不動産投資は堅実に取り組めば、ローリスクで資産運用できる、昔ながらの伝統的な資産運用手法です。一方で、不動産業界はプロでないとわからない複雑な制度や慣行もあり、買い手と売り手の知識の差がかなりある場合もあります。そこに付け込んで詐欺が横行している業界としても有名なのは事実です。
一方で、だれが保有しても不動産の賃料や、売却益は入ってきます。正しい知識を持つことで、不労所得が得られる可能性が高いのも不動産投資の特徴です。そんな不動産投資に取り組みたい方も昨今の経済情勢の変化はかなりおおきいので不安を感じている人もいるのではないでしょうか。どんな時に不動産価格が上昇し、下落するのか、傾向を知っておくことで賢く投資ができるかもしれません。
今回は投資用の不動産物件を購入する際に、値上がりする理由や投資詐欺の手口、対策などを解説します。ぜひ悪質な業者による詐欺の対策や、意識するべきポイントなどを参考にしていただき、将来の資産形成を行ううえでの参考になれば幸いです。
目次
不動産物件が値上がりする理由
不動産が値上がりする理由は、経済的な動向や世界的なスポーツ祭典、万博などの各種イベント、都市の再開発などが多いです。東京オリンピックを当てこんだ再開発や都内のマンション価格の上昇は皆さんも目の当たりにされたことでしょう。(そしてコロナで中止になって新規開業したホテルや民泊施設が投げ売りされている状況も見てきたかもしれません)
なお、昨今の日本国内における不動産物件の値上がりには、以下の3つの理由が挙げられます。
- 金融緩和による低金利政策が影響している
- 2013年に東京オリンピックが決定して地価が上昇したから
- 富裕層・一般投資家の不動産投資需要が高まった
それぞれの理由をしっかりと理解しながら不動産投資を行うことで、リスクを下げられるため、ぜひ詳細をご確認ください。
金融緩和による低金利政策が影響している
2013年1月に日本銀行が金融緩和政策を発表したことにより、低金利政策や、アベノミクスの効果が現れはじめ、住宅ローンが組みやすくなりました。
日銀の黒田総裁のもと、現在でも継続されている「異次元金融緩和」と呼ばれている政策の1つです。来年以降の日銀の人事関係によっても、政策は大きく変更すると予想されておりますが、多くの投資家にとってはローンが組みやすくなり、追い風となったのは事実。
審査が以前よりも格段に通りやすくなったため、一般の投資家からも注目を集めた結果、不動産物件の需要が高まったことが原因の1つとして挙げられます。
2013年に東京オリンピックが決定して地価が上昇したから
2013年にアルゼンチンのブエノスアイレスにて行われた五輪誘致で、東京オリンピックが決定したことにより、2020年ごろまで東京都周辺の注目度が高まったため地価が高騰。
各競技場施設の建設や整備工事などに、国内外問わず、多くの人員が使われ、建築業界は人材不足が起こるほどの建設ラッシュが発生ました。結果として公示地価、基準地価なども上昇し、不動産業界全体の値上がりが発生したのです。
またオリンピック以外にも、2025年に開催予定の大阪万博などのように、世界中から注目を集めるような大規模なイベントは、不動産価格が高騰する大きな要因の1つだと言えるでしょう。オリンピックに限らず、大規模イベントなどは、人材や経済に多大な影響を与えるため、業界全体の市場価値を底上げしてくれるのです。
富裕層・一般投資家の不動産投資需要が高まった
都内のマンションは、エントランスや外観などのエクステリアにも、豪華なデザインを採用したハイエンドな物件が増えているため、大きな人気・注目を高めています。
ほかにもゲストルームや共有スペースなどが付いているマンションが増えており、マス層からも注目された関係から、投資目的で購入する富裕層が増えているのです。また富裕層以外にも一般の投資家や、台湾や中国などの海外の投資家からの需要も伸びている状況。
特に2015年以降からは、不動産業界においてチャイナマネーが大きく流通しています。このように、一般の投資家や海外からの需要の高まりが、昨今の不動産価格の値上がりに影響しているといえるでしょう。
不動産価格の今後の値上がりの見通し
現在、日本では「大阪万博」の影響により、京阪神圏などの近畿地方の不動産価格が上昇しています。
また、生産緑地による2022年問題についても、さまざまな意見がありますが、「日本全体の不動産価格に大きな影響を与えることはない」との見解が多くあります。
ほかにも、コロナの影響でテレワークが普及しました。テレワークの普及により、都市郊外などの物件需要は微量ですが高まりを見せています。今後の政策により金利動向が起こるのか起こらないのか、いつまで金融緩和が続くかにも注目されている状況です。
不動産価格の値上がりに良い影響を与える要素
不動産価格の値上がりに、よい影響を与える要素は次のとおりです。
- 大阪万博
- テレワーク需要
- 金融緩和によるマイナス金利政策
大阪万博は、東京オリンピックと同様に大規模なイベントです。
開催されると、約2,800万人もの入場者が来場すると予想されており、日本人はもちろん、多くの外国人観光客の来場にも大きな期待が集まる状況。
世界中からの注目が集まる関係から、インフラ整備や都市機能の強化が、すでに実施されているため、近隣エリアでは不動産価格の上昇が予想されています。また、テレワークの普及で在宅時間が増えたことにより、住環境を見直す需要が高まる動きも現れました。 金融緩和によるマイナス金利政策などの影響で、住宅ローンが組みやすくなったため、今まで手が出せなかった方や、審査で落ちる方も不動産購入が可能に。これらの影響も、不動産物件の値上がりに大きく起因します。
不動産価格の値上がりに悪い影響を与える要素
不動産価格の値上がりに、悪い影響を与える要素は次のとおりです。
- 都市部への人口流出による地方の人口減少
- 地盤変化や地質などによる影響
- 各種経済的要因が与える影響
東京などの都市部に若年層の方たちが就職や学業のために上京することによって、都市部以外の地域では、人口減少が発生して大きな問題になっています。地域によって、不動産需要に差が出るなど、さまざまな影響が出ています。それにより国では、東京一極集中への是正方策などの会議が本格的に話し合われるようになりました。
また、地盤変化や地質によって、不動産価値が下がる場合もあります。地震や災害によって脆くなってしまったり、排水管などが損傷することで有害物質が漏れ出てしまったり、インフラにも影響が及ぶためです。このように、大きな地震が起きてしまった際の安全性や、土壌汚染によって健康被害が出てしまう場合も、不動産価値が下がる傾向にあります。
そのほかにも経済的要因によって、不動産の需給バランスが崩れて価値変動が発生することもあるため、覚えておきましょう。
不動産投資で注意すべき「将来的な値上がり」に対するセールストーク
不動産投資を行う際に注意しなければいけないのが「悪質業者」の存在です。
不動産の営業マンによる、言葉巧みなセールストークで騙されてしまう人もいるため、自身で判断することが大切です。
なお、注意すべき不動産営業マンのセールストークは次のとおりです。
- 節税ができる
- 年金対策になる
- 将来値上がりする
- 高金利で儲かる
- 頭金なし
- クーリングオフできる
不動産投資における「メリット面」を強調して繰り返し伝える業者は、知識の少ない投資家をターゲットにして物件購入を仰ぐ傾向にあります。実際に物件を売却する際にも、聞いていた内容よりも価格が値上がりしなかったなどの状況も珍しくありません。 不動産投資を行う際には、セールスマンの話だけを聞くのではなく、金融の専門家に相談したり自身で知識を身につけたり、正しく判断することが重要です。
不動産投資で将来的な値上がりを期待する際に意識すべきポイント
不動産物件が将来、値上がりするのかを見極めたい際には、意識するべきポイントがいくつかあります。注意して見ておくべきポイントは次のとおりです。
- 最寄り駅
- 築年数
- 構造
- 広さ
- 立地条件(エリア)
特に注目していただきたいポイントは「立地条件(エリア)」です。
立地条件は、購入後も変更できたい要素であり、その立地や物件にどれくらいの需要があるのかどうかを意識しましょう。
周辺エリアに大学などが点在している場合は、一人暮らし用の物件需要が高まります。逆に小・中学校や住宅地では、ファミリー物件の需要が高まるのが一般的です。また、築年数にも注意が必要であり、利回りが良くても築年数などが古いと、維持・管理費用が大きく圧迫してしまいます。
「将来は値上がりする」という不動産投資の作業に遭遇した場合の対策
投資用不動産物件の営業マンから「将来は値上がりするから絶対に買った方がいい」などと言われて購入。詐欺に遭遇してしまった際には、その道のプロフェッショナルに相談しましょう。
- 宅地取引業保証業界
- 一般社団法人「日本不動産仲裁機構」
- 公益財団法人「日本賃貸住宅管理協会」
- 公益社団法人「全国賃貸住宅経営者協会連合会(賃貸協会)」
- 弁護士
- 消費生活センターまたは国民生活センター
上記の機関に相談すると、スムーズに解決へと話が進む可能性が高いです。
なかには早急に解決しなければいけない問題などもあるため、一人で悩まずに、まずは上記を参考に相談してみてください。
まとめ:不動産投資で将来値上がりする物件を購入する際は慎重に精査しましょう
不動産の営業マンから「将来値上がりするから絶対に買った方がいい」と言われて購入した物件が、詐欺物件だったり全く値上がりしなかったり、問題になることが多いです。
特に新築マンションは俗にいう「新築プレミアム」が価格にのっていますので、購入した瞬間に価値が大幅に下がることになるのです。新築マンションはデベロッパーの建設費用に加えて、営業費用(営業人件費、物件のパンフレット、モデルルームなど様々な経費が発生しています)が物件価格に含まれています。それでも極一部の不動産は購入時よりも高値になるものも存在していますが、よほど立地が良いなどの特殊な要因があるケースに限られます。
一方、周辺立地の価値は上がったが、購入した物件への維持・管理費などが予想以上にかかってしまい、当初のイメージと違うなどのケースも珍しくありません。
万が一不動産投資で「将来値上がりするから購入しましょう」などの詐欺に遭うと、今後の人生設計が大きく狂ってしまうことにもなります。そうならないためにも、今回ご紹介した値上がりを見極めるポイントや、対処法などを参考にしてください。
不動産投資はしっかりと行えば、頼もしい投資術となり得ます。まずは、基本的な知識から身につけて、徐々に実践的な不動産投資へと進んでいきましょう。