2024年9月18日、警察庁は全国の警察本部の捜査担当課長らを集め、東京都内で会議を開催しました。この会議で共有されたのは全国で広がる詐欺被害の実態です。警察庁の露木康浩長官は、SNSを通じた投資詐欺や特殊詐欺の被害が「過去最悪の状況」にあるとし、非常に深刻な事態であると強調しました。
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被害が拡大深刻化するSNS型投資詐欺とロマンス詐欺
特にSNSを介した投資詐欺(SNS型投資詐欺)や、恋愛感情を利用して金銭を騙し取る「ロマンス詐欺」の被害が顕著です。今年上半期(1~6月)だけで、これらの被害額は約660億円、さらにオレオレ詐欺などの特殊詐欺の被害は約230億円に達しており、1日あたり約5億円もの損失が発生しています。
露木長官は、これらの詐欺の取り締まり強化と被害防止対策を全国警察に指示するとともに、犯罪情勢の変化に応じた警察組織や業務の見直しが必要であると述べました。
SNS投資型詐欺もロマンス詐欺も日本人詐欺師だけではなく、海外の詐欺師の増加が顕著です。SNSは世界中から利用できるという点も大きいのですが、犯罪がテンプレート化して模倣犯が増加していることや、AIなどの自動化ツールで自動的に詐欺メッセージを送るなどの手口の高度化がその要因です。音声AIを使ったボイスチェンジャーで男性詐欺師が女性と偽ってロマンス詐欺を図るケースもあります。また自動翻訳の精度も格段に向上し、海外の詐欺師が日本語でメッセ―ジを送るケースも増えてきています。
外国人による犯罪も増加
露木長官は、詐欺事件の他、太陽光発電所の金属ケーブル盗難など、組織的な窃盗犯罪の増加にも警戒を示しました。こうした詐欺グループはSNSで匿名かつ流動的に結びつく犯罪グループを形成しています。「いまお金がないから銅線を盗みに行こう」といった突発的な犯罪が成功すると繰り返し犯行におよんだり、手口をSNSでやり取りし、地域が拡大していくというケースがみられ、回数を経るごとに犯行の組織化が進みます。こうした犯罪者グループが同時多発的に各地に出現することになるわけです。こうしたSNSを介した外国人をはじめとした犯罪者グループへの対応強化が急務であると指摘しました。
この会議には、警察庁の刑事局幹部や都道府県警の刑事部、組織犯罪対策部門の課長など約340人が出席し、連携強化と対策の抜本的な見直しが議論されました。ですが取り締まりが議論されている間にも、毎日5億円の詐欺被害が発生している現状があります。
詐欺のリアリティがないから騙される危機感がない
騙されたことがない人は「他人に騙され金銭を奪い取られる」事へのリアリティが持ちにくいです。そのため「詐欺事件」がドラマの中のできごとで、自分に関係する事件であるとおもうことが少ないことでしょう。その結果「自分は騙されない」という根拠のない自信があるとしか思えない判断や行動をとってしまいます。
投資にはリスクがつきものです。特にリターンが大きい投資は損失も大きくなるのが当たり前という意識を持つことが重要です。ですから損失が発生したり、詐欺にあう可能性も投資を行う際には織り込んでおきましょう。
ハイリスク投資に「わかった上で挑戦する」ためのたった一つの自衛手段は「上限を決める」
たとえばFXや暗号通貨投資は有名な投資ですが、ハイリスクで、一気にもうけを得ることができる可能性がありますが、信用取引の場合、財産を一夜にして失う危険性もはらんでいます。無名を問わず、投資にはリスク分散が重要です。周りの人がだれも知らない投資手法や成功者を自認するだれかの投資手法は同様に多大なリターンもねらえるかもしれませんが、詐欺かもしれません。
詐欺事件の被害や投資の損失はだれも損を補填してくれません。「まさか自分が被害にあうなんて」と驚きや「こんな目に合わせた犯人が憎い」と怒りを抱くことになっても、それは投資家の自由な行動ではあるのですが、投資は一回限りのバクチであってはいけません。
「生活が破綻しないようにリスクヘッジした上で、上限を決めてハイリスクな投資に臨む」ことが生活や自分の生活設計を守る最後の砦になります。わかった上での投資実行を心がけることが重要です。