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    スルガ銀行の「シェアハウス以外の投資用不動産向け融資についての当社の対応状況(更新)」に反発する投資詐欺被害者たち

    スルガ銀行は2024年4月4日に「シェアハウス以外の投資用不動産向け融資についての当社対応状況」という文書を公開しました。この文書に反発して4月26日にSI被害者同盟が声明を発表しています。主張が食い違う両者の発表を解説していきます。

    スルガ銀行の声明

    スルガ銀行は、『シェアハウス以外の投資用不動産向け融資に係る組織的交渉(以下「アパマン問題」といいます。)について、当社は一日でも早い問題解決を強く希望しており、その実現に向けた3 つの方針を、昨年4月に公表しました。』と切り出し、1年前に発表した同趣旨の声明からのアップデートを報告しています。

    1. シェアハウス以外の投資用不動産、つまりアパート・マンション向け融資の早期解決に向け、①早期解決案の提示、②任意売却支援等による債務者負担の軽減、③個別案件に応じた判断、という3つの方針を掲げている。
    2. 収支黒字物件については、原則として約定返済を継続すべきという考えを示し、債務者に約定返済の再開等を求める文書を送付する。
    3. SI被害弁護団との間で進めてきた「早期解決フレームワーク」の協議は見解の相違が残る状態だが、引き続き問題解決に努める。
    4. 任意売却支援等により、債務者の負担軽減を図っている。
    5. 裁判では、これまでに6件の判決が確定し、いずれもスルガ銀行の損害賠償責任は認められていない。
    6. 3つの方針に沿って引き続き早期解決を図っていく。特に任意売却支援等による債務者負担の軽減を重視する。

    スルガ銀行は近づく株主総会に向けて、自らの立場や取り組みを説明し、早期解決への意欲を示す目的でこの文書を公開したと思われます。

    SI被害者同盟の反発

    この発表に強烈に反論を展開しているのがSI被害者同盟です。2024年4月26日に『「シェアハウス以外の投資用不動産向け融資についての当社の対応状況(更新)」について、スルガ銀行が事実とかけ離れた公表をしている』と強く反発を示し、SI被害者同盟、SS被害者同盟、SI被害弁護団は、被害者同盟声明・弁護団声明を発表しています。

    1. スルガ銀行の早期解決策や返済支援策は、長期的な視点を欠いており、修繕費や家賃下落などを考慮していない。
    2. 収支黒字物件の判断基準が机上の計算に過ぎず、実際のコストを反映していない。単年の黒字を根拠に返済再開を迫ることは、被害者の心理的負担を増大させる。
    3. スルガ銀行は被害者に謝罪せず、不正融資から得た利益を被害者に還元する姿勢がない。顧客第一の理念に反している。
    4. 自己資金資料の改ざんは不正融資問題の核心であり、スルガ銀行はこの問題に真摯に向き合うべきである。
    5. スルガ銀行の解決策は被害者にとって受け入れがたい内容であり、金融機関としての責任を果たすことが求められている。
    6. シェアハウスとアパート・マンションの被害者は平等に救済されるべきであり、スルガ銀行の対応は金融業界の道徳的指針となり得る。

    SI被害者同盟と弁護団は、スルガ銀行の対応の不十分さを強く批判し「被害者の視点に立った誠実な問題解決」を求めています。

    投資と詐欺の誌面でもご報告してきたように、シェアハウスでは担保物件の買戻しを行ったスルガ銀行ですが、アパート・マンションに関しては、SI被害者同盟に対して強硬な姿勢を取っています。スルガ銀行は1000億円規模の不良債権を抱えたまま一年また一年と年を重ねている状況です。

    その間もSI被害者同盟は被害者のデモや国会議員への陳情など対立が深刻化しています。金融庁からの業務改善命令も改善されないまま、問題は長期化の様相を呈していますが、スルガ銀行が旧経営陣を訴えているスルガ役員訴訟では、営業目標の達成のためにコンプライアンスをまるで無視した数字重視の経営姿勢や、不正な融資プロセスが法廷で明るみになってきました。

    怒鳴り散らす営業に委縮して審査部門が形骸化した。不適切な取引先と知りながらも脳死的に売上数字のために取引を拡大した営業部門。数字を上げるために不動産屋と連携して銀行法を無視した融資プロセスを日常的に行い、詐欺的な不動産物件を消費者に進めてきた姿勢が当事者たちの証言で次々と語られる中で、企業の道義的責任を問われる事態となっています。

    金融機関の社会的責任と顧客第一主義の重要性を訴える被害者の声は金融庁やスルガ銀行に届くのでしょうか。金融庁やスルガ銀行の今後の対応が注目されます。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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