取材班は見た!大荒れに荒れたスルガ銀行株主総会を直撃取材!【後編】

取材班は見た!大荒れに荒れたスルガ銀行株主総会を直撃取材!【後編】

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被害者がスルガ銀行本店にむかって訴える

波乱を含んだ第212期スルガ銀行株主総会は怒号に包まれて閉会しました。結局全て否決された20個の株主提案と、対話の姿勢がなく事務的に進行したスルガ銀行側の対応に不満を募らせる被害者株主の面々。怒りや落胆の雰囲気をそのままに、総会会場のすぐ横にあるプラザヴェルデ市民会館でスルガ銀行不正融資被害者弁護団による記者会見がはじまります。

マイクを握ったSI被害弁護団の河合弁護士、五十嵐弁護士、紀藤弁護士は一様にスルガ銀行の対話しない姿勢を非難しました。

いつまでにどう解決するのか?というのが何も提示されていない(河合弁護団団長)

「スルガ銀行の説明は、一見するともっともらしく聞こえるが、結局『いつまでに解決する』っていう具体的なカレンダーが全く提示されていません。あたかも一生懸命解決するかのように提案しているけれども、具体的なイメージを僕らは持てない。いつまでにどう解決するのか?というのが何も提示されていない。改めてそう感じさせられる総会でした。」(河合弁護団団長)

河合弁護団団長

不正融資の定義とは?嵯峨社長は質問には答えない(五十嵐弁護団事務局長)

「株主総会の中で嵯峨社長に不正融資の具体的な例を提示し、改めて定義とは?と問いました。しかし嵯峨社長は『2019年5月以降、(不正融資)は全く行われていない』『1件も行われていない』と発言するばかりでした。質問に対しての答えになっておらず、その後も他の被害者の方からも2名ほど援護射撃的に同じ質問が飛びましたが、結局、嵯峨社長からは質問に対して何の答えも出てこなかったんです。」(五十嵐弁護団事務局長)

五十嵐弁護団事務局長

今回、一般の株主が発言してくれたのはよかった(紀藤弁護団副団長)

「今回の質疑や動議は基本的にSI被害者同盟の方や弁護団が中心で人数的に13名くらいの質疑だったのだが、被害者ではないと思われる一般株主の方が、被害者や弁護団の声を聞いて自ら挙手をし『スルガ銀行は謝罪すべきじゃないか』と発言してくれたのがとても印象的でした。届く方には届く。そういった上でも「被害を訴え続ける」ということはとても大事だと思います。(紀藤弁護団副団長)

紀藤弁護団副団長

区切られた席は、昨年以上の「鉄柵」が設けられていた(ガルスTV・ReBORNs代表の冨谷氏)

「ブロックごとに区切られた席は、昨年以上の『鉄柵』が設けられていました。スルガ銀行は私たちを暴徒扱いしているということです。スルガ銀行の議事の進行が稚拙かつ、質問しても正しく回答する気がない、あるいは、逸らしたり、逃げたりといったところで、被害者はヒートアップしてしまう一面もあるのは確かです。しかし、もちろん勝手に席を立って移動したり暴力に訴えることはありません。スルガ銀行は最初から、被害者に向き合って回答するつもりがなくて、一方的に被害者を暴徒とみなして、荒れることを前提に考えた上での『鉄柵』だったんです。」(冨谷氏)

ガルスTV・ReBORNs代表の冨谷氏

被害者の中で救済された人は1人もいない(被害者代表)

「スルガ銀行は対外的に『アパマン不正融資問題はかなり進んでいて、解決までもう少しです』とアナウンスしています。ですが、その実態は違って被害者の中で救済されたという人は1人もいないんです。被害者とちゃんと対話してほしい、弁護士を間に挟むのではなく被害者の1人ひとりとちゃんと話をしてほしいんです。総会ではそう訴えてきました。」(SI被害同盟代表)

被害者を代表する立場の5人の言葉からは、スルガ銀行はきれいな言葉で株主に説明しているが、実態は被害者との対話を無視している姿勢が明らかであるという非難の声でした。

スルガ銀行本店前のスタンディングデモ

本店前のスタンディングデモ

記者会見後、SI被害者同盟が向かったのはスルガ銀行本店前です。ここでスタンディング・デモが繰り広げられます。総会後のスタンディングデモは被害者がスルガ銀行の支店など各所3カ所ほどに分かれて活動していたとのことですが、沼津にあるスルガ銀行本店前では朝の会場周辺のスタンディングデモとは違い、実際に被害者がマイクを握り『自分がどういう被害にあって、現状はどうなのか』を切々と訴える場となりました。そして、シュプレヒコールという掛け声で、参加者一同がスルガ銀行を非難する声をあげます。

スルガ銀行本店の壁に反射する被害者の訴えは、生々しいもので、印象深いものがありました。炎天下の元ではありましたが、道行く通行人だけでなく、本店で働くスルガ銀行 行員、銀行利用者や銀行関係者にもその声は届いていたはずです。スルガ銀行の関係者は、どのように受け止めたのでしょうか。

被害者がスルガ銀行本店にむかって訴える

最後に

去年の反省を踏まえて、今年は投資と詐欺編集部が、株主となって株主総会も取材しました。その中で強く感じたのはSI被害者とスルガ銀行の温度差・距離感です。本来、株主総会とは株主によって構成される会社の意思決定機関です。株主は会社の所有者として、重要事項を決定できる権限があるはずです。しかし議案に賛成の拍手を送る個人株主の声はスルガ銀行の経営層には届きませんでした。なんのための株主総会なのか非常に疑問が残ります。

もちろん冨谷氏も認識しているように、スルガ銀行から見ると被害者が株主として総会に乗り込んでくることは大きな脅威でしょう。暴徒化するのではないかという疑念を持つことも、対策を過剰に行うことも、いまのスルガ銀行にとって必要な措置だったかもしれません。しかしそれにしても対話がなさすぎるように感じられました。

スルガ銀行は順調に交渉が進んでいると説明しているのに、鉄柵を設けなければいけないほど、株主総会が荒れているのです。満場の拍手で議題が賛成されているにも関わらず、賛成者が過半数を超えないと判断しているのです。この点をSI被害者同盟の関係者がどのようにとらえているかを最後に紹介しておきましょう。「実は去年もこうした事態になりました。賛成の拍手を株主総会の議長が無視したのです。この点に強く異議申し立てをしたのですが、スルガ銀行からは『賛成数は議決権数で判断する。保有している株式が多い株主の賛成が得られなければ、拍手の数が多くてもそれだけでは採決できない。」という回答があったと言います。当日参加していたスルガ銀行親派の株主が拍手しなかったのか、事前に反対に回っていたのかは判然としませんが、スルガ銀行は満場の拍手を少数意見として認識したわけです。

このままでは少なくとも被害者との間で交渉が前に進まないのは明白だといえるでしょう。スルガ銀行不正融資被害弁護団の弁護士たちも、この溝の深さを肌で感じているのか、河合弁護団団長は総会後の記者会見で「このまま本当に(スルガ銀行側が)解決をしようとしてないのであれば『株主代表訴訟』を起こす」とさらに発言をエスカレートさせています。

1000億円以上の不良債権となっているスルガ銀行不正融資に関連するアパート・マンション融資ですが、スルガ銀行と被害者団体との対立に歩み寄りは見られませんでした。クレディセゾンとの業務資本提携の締結、株価回復を背景に、被害者団体の声を無視しなかったものかのように扱うスルガ銀行と、不正融資の実態を叫び続けるスルガ銀行不正融資との戦いはまだまだ続きそうです。