不動産投資にはエビデンス改ざんという詐欺があります。しかし自分は詐欺に遭わないから大丈夫だと思っている方もいるのではないでしょうか。悪徳不動産ブローカーの口車に乗せられて勧められるがままにローンを組み、知らないうちに被害者になってまうことも珍しくありません。
今回は、実際にあった事例や詐欺に遭わないための注意点、対処法など、知らないと怖い不動産投資のエビデンス詐欺について解説します。正しい知識をつけることで自分の身を守ることができるので、しっかりと対策することが大事です。
目次
不動産投資におけるエビデンス改ざん詐欺とは?
エビデンス改ざん詐欺とは、ローン審査時、所得証明の源泉徴収票や所持資産証明の通帳コピーなどをごまかして提出し、ローン審査を通過させる手口です。無理なローンで返済が厳しくなると、のちのち破綻に追い込まれてしまいます。
年収改ざん
一般的には年収が高いほど高額のローンを組むことができます。ローンの審査を通すために、源泉徴収票や課税証明書などの収入証明資料の数字を改ざん。
年収の水増しをすることにより、本来の所得よりもグレードの高い物件を購入できます。契約時などの、自分の知らないところで勝手に改ざんされるケースも珍しくありません。
ほかにも預金残高を改ざんするケースもあり、最終的にローンの支払が苦しくなって破綻に追い込まれる危険があるため注意しましょう。
フラット35などに利用される
通常フラット35は自己の居住用、もしくは親族の居住用の物件購入時にのみ利用できる長期固定金利型の住宅ローンです。
しかし融資条件の緩和や金利の低さから一時的に住民票を移すなど自己居住物件に見せて悪用される虚偽申請が問題となりました。投資用不動産物件のローンを勧められ、契約したサラリーマンが自己破産に陥った事件なども有名だといえるでしょう。
虚偽申請が発覚した場合、銀行から不正行為だとみなされ、対象者にはローン残債の一括返済が求められることもあるので要注意です。
不動産投資のエビデンス改ざん詐欺で注意したい文言
不動産投資のエビデンス改ざん詐欺は、自分が認識していないところで発生する危険性もあるので、契約書にしっかりと目を通すなど、十分な注意が必要です。
以下では、不動産投資のエビデンス改ざんに関するセールストークを紹介します。
- 収入が低くても不動産投資できる
- 自己資金ゼロでフルローンが組める
- 節税になる
- 生命保険の代わりになる
- 家賃収入で不労所得を手にしませんか?
- 不動産は株式投資や暗号資産などと違ってローリスク運用なのでおすすめ
- 老後の年金対策の資産形成として投資用不動産を始めないか?
- 人気物件だから今買わないと後悔する
上記の文言を使用して、しつこく営業してくる不動産営業マンや、甘い話がきたら慎重に判断しましょう。
不動産投資におけるエビデンス改ざん詐欺の事例
不動産物件の購入時に騙されないために、エビデンス改ざん詐欺の実際の手口を把握しておきましょう。
以下では過去に起きた3つの事例を紹介します。不動産投資で騙されないためには、実際に起きた事件を参考にしながら学ぶ姿勢が大切です。
スルガ銀行「かぼちゃの馬車事件」
シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが破綻して発覚したのが、スルガ銀行の不正融資事件です。
スマートデイズとスルガ銀行が共同でセミナーを開催し、投資家を集めて融資申請の際に二重契約で契約書を偽造。買主である不動産オーナーの預金残高を改ざん・水増しした詐欺事件です。
オーナーに諸経費も含めたオーバーローンを組ませた後に、運営していたスマートデイズは一方的に家賃の減額、家賃支払いの停止などを実行。オーナーが銀行に対して返済不能状態に陥り、大きな社会問題となりました。
なお、このエビデンス改ざんですが、スルガ銀行ではシェアハウス以前のアパマン向け融資ですでに確立していたようです。いわゆる「スルガスキーム」と呼ばれる不正スキームの1要素として有名になっていたほどです。それにしても一連の不正融資を総称して「スルガスキーム」という呼称がついてしまうのは、よく考えると凄いことですよね。
TATERUでの預金残高の水増し事件
スルガ銀行のかぼちゃの馬車の件と同様に、TATERUと西京銀行で発生した顧客の預金残高改ざん・水増し事件です。
TATERUの前身であるインベスターズクラウドは西京銀行の株主となっており、TATERUはアパート販売だけでなく、西京銀行の利益配当の獲得まで企てていました。また西京銀行は、オーナーとのローン契約時に、完済までTATERUと管理委託契約を解除しないよう念書を締結。
TATERUの安定収入を獲得するために発生したエビデンス詐欺事件です。
住宅ローンで投資物件を購入したことが判明して一括返済
老後の年金問題などを心配したサラリーマンが、自称ファイナンシャルプランナーの不動産ブローカーと出会い、自己破産寸前まで追い込まれた事件です。
当事者は余剰資金がない状態でしたが、話を聞いた後に前向きに不動産投資を検討。ローン申請時に、投資用でなく居住用ローンで申請すると金利が安くなると言われ、一時的に住民票を移してブローカーの指示に従ってローン申請してしまいました。
物件引き渡し後に住民票を戻したら、金融機関のチェックが入り、住宅用ローンを投資用に利用していることが発覚。一括返済を強いられることになった詐欺事件です。
不動産投資のエビデンス改ざん詐欺に遭わないための対処法
不動産投資のエビデンス詐欺は巧妙化しており、しっかりと対策を取っている場合でも詐欺に遭う可能性があります。
実際に被害に遭ったときに備えて、対処法も事前に把握しておくと慌てずに対応できるので、ぜひ参考にしてください。
不動産業界で発生している詐欺の実態を知る
不動産物件を購入する際には、複数の不動産会社を訪ねたりネット検索をしたりすることで、頻発している詐欺事件を把握できる可能性があります。
特に不動産業界での詐欺は、二重売買契約と金融資産のエビデンスの改ざんなどが有名です。
エビデンス改ざんによる二重契約は、自己資金がなくても「購入資金」と「諸費用分」のローン契約を可能にします。さらにローンの審査に通りやすくするために金融資産、年収のエビデンスの改ざんなども行う手口があるため、詐欺に遭わないためにも情報収集を徹底しておきましょう。
不動産会社や投資について調べる
不動産投資に限らず、株などでも事前の勉強が欠かせません。こと不動産においては、高額商品でもあるため、詐欺に遭遇した際には大きな損失につながる可能性も高いといえるでしょう。
以下では、信頼できる不動産投資会社の見極めポイントや、投資内容に関してのチェックポイントなどを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
信頼できる不動産投資会社を見分けるポイント
- メリット・デメリットの両方を説明してくれる
- 丁寧な収支シミュレーションの提供がある
- 強引な勧誘や入金を急か
すさない業者 - 事前ヒアリングが徹底している
投資内容の確認ポイント
- 投資内容や契約書を入念に確認
- 取引相手の身元確認や、レントロール(賃借状況の一覧表)の内容、登記関係・融資関係の書類も確認する
- 売買する不動産屋付近の立地環境は実際現地を確認する
- 契約書類は必ず自分で、改ざん、二重契約が無いかチェックする
不動産投資のエビデンス改ざん詐欺に遭った際の相談先
不動産投資のエビデンス改ざん詐欺を巡ってトラブルに巻き込まれたときは、一人で悩まずにすぐ行政機関や弁護士に相談しましょう。
詐欺対応の専門家に相談することで、早急に問題が解決する可能性もあります。
以下が、不動産投資の詐欺に遭遇した際におすすめの相談先です。
- 弁護士
どの弁護士がよいか迷ったら、法務省管轄の「法テラス」に相談。
法的な問題を抱えた際の相談先として安心です。
- 宅地建物取引業保証協会
国土交通大臣指定の弁済業務保証金制度が利用できる一般社団法人です。
法的措置の行使はできませんが、状況によっては国交相への告発などが期待できます。
- 免許行政庁
無理に契約を迫る禁止行為をはたらいた際に、注意喚起や免許取り消しなどの対応が期待できます。
- 消費者庁(国民生活センター、消費生活センター)
安心できる相談先として有名なのが、消費生活センター(地方自治体が管理)や国民生活センター(国が管理)などの団体です。
万が一、エビデンス改ざん詐欺などに遭遇した際には、消費者ホットライン「188」に電話しましょう。
- 一般社団法人日本不動産仲裁機構
法務大臣より認証を受けた機構で、不動産トラブルを裁判を行わずに解決してくれます。
通称ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決制度)と呼ばれている団体です。
まとめ:不動産投資のエビデンス改ざん詐欺に遭遇したらすぐに相談!
不動産投資は負債を背負うリスクが高いので、詐欺に遭わないための情報収集や取引についての正しい知識を身につけることが大事です。そのうえで信頼できる不動産業者を見つけ、エビデンス改ざん詐欺などから身を守りましょう。
契約時においても、分からない状態のまま書類にサインしないように注意してください。
不動産投資の知識に不安がある場合は、コストはかかりますが、法テラスや弁護士などに依頼することも大切です。
ぜひ今回の内容を参考にしながら不動産投資に取り組み、エビデンス改ざん詐欺に遭った場合はすぐに弁護士や宅地建物取引業保証協会などに相談しましょう。
もちろん、自分からエビデンス偽造を持ちかけて、不正に融資(フルローンやオーバーローン)を引き出すというのはNGです。後々、その融資が問題のある融資であったと金融機関にばれてしまった場合、期限の利益を喪失して一括返済を求められるかもしれません。