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スルガ銀行が全面否定!スルガ銀行不正融資被害者の株主提案に関して弁護団が会見で説明

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はじめに

2022年6月16日にスルガ銀行不正融資被害弁護団(SI被害弁護団)の記者会見が東京地裁で行われました。会見では、被害者300名以上が連帯し、スルガ銀行の株を取得したこと、小規模株主の集団提案として連名でスルガ銀行に対して10箇条の株主提案を行ったことを報告しています。

前もって提案した10個の提案に対してスルガ銀行経営陣はすべて反対を表明し、2022年6月29日の株主総会に臨む考え。SS被害弁護団は抗議の意思を表明するとともに、オンラインおよび会場への抽選での入場に対して、法的措置も辞さない考えで臨むということです。本記事では詳しく経緯を追っていきます。

スルガ銀行不正融資被害者300名強が連帯して、スルガ銀行に提案した株主提案の内容

スルガ銀行不正融資被害者団体と弁護団がまとめ、スルガ銀行の株主総会に提示した株主提案の内容は以下の通りです。

 株主提案の内容スルガ銀行側の対応
第4号議案スルガ銀行嵯峨社長の解任余人をもって代えがたいので反対
第5号議案個人投資用及び事業用不動産資金の貸し付けを行わない特段問題は発生していないので反対
第6号議案融資審査資料を不動産業者から受け取らないすでにマニュアルで定めているので反対
第7号議案顧客から改ざん・不正等を指摘された案件について誠実に検証・公表するコンプライアンス統括部が対応しており、一件ごとに第三者委員会を設けるのは得策ではないので反対
第8号議案不正融資事件の迅速な解決を定款に定める全ての業務運営において迅速かつ正しい対応をとるべく努力しているので反対
第9号議案金融庁からの業務改善命令に向けたマイルストーンを明示し、決算説明会で進捗状況を報告する定期的に金融庁に報告を行っているが、業務上の秘密が多く含まれる。また、開示は適切に行っているので反対
第10号議案銀行員の不正が発生した場合に、その不正行為の内容を株主に開示する重大性にかかわらず不正発生の都度必ず株主に開示することは過剰な情報開示義務を課することになるので反対
第11号議案元役員及び元執行役員に対する訴訟もしくは元役員及び元執行役員からの訴訟について全容を株主に説明する元役員及び元執行役員に対する訴訟もしくは元役員及び元執行役員からの訴訟には様々なものが考えられ、その全容を一律に開示することは過剰な情報開示義務を課することになるので反対
第12号議案スルガ銀行が行った全ての融資について過去分も含めて厳格な内部通報制度を設ける定款に内部通報制度の規定を設けることは、法令上の義務の再確認に過ぎないので反対
第13号議案オンラインのみでの株主総会の非実施バーチャルオンリーの株主総会を開催するには定款を変更する必要があるが、定款を変更するのに株主の承認を得ていないのでそもそもできない。よって反対。

このようにスルガ銀行不正融資被害者が株主として集団提案した内容は10か条すべて採用しない意向をスルガ銀行は表明しています。

スルガ銀行の対応を受けたスルガ銀行不正融資被害者弁護団のコメント

10か条の株主提案を提示したものの、すべての提案内容を否定された現状を受けて、スルガ銀行不正融資被害者弁護団の弁護士各位はそれぞれ会見の中でコメントを述べました。

五十嵐弁護士(副団長):スルガ銀行不正融資被害者約300名で451株を所有している。つまり、それだけの数の株主が存在し、各株主には株主提案権がある。この株主提案権を行使して株主提案をおこなったが、スルガ銀行は全面対決の姿勢。

河合弁護士(団長):本件に関し、スルガ銀行はシェアハウスの時のような一括の対応ではなく、案件ごとの個々の対応すると言っており、スルガ銀行側はにじり寄る姿勢を全く見せない。そこで、株主提案権を行使するに至った。その中でも一番大きいのは嵯峨社長の解任。今回、嵯峨社長は「毅然とした態度で臨む」と言っている。「毅然と」という単語を用いるあたり、厳しい対応を行おうとしているのは明らか。(柔軟な対応を行おうとするのなら、「真摯に対応する」というのが一般的では。)この点から、スルガ銀行側はアパマン問題に関して抜本的に解決する気はさらさらないものだと思われる。消費者問題で株主提案がすべて反対されるのは稀有な例である。

冨谷氏:株主総会への参加は今回で5回目になるが、スルガ銀行の体制は変わっていないなという印象を受ける。今回の株主提案によって会社を再生してほしいと望んでいるが、10個の提案はすべて反対されている。

紀藤弁護士:ただ、反対意見をするということは、その反対意見の内容に関してはきちんと行うということをスルガ銀行が約束したことになるので、今後会社としての誠実さを確かめていきたいと思う。

株主総会は抽選で入場とするスルガ銀行と弁護団の抗議

スルガ銀行は、被害者が株主として提案した内容に関して全て反対というゼロ回答です。肝心の株主総会の開催に対しても、従来の先着順開催から、抽選制開催に方式を変更しています。弁護団はこの変更にたいしても大きな違和感を感じているようです。

松尾弁護士:今回の株主総会は来場事前登録制で、来場者数が座席数を超えた場合に抽選制になっているが、これは株主の権利を制限したり行使させなかったりするものであり、問題がある。例えば、株主提案権を行使しようとする株主が1人も出られない事態になるということも考えられる。この点に関して断固反対であり、妨害ではないかと考える。そこで、残された日数は少ないが、株主総会に参加することを妨害するなという内容の仮処分申請を行おうと検討中である。過去には公害問題で被害者が株主となって総会に参加しようとしたところ、会社側が拒絶したチッソの株主総会事件がある。(のちに最高裁で違憲と判定された)

河合弁護士:今回の来場事前登録制・抽選制は、株主提案権を行使しようとする株主の当然の権利を剥奪するようなものであり、コロナ禍に乗じて株主総会を何とかシャンシャンと済ませようとしているものでしかない。

スルガ銀行不正融資被害者弁護団と記者団の質疑応答

弁護団の説明ののちに、記者団と弁護団で質疑応答が交わされました。

民事調停の行方

記者団からの「民事調停の方はどうなっているか?」という質問に対して、「シェアハウスの件に関してはシェアというだけで定型的不法行為が認められるということで一括に処理されたが、アパマン問題に関しては個々に事情が異なるのだから1件1件どうするかを検討したい、と当初言っていた。その後類型的な考え方で、この類型に当たる案件に関しては早期救済を図るという提案がスルガ銀行からあった。しかし、当弁護団側としてはその類型に該当する対象があまりにも狭いと考える。そこで、この類型に関して真摯に協議を行っているが、スルガ銀行嵯峨社長の『毅然と対応する』といった発言があり、困惑しているところである。」と回答がありました。

「『類型的な対応』を行うものとして対象に含まれる案件は全体のうちどれくらいか?」という質問に対しては「実際にはわかりかねるが、1,2割程度だろう。過去の判例から考えてもスルガ銀行の責任からしても非常に狭い。」という回答がありました。

こうした回答に対して、記者団から「アパマン問題についてもシェアハウス問題と同様な対応が全員になされない限りは解決ではないということか?」という声もでたのですが、「それに関しては留保させてほしい。スルガ銀行側の言うことが全くあたらないというわけでもないが、中には築30年のアパートに30年ローンを組ませるような案件もあり、一般人の被害者にはそんな知識もない方も多くいる。弁護団としては、ほとんどの案件について救済されるべきだと考えている。」という回答が交わされました。

まとめ

スルガ銀行の嵯峨社長の「毅然とした態度で臨む」発言からは、スルガ銀行側が被害者に譲歩を見せない頑なな態度が伺えます。アパマン問題に関しては、シェアハウス問題の時のように一括解決は難しいことは弁護団も理解しているようですが、スルガ銀行の前向きな交渉姿勢がない場合、問題は長引きそうに思えます。

6月29日に予定されているスルガ銀行の株主総会の開催は、SI弁護団側が行った株主総会の中止をもとめる仮処分申請が認められた場合、中止になります。仮処分申請が認めれなかった場合、6月29日開催のスルガ銀行の定時株主総会には連名で株主提案を行った約300名の被害者たちが現地に集合しデモを行うなどの抗議行動を行うことが考えられます。いずれの場合も、世間の注目が集まらないようにするために株主総会を大禍なく終わらせたいスルガ銀行の思惑とは裏腹に、世間を騒がせる騒動になりそうな先行きです。

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