不動産を購入する時に、手元の現金で一括購入できる場合は、問題になりませんが、高額になることが多い不動産では、金融機関からの融資が重要なポイントとなります。不動産ローンを組むことで、少ない手元資金でも、融資でえた投資元金をもとに、家賃収入を得ることができますので、多くの投資家は不動産ローンを検討すると思います。
不動産購入の際して、「ローンの申し込みと審査」は一大イベントです。金融機関の主要な仕事である融資ですが、預金などと異なり、審査が必要となります。住宅用ローンとは異なり、他人に貸し出す賃貸用不動産物件は事業として成り立っているかも検討されるため、一見ハードルが高いように感じる事業用の不動産ローンですが、契約の流れや注意点などを知っておくと不安な部分も軽減されることでしょう。
今回は、「不動産を購入しよう(前編)」に続き、後編ではローンの申し込みや契約についてご紹介します。
目次
金融機関への融資(ローン)の申込み1・2・3
購入したい物件が決まってたら、金融機関へ融資の申し込みをします。申し込みから審査完了までは、一定期間を要するので、無駄な時間にならないよう流れを知っておくと安心です。大まかな流れとしては下記の3段階になります。
- ローン申し込み・仮審査
- 売買契約
- ローン本審査
金融機関とは不動産を購入するための融資ということで、金銭消費貸借契約(金消契約またはローン契約)を結ぶことになります。ローン契約は、金融機関に、不動産購入など金銭を消費する目的を明らかにして融資を申し込む契約のことですから、目的外の用途で金銭を使うと契約違反になる場合もあります。不動産物件の場合、融資の対象となる不動産物件を抵当にいれることになるでしょう。ローン申し込みから本審査完了まで1ヶ月程度かかることが多いでしょう。
提携先金融機関がある場合も
融資を求める金融機関は購入者が自分で用意することもできますが、不動産会社の提携先の金融機関が存在する場合もあります。金融機関からすると不動産ローンは抵当に不動産物件が確保できるので、回収が焦げ付き損をする可能性が低い優良な契約です。
不動産業者を販売チャネルとして育成して不動産ローンを数多く獲得したい金融機関は、販売数が多い不動産業者と連携して融資を行う取り組みを展開している場合があります。物件によってはすでに仮審査が済んでいる物件もありますので、条件をよく検討してお得になるかを判断していきましょう。
ローン申し込み・仮審査
第一段階のローン申し込みは、必要書類を揃えることから始まります。書類の不備があると、余計に時間がかかってしまうこともあるので、焦らずに間違えがないように揃えましょう。
<ローン申し込みで必要な主な必要書類>
- 物件概要書(物件価格、建物、土地の概要、収入など)
- 賃貸想定をした物件レントロール
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 不動産登記簿謄本
- 公図、建築図面、建築確認済証の物件資料
- 身分証明書(写真入り)
- 健康保険証
- 実印、印鑑証明書
- 住民票
- 前年度の源泉徴収票または確定申告書
- 勤務先の概要、職歴書
- 直近3年分の納税証明書
- 別で借り入れがある場合には、その分の返済予定表
- 金融資産などの保有資産
以上のように、たくさんの書類を用意しなくてはなりませんが、金融機関や借り入れ内容によっては、必要書類が増えることもあります。物件が決まる前に揃えられる書類もあるので、物件を探し始める段階である程度の資料を揃えておくと余裕があって良いでしょう。
必要書類が揃ったら申し込みと同時に仮審査に進むことができます。本審査の前に仮審査は必ず必要なものであり、事前にローンが可能なものか金融機関で調査をします。本審査よりも緩いものであり、金融機関によってはインターネットで仮審査ができるものもあります。ただし、仮審査が通ったとしても本審査が100%通るとは限りませんので注意しましょう。
融資の仮審査後に売買契約書を締結
売買契約の締結はちゃんとしないと大変です。ローンの仮審査が通ったら、物件の購入手続きに進みます。売り主と買い主との間で売買契約書を交わし、条件などを確認することになります。売買契約の内容は、項目が多いのでちゃんとチェックをして締結するようにしましょう。
売買契約では主に下記の18項目があります。
- 売買の目的物
- 手付金
- 売買金額の支払いについて
- 物件の面積、測量、代金の精算について
- 境界の明示
- 所有権を移転する詳細
- 引き渡し
- 抵当権の抹消について
- 所有権移転登記
- 引き渡し前の減失等について
- 物件状況の報告書
- 公租公課の分担
- 瑕疵責任
- 設備の引き渡しや修復
- 手付解除
- 契約違反による解除や違約金
- 融資利用の特約
- 借地権の場合の特約
物件引き渡しの大切な条件が盛り込まれているので、しっかりと確認をして、わからないことはその場で確認をしてください。現金取引の際は不要ですが、ローンで不動産を購入する際は、融資の本審査が通らなかった場合、契約解除と手付金の返還ができることを、契約書に盛り込んでおきましょう。
またこの売買契約書を交わす際に、契約の相手先に関して、注意しておきましょう。特に遠方の物件で、自分が現地を訪れずに物件を購入する際、提携金融機関やサブリース業者まで決まっている場合は、書面でしか取引関係を追えない場合があります。スルガ銀行不正融資事件では、遠方の物件を、一度も内見することなく買い手が購入できるように、提携金融機関としてスルガ銀行が紹介されていました。その際、サブリース契約までセットされ、買い手が不安を感じない仕組みが出来上がっていたのですが、売買契約書の相手先が売主ではなく、不動産業者や、第三者の不動産業者を介在させる三為取引の形態をとるなどの方法で、不当に価格を釣り上げて売りつけるケースが多発しました。
不動産は高額な取引ですので、不安がある場合は、弁護士や信用できる不動産業者に相談して進めることも重要です。
【本審査ってどんな感じ?】金融機関へローン(融資)の申込み
本審査は金融機関の本部や信用保証会社が審査を実施する段階で、仮審査よりも厳しく判断されます。仮審査は物件購入が決まる前の審査ですが、本審査は購入物件が決まってからなので正式な審査が可能です。
購入物件は担保となるため、物件の価値も含めて判断されます。個人投資家がローンを引いて物件を購入する場合は、下記の項目を重視して審査が行われます。
- ローン完済時の年齢
- 勤務形態と勤続年数
- 勤務先の事業内容や経営状況
- 借入額と頭金、返済負担率など
- 融資申請者の健康状態
仮審査よりも時間がかかり、数週間程度かかることが多いようです。本審査が通ったら、ローンの契約手続きに進むことができ、融資実行となります。
物件の引き渡しと瑕疵担保責任
ローンの審査と売買契約が完了したら、最後は物件の引き渡しです。引き渡しまで完了をしたら購入完了となります。買い手としては、物件引き渡し後に、予期せぬ不具合がないかを確認する必要があります。瑕疵担保責任の条項があれば、引き渡し前までに気が付かなかった欠陥が引き渡し後に見つかった場合、売り主が責任を負う契約項目です。
瑕疵担保責任の期間は、引き渡しから3ヶ月程度で設定されることが多く、万が一補修費用が発生した場合には、売り主負担で修理が可能となります。賃貸事業用に購入する場合は、すぐに貸し出せるように修繕を入れることになると思いますが、瑕疵に関しても確認するようにしましょう。