不動産投資を検討している方で、「頭金なしで不動産投資できますよ」と耳にしたことはありませんか。頭金を入れなくても不動産投資は行えます。ただし不動産業者のなかには「頭金なしで大丈夫」と、甘い言葉で個人投資家を騙そうとしてくる業者がいます。
本記事では「頭金なしで不動産投資が行える仕組み」「不動産投資の詐欺事例」「詐欺に遭遇した場合の対策」を解説。不動産投資を検討している方は参考にしてください。
目次
頭金なしで不動産投資できるのか?
融資を受ける金融機関によっては、頭金なしで不動産投資を行えます。不動産投資は他人の資本(融資)で、投資を行えるのが魅力です。
しかし頭金を入れないと借入額が多くなるため、リスクがあることを把握しておきましょう。
不動産投資における融資の基準
金融機関が不動産投資の融資で基準にしているのは「事業としての採算性」や「借主の属性」です。
事業としての採算性では、物件を購入して本当に利益が出るのか確かめられます。そもそも金融機関は「投資」に融資を行いません。以下の投資を目的に融資が受けられないのと同じです。
- 株式
- FX
- 仮想通貨
金融機関の融資は、不動産投資を不動産賃貸業と認識しています。そのため事業に対して融資を行い、採算性の審査に問題がなければ融資される仕組みです。
また借主の属性とは、勤め先・収入・勤続年数・貯金額などの詳細情報のこと。借主の属性は、購入する不動産の収益性が悪かったときに備えて確認されます。想定どおり収益が上がらなかったとしても、借主の属性がよければ返済の滞る可能性が低いと判断され、審査が通りやすいです。
融資額は「事業としての採算性」「借主の属性」を総合的に判断して決まります。購入する物件の収益性が悪い、借主の属性が良くないときは、頭金を出さなければなりません。
- 参考サイト①:https://www.gala-navi.com/column/investment/c006525
- 参考サイト②:https://www.tohshin.co.jp/blog/article0012.html#:~:text=%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E6%8A%95%E8%B3%87%E8%9E%8D%E8%B3%87%E3%81%AE%E5%AF%A9%E6%9F%BB,%E3%81%AB%E6%B3%A8%E6%84%8F%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%8
頭金と融資の違い
頭金と融資の違いは、端的に説明すると以下のとおりです。
- 頭金=自己資金
- 融資=借金(住宅ローン、投資ローン)
3,000万円の物件を購入する際に、3,000万円の融資を打診したとしましょう。しかし審査の結果、2,400万円までしか融資がおりませんでした。
2,400万円では物件購入できないので、自己資金から600万円を捻出しなければなりません。このときの600万円が頭金で、2,400万円が融資です
不動産投資における融資タイプの違い
不動産取引の融資は、物件の購入先によって大きく以下2つのタイプに分けられます。
- 不動産業者の場合
- ポータルサイト(個人)の場合
融資のタイプが異なると、審査の通りやすさや求められる自己資金が変わってきます。それぞれメリット・デメリットがあるため、事前に把握しておきましょう。
物件の購入先が不動産業者の場合
物件購入先が不動産業者の取引は、売主取引といいます。不動産会社と直接取引すると提携ローンの利用が可能です。提携ローンとは、不動産会社との提携で融資が受けられる金融機関が提供しているローン。
売主物件では、頭金を要求されないことが多いです。なぜなら「信用できる不動産会社が販売している物件だから、間違いないだろう」と思われるため、頭金なしでも融資が下りる傾向にあるためです。金融機関からすると、購入する物件の信頼度が高いのが理由として挙げられます。
ただし提携ローンは、複数の金融機関で検討できないため、本当に金利が安いか確認できません。また売主取引は不動産会社が仲介手数料を得られないため、物件価格が高めに設定されているケースが多いです。
- 参考サイト①:https://restyle.tokyo/forbeginners/no-deposit.html
- 参考サイト②:https://hedge.guide/feature/transaction-mediation-seller-proxy.htm
- 参考サイト③:https://restyle.tokyo/forbeginners/seller-property.html
物件の購入先が不動産ポータルサイトの場合
物件の購入先が、不動産ポータルサイトの取引を仲介取引といいます。仲介取引とは、個人買主と個人売主との間に、不動産会社が入って仲介する取引です。
仲介取引では提携ローンを使用できないことがあります。そのため、融資が下りる金融機関を自分で探さなければなりません。また頭金を求める金融機関も多いです。金融庁の調査でほとんどの金融機関が、購入金額の一部として頭金で賄わせていると分かっています。
【引用】投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果-金融庁
また審査にも時間が掛かり、融資が下りたとしても、安い金利で借りられないことも多いです。
- 参考サイト①:https://restyle.tokyo/forbeginners/no-deposit.html
- 参考サイト②:その他、必要に応じて参照(参照したURLは添付してください!)
頭金なしによる不動産投資の詐欺事例
頭金なしでできる動産投資として売主取引は魅力的です。ただし売主取引は、不動産投資の詐欺事例が数多くあります。詐欺事件に巻き込まれないために、以下2つの事件の概要を把握しておきましょう。
- カボチャの馬車事件
- 契約書類を偽装して頭金なしで契約させる詐欺
「カボチャの馬車事件」
かぼちゃの馬車とは、不動産会社の株式会社スマートデイズが提供していた女性専用シェアハウスの名称です。スマートデイズは、かぼちゃの馬車を個人投資家に販売し業績を伸ばしていました。
かぼちゃの馬車はサブリース契約です。「30年間賃料が保証される」を謳い文句に、高年収サラリーマンの個人投資家に向けて販売を続けながら事業拡大しました。自己資金のない個人投資家は、スルガ銀行から1億円以上の融資を受け、かぼちゃの馬車を購入しています。
しかし2017年に賃料減額を個人投資家に請求。2018年には賃料の支払いを停止して、経営破綻に陥ります。賃料が支払われなくなった個人投資家はローンの返済ができなくなり、自己破産を選択する方が続出し、社会問題として取り上げられました。
かぼちゃの馬車事件の問題点は、スマートデイズとスルガ銀行が結託し、不正を行なっていたこと。通常実績のない個人投資家に1億円の融資はおりません。しかし、スマートデイズとスルガ銀行がそれぞれ不正を行い、高額融資が下りるようにしました。
スマートデイズとスルガ銀行は審査書類を書き換え、実際の資産額よりも多い資産額に偽装し、審査を通していました。結果、個人投資家は身の丈に合わないローンを返済できなくなったのです。
※業者が売主
- 参考サイト①:https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2019/04/16/108673/
- 参考サイト②:https://www.propertyagent.co.jp/contents/pro/risk/8267
契約書類を偽装して頭金なしで契約させる詐欺
かぼちゃの馬車事件以外にも、書類を偽造して契約させる詐欺が起きています。近年大きく取り上げられた事件として、株式会社TATERU(現:株式会社Robot Home)の融資資料改ざんがあります。
TATERUは、物件購入希望者の年収・自己資金が少ない場合に、個人投資家の預金残高を水増しして金融機関の融資審査を通りやすくしていました。さらに他人の預金通帳の写しを利用して、組織的に書類の改ざんも行っていたのです。
頭金なしで物件購入できるのは魅力的です。しかし年収が低い・数百万の貯金がない方は「なぜ頭金なしで融資が下りるのだろう」と疑うように注意してください。
※業者が売主
「頭金なしで不動産投資できますよ」のセールストークには要注意
「頭金なしで不動産投資できますよ」のセールストークには、注意してください。
- 頭金のない方がレバレッジが効きます
- 頭金を入れない方が急な出費に対応できます
- 私のお客さんは皆さん頭金を入れていません
上記の切り口で「頭金なしでも大丈夫ですよ」と、セールストークする不動産業者もいます。甘い売り文句で騙されないためには、融資を受ける前に以下2つのことを考えましょう。
- 「頭金なし」の不動産投資には大きなリスクが潜んでいる
- 他人資本で簡単に収益化できる投資は存在しない
上記のことを考え、不動産業者のセールストークに乗らないようにしましょう。
「頭金なしで不動産投資できる」という詐欺に遭遇した場合の対策
「頭金なしで不動産投資できる」とのセールストークを信じて、詐欺に遭遇した場合の対策を解説します。詐欺に遭遇したら1人で抱え込まず専門家に相談しましょう。
おすすめの相談先は、以下の3つです。
- 宅地建物取引業保証協会
- 弁護士(法テラス)
- 日本不動産仲裁機構
宅地建物取引業保証協会
宅地建物取引業保証協会は、宅建業法第64条の2に基づいて設立され、全国の宅建業者の80%が所属しています、主な業務は、宅建業者と不動産投資家との間で発生したトラブル解決や弁済業務です。
協会の苦情解決でトラブルが解決しなかったときは、宅建業者が供託している営業保証金の範囲内で被害額が弁済されます。供託されている金額が1,000万円まで弁済されるイメージです。
被害相談は、都道府県宅建協会不動産無料相談より最寄りの宅地建物取引業保証協会にお電話ください。
弁護士
法的トラブルの解決は弁護士に相談するのが確実です。
しかし以下の内容で悩んでしまい、弁護士への相談をためらう方もいます。
- どの弁護士に相談したらいいか分からない
- 高額な相談料を請求されそう
上記の悩みを抱える方は、法テラスへの相談がおすすめです。法テラスは、借金や相続など法的トラブルを抱えている方の無料相談に乗っています。弁護士の紹介も行なっており、自分で弁護士を探す必要がありません。
弁護士に依頼する際の費用を立て替えてくれ、すぐに費用が払えなくても利用できます。不動産投資でお困りの方は、無料で対応してくれる近くの法テラスに相談してください。
一般社団法人「日本不動産仲裁機構」
一般社団法人「日本不動産仲裁機構」とは、不動産の取引・施工にまつわるトラブル解決を目的とした民間ADR機構です。ADRとは裁判外紛争手続といい、当事者同士の歩み寄り・努力によって紛争を解決する手法。
紛争解決の手段は、以下の3つです。
紛争解決の手段 | 概要 |
和解 | 当事者同士が譲歩し紛争を解決する方法 |
調停 | 中立な第三者が救済案を示し当事者同士に合意を促す方法 |
仲裁 | 中立な第三者が示す解決案に従う方法 |
裁判と比較して、迅速な紛争解決や少ない費用で利用できるのがメリットです。ただし裁判とは異なり、確実に紛争を解決できる手段ではありません。紛争解決のためには当事者同士の歩み寄りが不可欠です。自身の正当性を主張したい方は、裁判での紛争解決を選択してください。
まとめ:頭金なしで始める不動産投資にはさまざまなリスクが潜んでいる
自己資金の少ない方にとって、頭金なしで不動産投資が始められるのは非常に魅力的です。自己資金の割合が少なければレバレッジが効き、少ない資産で多くの収益が狙えます。
ただし不動産業者のなかには「頭金なしで始められる」をセールストークに、割高な物件を販売してくる業者がいます。また過去には、契約書類を偽造し、身の丈に合わないローンを個人投資家へ背負わせる事件も多発していました。
頭金なしで始める不動産投資にはさまざまなリスクが潜んでいます。自分の身を守るには不動産業者の言葉を鵜呑みにせず、自身で投資収益のシミュレーションをするのが重要です。
万が一、不動産投資詐欺に巻き込まれたときは専門家に相談し、早期解決を図ってください。