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    ドラマ「クロサギ」に学ぶ―『知的財産詐欺』

    詐欺師を騙す詐欺師。『クロサギ』。TBS系金曜ドラマ」枠で放送された。ドラマで描かれた様々な詐欺を題材にその手口を学んでみたい。第3回は、『知的財産詐欺』である。
    ※一部ネタバレになりますので、ご注意ください。

    権利と詐欺

    権利とは、一般に、『一定の利益を主張または享受する事をにより認められた地位』などと説明される。分かり易く言えば、『実体はないが、価値があるもの』それが、権利である。権利のひとつに、知的財産権がある。アイデアや創作物の独占権を認める権利だ。人に使わせて、ライセンス料を取ることもできる。また、権利が侵害された場合、賠償が巨額になることもある。実際にアメリカの特許権の侵害訴訟では、2,000億円を超える賠償命令が出されている。しかも、権利は、紙一枚の権利証などとして取り扱われる。かつ、その価値は、分かる人にしか、分らない。シロサギにとって、まさに打ち出の小づちのようなもの、それが権利である。

    知的財産詐欺とは

    今回のシロサギは、知的財産権を扱う会社を立ち上げている。表向きは、特許権を活用した、新たなビジネスモデルを売りにしている。価値のある特許を買取り、その権利を侵害している会社を訴えることで、多額の和解金又は、賠償金を勝ち取るのだ。さらに、特許の買取りに掛かる資金は、一般から募集する。1口200万円だ。投資家が100人集まれば、2億円の特許が買える。アメリカで訴訟を起こせば、10億円の和解金も見込める。投資家からみれば、一口200万円が、1,000万円に化ける美味しい話である。しかし、実質はただの詐欺企業である。カネだけをかき集め、何もせず、時期が来たら、計画倒産させて、集めたカネを持ち逃げする腹積もりだ。

    クロサギは、音楽の版権のコンサルをお願いしたいと近づくが、シロサギが雇った顧問弁護士にあえなく、阻止されてしまう。実は、この顧問弁護士、腐った大企業を喰うシロサギである。以後、彼のことをアニキと呼ぼう。アニキの狙いは、上海にあるドリームという会社だ。アニキにとって、今回の知財企業は、ドリームに入り込むための、踏み台でしかない。

    フィクサーの凄み

    ここからは、フィクサーの凄みを堪能して頂こう。フィクサーの仕事は、シロサギへの支援である。詐欺の設計や、詐欺の小道具などを扱う。中でも、特に重要なものが、マネーロンダリングである。詐欺で入手した違法なカネを、適法なカネへと変換する。まさに、シロサギ界の銀行というべき存在なのだ。そして、このマネーロンダリングのための会社が、ドリームである。つまり、アニキの動きは、フィクサーにとって、迷惑行為なのだ。上司と部下の関係なら、手を引けと直接命じるところだ。しかし、シロサギ界は違う。相手が気づくように仕向ける。フィクサーは、クロサギを放つことで、アニキに気づかせたのだ。実際、頭が切れるアニキは、目の前にいる若者が、クロサギであると気づいた瞬間に、フィクサーの意図を見抜いた。さらに、自分が、クロサギのサポート役を任じられたことにも。

    フィクサーは、当初から、クロサギのサポート役を探していたと思われる。というのも、クロサギを飼い始めた時から、いつかは単独行動に走ることが自明だった。だが、まだまだ未熟なクロサギでは、独り立ちは難しい。そこで、フィクサーに変わって、クロサギをサポートする人間が必要だったのだ。

    そこに、アニキの登場だ。1人で企業を喰える実力をもったアニキは、まさに理想的な人材だ。その上、フィクサーに逆らわない。信頼できる男なのだ。

    フィクサーの仕込みは、実に丹念だ。まず、ニューヨーク帰りのアニキにクロサギについて詳しく語る。一方、クロサギにはアニキの土産であるチョコレートを渡し、アニキとの会話の内容を伝える。もっとも、未熟なクロサギは軽く聞き流してしまったが。さらに、クロサギが、アニキとフィクサーに繋がりに気づくと、『アニキは、シロサギに騙され、家族を失い、シロサギを憎んでいる人』と、クロサギと似た境遇話を吹き込む。こうして、フィクサーは、お互いに顔を知らない、アニキとクロサギが、喰いあわず、自然と協力しあうように、いざなったのだ。

    クロサギの手口

    さて、今回のシロサギの話に戻ろう。彼には、弱みがあった。つぶすつもりの会社に、愛着が湧き始めていた。まともなビジネスで堂々と日の当たる道を歩みたくなったのだ。

    そこを、アニキが突く。『詐欺はやめて、本来の知財管理のビジネスをやりませんか?』シロサギが揺らぐ。そこに、クロサギが、価値ある音楽版権を差し出す。今にも飛びつきそうなシロサギをアニキが止める。『コンサルじゃなく、会社ごと買い取らせてくれ。そのほうが儲かる。』クロサギが返す。『それなら、いっそ、東南アジアの休眠会社もまとめて買い取って。』ついに、シロサギが判を押す。『2億3000万円お支払いします。』…お気づきだろうか、アニキとクロサギのパスが決まる度に、金額が跳ねあがっていくことに。もちろん、クロサギが用意した会社は偽物、音楽の版権は本物だが、あと1か月でライセンスが切れる。哀れなシロサギは、アニキとクロサギのタッグに蹂躙され、一文無しへとなり下がった。

    ミキモトへの切符

    最後に、アニキはクロサギに、ミキモトへの切符を渡す。ミキモトは、クロサギの家族を破壊したシロサギである。だが、ちょっと待ってほしい。フィクサーを恐れるアニキが、このようなリスクを侵すだろうか?ミキモトへの切符をアニキに渡したのは、誰だ?

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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