和システムズなら現実味があるかも、と思える取り組みに映りました。
ですがこの事業買収からの非上場化が実は、船井電機を解体し現金を抜き取る悪意のあるM&Aであったのではないかという疑念がSNSを中心に広がっています。というのも秀和システムズによる船井電機買収直後は船井電機に現預金が500億円程度あったということですが、数十億円でミュゼプラチナムを買収したとはいえ、20億円程度と言われるミュゼプラチナムの広告債務を支払うこともできないほど、船井電機の現金は枯渇してしまったのです。挙句経営陣にも電機業界関係者を据えていた布陣だったのが、金融含め他業界からの役員を多数迎え入れ経営の透明感がました挙句、倒産に追い込まれてしまったからです。
広告費も払えなかったミュゼプラチナム買収が争点に
船井電機は家電分野での収益性の悪化を補うためにM&Aによる家電、美容・医療、リサイクル、車載機器、デバイスの5つの分野への多角化を目指します。高収益事業の確立を目的に美容事業を拡大するため、2023年に脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を買収しました。
異業種買収によって収益基盤を広げる多角化戦略は一見魅力的ですが、昨今はエステ業界全体が医療脱毛や医療痩身サービスの台頭で競争が激化し、多くのエステ企業が経営難に陥っています。2023年にはエステ大手の銀座カラーが倒産したように、業績低迷に悩まされています
ミュゼプラチナムも同様で、高い広告費を負担して無料・低単価体験コースを提供し続けないと顧客が呼び込めないものの、定着せず売上が減少していくという負のスパイラルに陥っていたようです。ミュゼプラチナムは広告費も支払いできない状況で約20億円とも言われる広告負債を抱えていました。そして船井電機HDはミュゼプラチナムの債務を連帯保証する契約になっていたという事です。苦境のミュゼプラチナムには支払い能力がなく、船井電機も支払いに応じなかったため、広告会社が裁判所に仮処分申請を行い、船井電機の過半数の株式を仮差し押さえするという事態に発展します。
3年で500億が消えた!誰が得をしたのか?
秀和システムは、船井電機買収当時、連結子会社8社(以下、秀和システム及びこれらの連結子会社8社を有していました。上田智一氏は、これまで、秀和システムをはじめとして、中古マンションの買取再販事業及び不動産投資及び管理事業を営む株式会社ウイングコーポレーション、中古マンション・戸建てのリフォーム・リノベーション等の内装事業を営む株式会社クレイドル(神奈川県横浜市)、リフォーム業・不動産業等を営む株式会社装研グループ、有限会社しばた装研、広告代理業・経営コンサルティング業を営む株式会社敬屋社中、旅館業を営む株式会社加満田の6社に対して、秀和グループを通じた投資を行ってきた実績を持っていたと言います。
多角化を進めるという方針は特段不審な点はないように思われますが、船井電機買収後わずか3年で500億円とも言われる資金がなくなっていることは、無視できない事実です。240億円ともいわれる買収資金の返済や、ミュゼ買収に数十億と巨額の資金を投じてきたことは確かです。もとより難しい経営のかじ取りであったことは間違いがない経営再建だとはいえ、ミュゼ買収後のドタバタが強い印象を残してしまい「半グレに資金が流れたのではないか」「秀和システムズは船井電機を故意に破綻させて現金を抜いたのでは?」と疑惑の目が向けられています。