Home 詐欺を知る ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『事故物件』

ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『事故物件』

ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『事故物件』

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『正直不動産』は、2022年春に、NHK『ドラマ10』枠で放送された、不動産業界の裏側をコミカルに描いた作品である。ドラマを題材に不動産取引で気を付けるべきことを学んでいこう。第7回は、『事故物件』である。

事故物件

皆さんは、事故物件の定義をご存じだろうか?国土交通省のガイドラインによれば、「自然死や不慮の事故死以外の死」や「特殊清掃が必要になる死」が発生した物件を事故物件と呼ぶ。つまり、自然死や事故死の場合は、事故物件にはあたらないのだ。そして、仲介業者には物件の瑕疵として、事故物件を告知する義務を負う。今回は、事故物件を見ていこう。

事故物件を探して

月下は、変わった顧客を担当となった。70代独居者の松井節子だ。今、借りている賃貸が取り壊しになるため、新たな賃貸を探しているという。それも、事故物件を借りたいとの申し出だ。確かに、事故物件は、家賃が割安である。月下、早速、事故物件をリストアップした。しかし、借り手である松井の高齢ゆえに、全てオーナーから断られてしまう。孤独死のリスクや支払いへの不安が主な理由だ。対象物件を広げるべく、事故物件以外も視野に入れるよう松井に提案するが、松井は、『事故物件がいいの。』と譲らない。

宣戦布告

ある日、永瀬と月下が外回りをしていると、いきなり美女が、声をかけてきた。『わたくし、ミネルヴァ不動産の花澤と申します。登坂不動産の永瀬さんですよね。ここ数年、このエリアのNo1営業マンにお会いできて光栄ですわ。ただ、相当あくどい手口を使われるそうですね。嘘を並べて、売りさばく。どうか、お手柔らかにお願いいたします。』これには、永瀬も黙っていない。『あなたのような容姿端麗の方は、営業スキルがゼロでも色仕掛けで何とかなるから実にうらやましい。いいなぁ、ハニートラップ営業は。』月下も顔を歪める。『私、あの人と絶対友達になれない。』これが、ミネルヴァ不動産からの宣戦布告であった。ここから、苛酷な不動産戦争が始まる。

本当の理由

実は、ミネルヴァ不動産が近隣に開業して以来、登坂不動産の営業成績が、目に見えて落ちていた。それも、成約寸前で、客から事故物件を黙っていたとの言いがかりを付けられ、キャンセルされるケースが続出しているのだ。永瀬は、事故物件を希望する松井にも、疑惑の目を向ける。というのも、松井が現在、住んでいるアパートには、取り壊しの計画などなかったのだ。永瀬が松井に詰め寄る。『ミネルヴァ不動産の指示で事故物件をお探しなのではありませんか?事故物件に住んで、登坂不動産に騙されたと悪い噂を流すつもりじゃないですか?』これには松井も反論する。『そんなつもりはないわよ。』そして、松井が事故物件にこだわる、本当の理由を明かす。『私、1年前に夫を亡くしたの。でも、ある夜、枕元に夫が来てくれてね。私、嬉しくて。ただ、それ以来、来てくれなくなって。事故物件なら、夫も出てきやすいかなって、そう思ったの。確かに、事故物件が嫌いな人がいるのも分かる。でも、その部屋で亡くなった誰かも、誰かにとって大切な人だったと思うの。だから、私、事故物件を怖いとは思わないの。でも、この歳だと部屋探しも難しいのね。』これには、永瀬も松井への無礼を詫びる。そして、こう宣言した。『この永瀬にお任せください。あなたにピッタリな部屋、見つけて参ります。』

高齢者向けマンション

永瀬と月下は、事故物件と噂されるマンションへと向かった。二人を乗せたエレベータは、指定していない4Fで勝手に止まる。幽霊の仕業だ。思わず逃げ出す二人を、細身の男性が呼び止める。ここのオーナーだ。彼は、ここは事故物件ではなく、単なるエレベータの故障だと話す。だが、松井のような高齢者の受け入れは出来ないともいう。本当に、事故物件になるのが怖いのだ。ここで、オネスティ永瀬が発動する。『事故物件にしないのもオーナーの役目ではありませんか?これから、急速に高齢化が進みます。人感センサーなどを取り付ければ、住人の異常を早期発見できるシステムもあります。いっそ、高齢者向けのマンションとしてリノベーションすれば、間違いなく需要はあります。これを手間と考えず、ビジネスチャンスと捉えていただけませんか?こういったシステムを取り扱っている業者を紹介します。入居者も登坂不動産が見つけて参ります。』オーナーが確かめる。『本当だね?』永瀬が応える。『ご安心下さい。私は、嘘がつけない人間なんです。』

連続受注

数日後、登坂不動産で契約を結ぶ松井の姿があった。松井が切り出す。『ありがとね。わざわざ、探してきてくれて。あと、一つお願いがあるんだけど。ここの近くに、いいマンションないかしら、3LDKで、3000万円位で。中古でいいから。息子夫婦に話したら、心配だから、近くに引っ越してくるって。』『でしたら、丁度良い物件があります。ただ、隣に保育園があって、昼は少しにぎやかなのですが』『私も、息子夫婦も、子ども大好き。』松井、笑顔である。

永瀬、月下、正直営業で、連続受注を達成した。嘘がつけなくなってから、営業に苦戦を強いられていた永瀬だが、少しづつ、嘘に頼ることなく、受注に結び付ける方法を身に着け始めている。そして、なによりも、気分がいい。そう、今、確実に、永瀬は生まれ変わろうとしていた。

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