Home 詐欺と闘う フラット35を悪用した詐欺事件で相次いで逮捕者。暴力団も関与するARUHIフラット35事件とは?

フラット35を悪用した詐欺事件で相次いで逮捕者。暴力団も関与するARUHIフラット35事件とは?

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2024年2月、政府の住宅取得支援策として知られる住宅ローン「フラット35」が、暴力団関係者らによる大規模な詐欺事件に悪用されていた問題で、警視庁は新たに別の代理店運営会社の元社員と、ローン申請の名義人とみられる男を逮捕した。これにより、事件への関与が疑われる者は、SBIアルヒの複数の代理店に及ぶことが明らかになった。

投資と詐欺では以前からARUHIフラット35の不正利用の件についてレポートしているが、今回、この問題に詳しいAF35被害者同盟の方にお話を伺う機会を頂いたので、その話しを交えながらこの事件を紐解いてみたいと思う。

警視庁暴力団対策課が動いた!

警視庁暴力団対策課は2024年2月28日、SBIアルヒの代理店を運営する会社の元社員、高見京香容疑者(31)と、ローン申請の名義人とみられる芦田陽輔容疑者(35)を詐欺容疑などで逮捕した。高見容疑者は2020年12月、融資の受け付け担当だったSBIアルヒ代理店を通じ、芦田容疑者名義でフラット35の融資を申請。企業の在籍証明書などを偽造して会社員であるよう装わせ、SBIアルヒから融資金1510万円をだまし取った疑いが持たれている。

この事件は、2024年2月6日明らかになったSBIアルヒ大宮店の元社員・遠山清二容疑者(47)らによる詐欺事件と同様の手口で、フラット35制度の脆弱性を突いた犯行とみられる。警視庁は、特定抗争指定暴力団池田組系幹部ら男性3人も、不正な融資を仲介したなどとして詐欺容疑などで再逮捕。事件への暴力団の関与が深まっている。

過去にも反社の悪用が問題視されたARUHIフラット35

2019年には100件以上の不正な融資が問題になった事件が明らかになったが、その問題発覚のきっかけは、詐欺行為をあっせんした元暴力団員と分け前で揉めた結果だった。
埼玉県でザ・オリエンタルホーム社を運営する元暴力団組員が東京都のベストランド社と連携して不正な融資物件を行っていたが、オリエンタルホーム側が「リスクを負ってやっているので分け前を増やせ」と要求。結果的にベストランド社が断ったことでトラブルが激化。この問題に耐えかねたベストランド側が住宅金融支援機構に通報し、問題が明るみになった。

「やっと明らかになってきました。一人の社員が悪さしていただけの問題ではないんです。1件1名だけの事件ではなく、暴力団員のような反社が不動産業者と連携して、一般人をだまして、投資用物件の購入にフラット35を使わせていました。(AF35被害者同盟関係者)

フラット35のCMを見たことはあっても、住宅購入を検討したことがない人は、自分が住む物件にしか使えないことを知らなくても無理はない。かくいう私も恥ずかしながらフラット35については不動産ローンというくらいの認識しかなく、投資用も住居用も住宅ローンで購入できると不動産投資を学ぶ前までは思っていた。

「このフラット35を投資用物件に利用して不動産を購入してしまった人たちの多くは『不動産投資をすれば、将来の不安が払しょくできる。毎月の利益は少ないけれど生命保険のようなもの』『サブリースがあるので、絶対損しない』という言葉を信じて契約しています。
私たちAF35同盟だけで、累計100件近くの相談が寄せられています。泣き寝入りしている方もいるでしょうから被害は一層深刻です。」
(AF35被害者同盟関係者)

フランチャイズ制度を実施するが、加盟店で不審な融資が多数存在

住宅金融支援機構は国が資金を投じている住宅取得を支援する金融サービスを行う会社だ。アルヒは一度一般消費者にお金を貸し出すが、その貸し出した融資債権は住宅金融支援機構が購入する。つまり売り手から見ると薄利だが、ノーリスクで貸し出しを行うことができるというのがフラット35という金融商品の位置づけとなる。アルヒは全国をカバーするためにフランチャイズ制度を用意して、加盟店を募り業務を推進していた。その加盟店の中には、問題が多く報告されている加盟店もある。投資と詐欺編集部の取材に応えて、AF35被害者同盟の幹部は不審な融資が横行している実態を詳細に語ってくれたので、投資と詐欺編集部が表にまとめた。

店舗名関与者問題点
アルヒ大宮店T山氏・FC店を運営していたバスクモーゲージ社が複数案件で不正行為に関与。その後アルヒ大宮店は直営店に。
・旧運営会社バスクモーゲージは2023年に経営破綻。
アルヒ渋谷店T下氏、Y木氏・AF35被害者同盟の参加者16名から相談あり。
・不正な融資組成への関与疑惑あり。
アルヒ湘南茅ケ崎店K田氏
Y口氏
・RA社との蜜月関係で不正な融資手続きの疑惑。
・斡旋した宅建業者とアルヒ代理店職員が、「転居が決まっているので住民票を長く置けないですが大丈夫ですか?」「大丈夫」と被害者の眼の前で会話していた事例も。
・住宅金融支援機構から買戻し請求を受けた実績あり。
アルヒ町田店C澤氏・4,5件の被害者がAF35被害者同盟に所属。
・面談がなく駅の構内で立ち話のみで融資実行
アルヒ新宿西口店M山氏・都内の自宅用の物件(本当は投資用物件)の契約のために契約者の住んでいる石川県まで遠出。金利が良いので石川県内の自宅もフラット35に借り換えたいと相談するも、石川県のアルヒに相談してくださいと回答。
アルヒ大阪福島店I添氏・RA社(上述とは同じイニシャルだが別会社)との蜜月。10件以上を担当。
・I添氏の指示で、投資用の設備のある本来の図面とは別に、改ざんした住居用図面を出し直したと業者が証言。
・住宅金融支援機構から買戻し請求を受けた実績あり。
AF35被害者同盟幹部の語るアルヒ加盟店の疑惑の融資例

被害者団体「AF35被害者同盟」の関係者によると、問題になったアルヒ大宮店以外にも、アルヒ渋谷店やアルヒ湘南茅ヶ崎店、アルヒ町田店など、複数の店舗で不審な案件が確認されており、大阪福島店のI添氏担当案件で2件 (「同一の物件において、投資用と住居用で設備が異なる2種類の平面図を受領しながら、その事実について、申込人又は申込人から委任を受けた事業者に確認や説明を求めることなく、手続を進めた事実が判明したため。」)、湘南茅ケ崎店のK田氏担当案件で3件(在籍確認及び借入意思確認のための申込人への連絡について、当機構が指定する所定の方法・形式により実施していなかったことが判明したため)アルヒに対して住宅金融支援機構が債権の買戻しを迫り、アルヒが応じたという事件も発生しているようだ。

悪用されるフラット35

事件の背景には、フラット35制度の問題点が浮かび上がる。フラット35は、低金利で長期固定という魅力的な条件を持つ一方で、審査の甘さや不正防止策の不備が指摘されてきた。実際、SBIアルヒと提携する住宅金融支援機構の対応には疑問の声が上がっている。被害者団体AF35被害者同盟との交渉では、アルヒ側が不正案件の調査と対策に消極的な姿勢を示したほか、機構も問題の早期発見と防止に向けた取り組みが不十分だったとAF35被害者同盟幹部は指摘している。

加えて、フラット35を悪用した詐欺事件の背景には、反社会的勢力の資金源問題もある。暴力団関係者らは、高値掴みの不動産を購入させて融資金を詐取し、その資金を組織の運営に充てていたとみられる。こうした犯行は、一部の借主の債務不履行リスクを高めるだけでなく、暴力団の活動を助長しかねない。

住宅ローンが暴力団の資金源に

被害者の中には、高値掴みによる融資で返済困難に陥ったり、詐欺的な勧誘により契約させられたりした事例も少なくない。AF35被害者同盟の活動は、こうした被害の実態を明らかにするとともに、制度の周知不足やリスクの所在についても警鐘を鳴らしている。AF35被害者同盟が行った独自の調査(ターミナル駅で詐欺被害のターゲットになりうる若者層へのアンケート調査)を行ったところ、大半の若者がフラット35の仕組みや注意点を十分に理解していないことが分かった。

今回の一連の事件は、住宅取得支援策の重要性と同時に、制度の健全な運用を確保することの難しさを浮き彫りにした。関係機関には、不正防止と被害者救済に向けた実効性ある取り組みが求められる。SBIアルヒと住宅金融支援機構は、審査体制の強化や不正案件の早期発見・対応に努めるとともに、借主への啓発活動も積極的に行う必要がある。
また、金融という非常に社会的信用のある分野において、フランチャイズ制度が今回のような不正の温床となってしまっている感も否めない。このような業態の企業に金融業の免許を与えた金融庁にも一定の責任を果たす必要があるのではないだろうか。

同時に、類似の詐欺事件の再発を防ぐためにも、制度の見直しや関係者への教育・監督など、抜本的な対策が不可欠だ。反社会的勢力の関与を断つための法整備や、不動産取引の透明性を高める仕組み作りなども検討すべきだろう。

アルヒは今回の事件は2021年の社内調査により発覚したものであると公表しているが、果たして自社調査のみで代理店まで含めた不正や反社会的勢力との繋がりを調査しきれているのか、またそれらをきちんと公表しているのか疑問が残る。

金融機関として透明性を担保するために第三者委員会による調査が待たれるところだ。

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