2025年5月13日「スルガ銀行株式会社は、2018 年以前に融資したシェアハウス以外の投資用不動産向け融資における不正行為等(以下、アパマン問題といいます。)に関し、全ての債務者の個別解決に至っておらず、解決に向けた取組みが長期化している理由及び期限等を示した上で今後、早期解決を図っていくための具体的な改善策について、本日、金融庁より銀行法第 24 条第 1 項に基づく報告徴求を受領しました。」と異例のプレスリリースを発表しました。
背景としてはスルガ銀行不正融資被害者たちの根強い抗議活動が国会議員に何度も取り上げられ、議員からの照会で対応状況を報告する必要があることが考えられます。

1200名弱の社員のうち、直接不正に関与したといわれるのは75名にも及びます。取り扱う案件のうち20%にもおよぶ案件に不正があり、現在も768件もの係争を抱えていると考えると、その異常具合はかなり突出しているといえるでしょう。
あらためて文章にすると、その異常な事態が明らかになるわけですが、スルガ銀行は現在進行形で、800件弱の係争を抱えています。そのすべてでスルガ銀行は負けていないわけですが、なぜなら裁判で不利になると和解し、負けることを回避するからです。和解時にどのような条件で取り決めがされるかは守秘義務契約もあり謎のベールに包まれています。
2022年から見ると、900件以上あった係争が800件弱に「処理できた」ということなのでしょうがこのペースでいくと2030年ごろまでかかりそうです。この組織的交渉先というのは、SI被害者同盟をはじめとする被害者団体のことを指します。個人として個別に戦っている人たちや小規模な被害者団体を各個撃破しながら順調に交渉は進捗しているとしているスルガ銀行の様子は大企業の資本や優秀な企業弁護士団による個人被害者との有利な戦いに見えます。
スルガ銀行は着実に交渉を進展させていると主張しています。
毎日家庭や職場で働き、父や母として家庭を支える責任世代も被害者には相当数いる様子です。問題発覚から6年半、銀行という大企業と法的に争う緊張感は想像したくないほどの重荷でしょう。
2025年株主提案の特徴的変化
SI被害者同盟はスルガ銀行の不正融資被害者団体としては最大規模の団体です。これまでも取り上げてきたように、スルガ銀行や金融庁の前でデモを行うなど、スルガ銀行と法廷以外でも戦ってるモノ言う被害者組織ですが、スルガ銀行の株式を被害者が購入し、株主提案を行うという戦い方を展開しています。
6月にはスルガ銀行とその株主クレディセゾンの株主総会を控えていますが、株主総会を見据えて、株主提案を提出していると発表しました。
従来提案との主要な違い
例年の株主提案では、被害者の恨みの声が込められた提案が目立ち、問題を風化させないこと、対話を設けない経営層に執念を届けることが目的のように感じられましたが、2025年の株主提案は雰囲気を大きく変えています。数が多い提案ではなく、理知的で被害者の思いというよりも経営の健全化を求める納得感のある論調になっていました。
- 2024年まで: 「不正融資の早期解決」「情報開示の透明化」など抽象的な要求が中心
- 2025年: 「不正融資利益の全額放棄と弁済充当」「第三者ガバナンス委員会設置」など具体的制度設計を提示
2. 定款変更による制度化への転換
- 従来: 要望・勧告レベルの提案
- 2025年: 定款条項として明文化し、法的拘束力を持たせる戦略
- より踏み込んだ透明性要求
- 具体例: 融資審査資料の隠蔽禁止、証言義務の定款明記
- 背景: 預金通帳確認証跡の白塗り隠蔽や証人尋問での不適切発言への対応
先進技術活用の提案追加
- 新要素: 生成AI活用による客観的分析・意思決定プロセスの導入
- 狙い: 人的バイアスや保身の排除、データ駆動型解決策の実現
2025年の株主提案は、金融庁報告徴求を契機とした規制当局の強い圧力、6年7ヶ月に及ぶ業務改善命令の長期化、司法手続きの膠着状態という三重の危機を背景に、従来の要望型から制度化型へと質的転換を遂げたようにみえます。特に定款変更による法的拘束力の確保と生成AI活用という先進的アプローチは、企業不祥事対応の新たなモデルケースとなる可能性を秘めているといえるでしょう。
ただし、その実現には株主構成の変化、経営陣の姿勢転換、監督当局の継続的圧力が不可欠です。スルガ銀行の業績は回復基調、クレディセゾンとの連携により、再び個人向け不動産投資による売り上げ拡大が視野に入っているスルガ銀行。問題を長期化させ被害者個人を各個撃破する方向で解決を図ってきたスルガ銀行に被害者と金融庁が付きつけた形となった業務改善の報告要求。双方にとって問題の最終的解決に向けた正念場を迎えていると言えるかもしれません。