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    ドラマ「クロサギ」に学ぶ―『闇バイト詐欺』

    詐欺師を騙す詐欺師。『クロサギ』。TBS系金曜ドラマ」枠で放送された。ドラマで描かれた様々な詐欺を題材にその手口を学んでみたい。第5回は、『闇バイト詐欺』である。
    ※いつもの通りネタバレ注意です。

    あなたも詐欺の加害者に

    『楽して稼げる』は、詐欺である。あなたのSNSにも、こんなメッセージが届いていないだろうか?『10万円プレゼントに当選しました!!』。これは、口座番号を集めている。その上で、振り込め詐欺に使う。つまり、10万円プレゼントのはずが、どんと、100万円が振り込まれるわけだ。その上で、手違いがあったから、90万円をおろしてくれと頼まれる。いつのまにか、10万円で詐欺の加害者にされる、とんだプレゼントなのだ。もっと、直接的なものもある。『日給3万、誰にもできる簡単なバイトです!!』。ズバリ、詐欺のサポート役の募集である。こうしたSNSは、大抵、若者が同好会感覚で運営している。

    闇バイト詐欺とは

    今回のシロサギは、5~6人の若者による詐欺同好会だ。彼らの手口はこうだ。ターゲットは、貧乏な大学生。彼らは、SNSで見つけた楽に稼げるバイトに群がる。バイトは至って簡単。指定された画像データを購入するだけだ。画像データ自体には価値がない。購入代金は、ショップを運営するシロサギに入る。シロサギは、これを元手に違法な高利貸しを行う。バイトには、購入代金に利子をつけて返金される。つまり、バイトは、画像データを買うだけで、稼げるのだ。もちろん、世の中、そんなうまい話は無い。バイトは単に、購入代金を失うだけだ。そして、シロサギは、足がつく前に、ショップをたたみ、ドロンである。

    この手口を整理してみよう。シロサギは、画像データをバイトに売っただけだ。表面上、違法性は無い。一方、本来、被害者であるはずの学生達は、違法な高利貸しに使われると知った上で、この闇バイトに手を出している。それが、心の傷として残る。彼らは、自業自得と自らを責め、両親や周囲にも相談できない日々が続く。

    被害者の会詐欺とは

    こうした状況を見かねた弁護士が、闇バイトの被害者の会を立ち上げる。弁護士は語る。『被害者の数や被害総額の大きさが、警察を動かす力になる。相談料は取らず、活動費の実費だけで、被害者を救いたい。』この弁護士、ちゃんと、日弁連にも登録されている。事務所もしっかり存在する。これなら大丈夫。被害者の誰もがそう信じて疑わない。しかし、正義の味方にみえたこの弁護士が、実はシロサギの一味なのだ。高額な活動費をせしめて、これまたドロンである。手口は簡単。休職中の弁護士になりすまし、空き事務所を勝手に拝借しただけだ。シロサギは、ターゲットの心の内を見透かし、それを詐欺に利用する。  さらに、本来、被害者であるはずの学生達に、世間は冷たい。闇バイトに手を染めとして、大学は、彼らに停学処分を下す。法が擁護するのは、法を守る善良な市民だけなのだ。闇バイトに手を出すような学生は、逆に制裁を受けてしまう。

    ワンルームマンション投資詐欺とは

    シロサギは、さらに大きな詐欺を始める。ワンルームマンション投資詐欺である。不動産仲介業者になりすまし、マンション投資を持ちかけ、手付金を騙し取るのだ。ターゲットは、裕福なサラリーマンだ。彼らは、慢性的に未来への不安を抱えてる。例え、現在は、収入が安定していたとしても、一瞬先は闇である。給料の他にも、安定的な収入が欲しい。それも、不労所得がいい。シロサギは、そんな彼らに、こう誘いかける。『2500万円のマンションを購入して、人に貸せば、家賃収入が月10万円入りますよ。表面金利はなんと4.8%です。銀行に預けるよりも何倍もお得ですよ。さらに、節税効果もあり、かつ年金の代わりにもなります。ローンは家賃収入と相殺するので、実際の手だしはありません。暫く、人に賃貸させている間に、マンションが手に入っていますよ。』こんな、メリットだらけの営業トークで買う気にさせ、手付金を払わせる。後は、ドロンだ。

    クロサギの手口

    クロサギは、そんなシロサギに、さらに、1ランク上の獲物をちらつかせる。一棟丸ごとのマンションである。場所は鎌倉。築年数20年だが、外観はきれいで、投資にはうってつけの一品だ。売却すれば、2億は下らない。クロサギは、これを5000万円で売る予定とこぼす。シロサギがすぐに乗っかる。『それ、安すぎますよ。うちなら、7000万円で買います。』登記簿も問題ない。即決だ。シロサギは、超お得に購入したつもりだ。だが、実はこの時点で、7000万円を騙しとられている。実は、廃墟同様の劣悪物件。登記簿は、フィクサーが用意した一級の偽資料。同好会クラスのシロサギを騙すには、こんな仕掛けで十分なのだ。

    そうとは気づかぬシロサギは、高級ホテルで、大々的にイベントを開く。お得意様だけにお届けする目玉物件として、売りに出す。参加者多数の大盛況だ。そこに、クロサギから一本の電話が入る。『すいませーん。あの物件、実は廃墟同然でしたぁ。』だが、イベントは始まっている。シロサギは、プレゼンを強行する。そこに、クロサギが登場だ。大ビジョンに廃墟同然のマンションを映し、悪事をバラす。ステージ上で固まったシロサギに、クロサギが囁く。『ご馳走様でした』。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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