新宿には中国人オーナーが経営する中国人向け不動産会社が複数存在します。そんな外国人不動産オーナーに詳しい投資家Aさんと会食している際に出たお話を今日は取り上げようと思います。テーマは中国人投資家が最近また増えたという内容です。
「表からも裏からも中国人投資家が日本に進出してきていますよね。以前のように日本に出稼ぎに来る低所得層の中国人はほとんどいません。富裕層がシンガポール、カナダ、などに次いで、安全に資産を確保し生活する国になってきていると思います。」
Aさんが具体的な例として挙げてくれたのは、中国人投資家の都心部マンションの爆買いと民泊事業の拡大でした。その際に恐ろしいほどの家賃増額で日本人入居者に退去を迫るケースがあることも教えてくれました。
目次
民泊向けに都心のマンションを一棟買いして、家賃を爆上げ
日本人には外国人に対する区別、または差別が根強くあります。攻撃性こそ低いものの、異物として人種を見分けて対応を変えています。しかし全国的に工場や建設現場、コンビニなどの作業現場の人不足から、外国人アルバイトやパートが増え、一気に多国籍化しました。いまではコンビニのレジ打ちのスタッフがすこしたどたどしい日本語で接客する光景が日常となってきました。
こうした動きは都心部だけではなく、地方でも当たり前に光景になっています。そうした外国人は日本がオープンな文化でないことを理解してそれなりに折り合いをつけて溶け込んでいます。同国人でコミュニティを形成して、住み分けている印象です。
世界中にある中国人街が日本にも
そうした出稼ぎ外国人の中には、日本で成功して日本人を雇用したり日本人と結婚して社会に溶け込んでいるケースもあります。一方で中国人コミュニティの在り方は少し独特です。中国の経済成長で増加した富裕層が、中国国内の情勢を悲観し、日本で財産を確保しようとしています。それが中国人富裕層によりタワーマンション投資だったりM&Aだったりします。
中国では、土地を個人が購入することはできず、利用権を購入できるだけです。また共産党や軍の権力が強く、言論の自由や財産の自由が保障されているわけでもありません。そうした事情もあり、世界中どこでも生きていけるほど資産を持っている富裕層の一部が日本に居住するケースが増えてきました。
いままでカナダやシンガポールに拠点を置いていた層も、世界的な移民に対する取り締まりの強化などを背景に、生活拠点を移しているというわけです。
中国人の顧客は中国人
中国人のエリート層は世界中で現地のコミュニティに溶け込んでいる場合もありますが、人口が一定以上存在するために、日本に居住したり旅行で訪れる中国人を相手に中国語でサービスを提供する生活圏が成立しています。いわゆる中国人街です。
中国人富裕層は暗号通貨や不動産、現金などさまざまな方法で財産を持っていますが、実業にも手を伸ばしています。そんな実業の一つに民泊があります。日本に旅行にくる中国人は一昔前はツアー客が主体でした。ですが最近ではツアー以外に、中国人富裕層が日本に家族連れで観光にくる家族旅行が増えてきました。
ホテル利用も多いのですが、長期滞在や家族で泊まれるスペースをもとめて、民泊を利用するケースも増えてきたようです。日本では民泊というとAirbnbを思い出す人がおおいとおもいますが、中国人はAirbnbよりも、中国でシェアらが高い民泊サービスを利用することが多いようです。
- Xiaozhu (小猪短租):
- 中国国内で人気のある民泊プラットフォームで、海外の宿泊先も提供しています。中国人旅行者にとっては、母国語でのサービスが受けられるため親しみやすいです。
- TuJia (途家):
- 中国の主要な民泊サービスの一つで、日本を含む海外の宿泊先も取り扱っています。中国の旅行者が使い慣れているインターフェースや決済方法を採用しています。
- WeChat (微信):
- 中国で非常に普及しているSNSアプリですが、WeChat Payを通じて宿泊料金を支払う機能もあります。民泊の予約や支払いをWeChat内で行うことができるサービスもあります。
中国人旅行客に民泊を提供するために都心部のマンションを爆買い。その後入居者に家賃倍額に値上げを通知
都心部のタワーマンションの他に、利便性の高い中古マンションを一棟丸ごと購入する中国人投資家が最近増えてきたと言います。ドル建ての資産を持つ彼らからすると、日本の不動産は円安もあって3割引き以上にお値打ちに映っています。物価も安く、不動産価格も世界的な水準で見ると割安。そうした背景もあって、東京、大阪、名古屋、京都など都市圏や観光圏にあるマンションを一棟丸ごと購入して、マンションの規約などで文句を言われないように民泊として貸し出しているというわけです。
民泊は短期利用なのと、利用料が海外基準なので、日本で日本人向けに賃貸として貸し出すよりも大幅に利回りが良くなります。例えば一泊1万円~5万円などで貸し出すことができるわけです。その為、いままで10万円以下で賃貸として貸し出していた物件では、オーナーになった中国人投資家からすると利回りが悪く映ります。
そこで彼らは賃料を一方的に値上げし、いままで10万円だった家賃を20万円や30万円に吊り上げるケースが出てきています。
日本の常識では目を疑う行為です。日本の借地借家法では、家賃増額について「賃貸人は、賃借人に対し、相当と認められる賃料増額の請求をすることができる」と定めています(借地借家法第32条)。ここで重要なのは「相当と認められる」という部分で、家賃が急激に、または不当に増額されることは認められないとされています。
家賃を上げるためには、管理費の増加、物価の上昇、周辺相場の変動などの正当な理由が必要です。特に、民泊目的で家賃を吊り上げることは、普通に考えれば「相当と認められる」理由とは見なされにくいでしょう。
家賃を倍以上に吊り上げるようなケースは、法律上「相当」と見なされにくく、裁判所に訴えられた場合、増額自体が無効とされる可能性が高い行為です。
ですが大家さんがそんな無法を押し付けてくると闘う居住者も勿論いますが、少なくない居住者が「常識がない大家の行動が気持ち悪い」と不信感を抱き、退去するケースも出ているようです。
こうした中国人オーナーによる日本の都心部のマンション一棟買いや家賃高騰の動きは、グローバリゼーションの一環として見ることもできますが、特に土地の所有や利用に関しては、国家の主権や市民の生活に直結することから、単なる感情論以上の問題をはらんでいます。
今日取り上げたお話は、犯罪ではない範疇のお話でした。次回は「背乗り」と呼ばれる戸籍売買もつかって日本に浸食する中国人投資家について解説していきます。