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2025年第1四半期のタイ経済動向

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2025年3月時点で、タイ経済はコロナ禍からの回復が遅れており、他のASEAN諸国と比較しても立ち直りが鈍い状況です。2023年の実質GDP成長率は1.9%(タイ国家経済社会開発委員会)にとどまり、2024年も2.6%程度と予測されています(タイ中央銀行)。これは、ベトナムやインドネシアといった近隣諸国の成長率(5%前後)と比べると明らかに低迷しています。また、家計債務がGDP比で91.3%(2023年)と高水準に達しており、消費や投資の足かせとなっています。

輸出も振るわず、2023年の輸出額は前年比1.0%減の2,846億ドルと減少。特に自動車産業や製造業が苦戦しており、タイが「アジアのデトロイト」と呼ばれたかつての勢いは見られません。さらに、観光業はコロナ禍前の水準(2019年の観光収入605億ドル)に戻りつつあるものの、中国人観光客の消費低迷などが影響し、期待ほどの経済押し上げ効果を発揮していません。

タイの不況の主な要因

タイの不況には、いくつかの構造的・外部的要因が絡んでいます。

  • 家計債務の急増: タイの家計債務は、コロナ禍での補助金政策や過去の経済危機(リーマンショック、2011年大洪水)の影響で増大しました。特に、低所得層へのローンが不良債権化し、銀行の貸し渋りにつながっています。これにより、自動車や住宅などの耐久消費財の需要が落ち込んでいます。
  • 外需依存と中国経済への過度な頼り: タイ経済は輸出依存度が高く、特に中国への依存が大きい(財輸出の約15%、観光客の3割強が中国由来)。中国経済の減速や消費低迷がタイの輸出と観光業に打撃を与えています。
  • 少子高齢化: 生産年齢人口の減少が始まりつつあり、労働力不足が製造業や投資の魅力を低下させています。これが潜在成長率の低下を招き、「中所得国の罠」への懸念を強めています。
  • インフレと金融政策のジレンマ: 2022年以降のインフレ上昇(6.1%)が落ち着いたものの、生活必需品価格の高止まりやバーツ安懸念が残ります。政府は景気対策として利下げを求めていますが、タイ中央銀行は物価と為替安定を優先し、引き締め姿勢を維持。この政策の対立が経済回復を遅らせています。

タイの過去の経済危機との関連

タイの経済は過去にも大きな危機を経験しており、その影響が現在の不況に尾を引いています。

  • 1997年アジア通貨危機: タイのバーツ暴落に端を発したこの危機は、過剰な外資流入とバブル崩壊が原因でした。IMFの支援を受けたものの、緊縮財政と増税が課され、経済が長期低迷。これが家計や企業の借金体質を助長するきっかけとなりました。
  • 2008年リーマンショック: 輸出依存経済が直撃を受け、GDPが2.3%減少。企業倒産や失業が増え、家計債務がさらに膨張しました。
  • 2011年大洪水: 工業地帯が壊滅し、日系企業を含む製造業が大打撃を受けました。復旧のための借金が政府・民間双方に残り、経済の脆弱性を増幅させました。

タイ政府の対策と課題

タイ政府は消費刺激策として、2024年第4四半期に1人当たり1万バーツのデジタル通貨支給を計画しており、GDPを1.2~1.6%押し上げると期待しています。また、中国製品への関税強化など国内産業保護策も進めています。しかし、これらは短期的な効果に留まりやすく、構造的な問題(家計債務、労働力不足、外需依存)の解決には至っていません。

タイが不況から脱するには、家計債務の整理、産業の多角化(製造業からサービス業や創造的経済へのシフト)、そして労働力の質向上(教育・職業訓練)が不可欠です。しかし、中国経済の先行き不透明さや地政学的リスク(米中対立、中東情勢)が続けば、外需頼みの経済構造が足かせとなり続けるでしょう。ベトナムにGDPで抜かれるとの予測(2026年頃)もあり、タイ経済は正念場を迎えています。

要するに、タイの不況は、コロナ禍の傷跡に加え、長年の経済構造の歪みと外部環境の悪化が重なった結果です。

タイに今投資するべきかどうかを判断するには、メリットとデメリットを整理し、あなたの投資目的やリスク許容度と照らし合わせることが重要です。以下に、2025年3月時点のタイ経済の状況と投資環境を踏まえた考察を示します。

タイに投資する理由(メリット)

  1. 観光業の回復と成長見込み
    タイは観光業が経済の柱で、コロナ禍後の回復が進んでいます。2024年の観光収入はすでにコロナ前(2019年の605億ドル)に近づきつつあり、2025年はさらに伸びる予測があります。特に政府の消費刺激策(例: 1万バーツのデジタル通貨支給)が観光関連需要を後押しする可能性があります。観光関連企業や不動産(ホテル、リゾート)に投資チャンスがあるかもしれません。
  2. EV産業の成長ポテンシャル
    タイは「アジアのEVハブ」を目指しており、中国BYDや長安汽車などからの投資が急増中です。政府のEV普及策(EV3.0)や税優遇もあり、2025年には生産が本格化します。自動車関連産業やサプライチェーン(バッテリー、部品)に投資するなら、成長余地が大きいです。
  3. 地政学リスクの回避先としての魅力
    米中対立の影響で、中国依存を減らしたい企業がタイに生産拠点を移しています。特に半導体やプリント回路基板(PCB)産業で投資が加速しており、タイはASEANでの新たな製造拠点として注目されています。分散投資先として戦略的な価値があります。
  4. 割安感のある資産
    タイの株式市場(SET指数)は経済成長の鈍化や資金流出で低迷しており、株価が割安になっている可能性があります。長期目線で「底値買い」を狙う投資家には魅力的に映るかもしれません。

タイへの投資を控える理由(デメリット)

  1. 経済成長の鈍化と構造的課題
    タイのGDP成長率は2024年で2.6%程度と予測され、ASEAN平均(4-5%)を下回ります。家計債務の高さ(GDP比91.3%)、少子高齢化による労働力不足、中国経済への依存が成長の足かせです。短期的なリターンを求めるなら物足りないかもしれません。
  2. 外需依存と地政学リスク
    タイ経済は輸出依存度が高く、中国(輸出の15%)や米国向けに脆弱です。トランプ政権下での関税強化懸念もあり、2025年に貿易環境が悪化すれば打撃を受けるリスクがあります。
  3. 通貨安とインフレ圧力
    タイバーツは過去数年で下落傾向にあり、輸入物価の上昇が続いています。タイ中央銀行が利下げに慎重な姿勢を見せる中、為替リスクが投資リターンを圧迫する可能性があります。
  4. 競争激化とコスト増
    人件費の高騰や人材獲得競争が激化しており、特に製造業では利益率が圧迫されつつあります。他のASEAN諸国(ベトナムやインドネシア)が低コストで成長している点も、タイの相対的魅力を下げています。

タイに投資するべき?結論と提案

  • 短期投資(1-2年): 今すぐタイに投資するのはリスクが高いかもしれません。経済成長が鈍く、外部環境(米中貿易摩擦や中国経済の先行き)に左右されやすい状況です。様子見が賢明でしょう。
  • 長期投資(5年以上): EVや半導体、観光関連など成長分野に絞れば、タイの構造転換が成功した場合にリターンを期待できます。特に政府支援のある産業や東部経済回廊(EEC)関連は注目です。
  • 具体的な選択肢:
    • 株式: SET指数ETFや観光業(エアライン、ホテル)、EV関連企業(例: エナジー・アブソリュート)。
    • 不動産: バンコクや観光地の不動産は回復基調にあります。
    • 債券: 為替リスクをヘッジしつつ、タイ政府債などで安定収益を狙う手も。

最終的には、あなたのリスク許容度と投資期間次第です。タイ経済は転換期にあり、チャンスとリスクが混在しています。最新の経済指標や地政学動向を注視しつつ、小額から始めて様子を見るのも一つの戦略です。

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「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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