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    ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『迷惑オーナー』

    『正直不動産』は、2022年春に、NHK『ドラマ10』枠で放送された、不動産業界の裏側をコミカルに描いた作品である。ドラマを題材に不動産取引で気を付けるべきことを学んでいこう。第2回は、『迷惑オーナー』である。

    敷金、礼金

    部屋を借りる時、最初に必要になるのが、敷金、礼金である。家賃の2~3ヶ月分が相場である。敷金とは、原状回復費の担保である。従って、原状回復にそれほど費用を要さなければ、一部返金されることがある。これに対し、礼金はオーナーへの謝礼的な意味合いが強く、返金されない。この敷金、礼金が発生する新規入居は、オーナーにとって、ある意味、ボーナスだとも言える。今回は、不法な手段を使って、ボーナスを毎月せしめようとした迷惑オーナーの話である。

    新人月下の営業

    永瀬は社長から、新人、月下の教育に専念するよう指示された。月下のモットーは、カスタマーファーストである。会社の利益よりも、顧客の利益を優先する。そんな月下の営業スタイルは、フレンドリーだ。顧客は、新社会人、柿沢。今日は1人で上京し、賃貸物件を探している。月下は、いきなりぶっちゃける。『私も同じ新社会人ですけど、1浪、1留で、少し年上なんですよ。』『月下さん、正直過ぎ。』つかみは、OKだ。柿沢は言う。『父が心配症で、女性の一人暮らしにあまり乗り気じゃなくて。』『では、お父様も安心出来て、柿沢さんも満足できる素敵な物件、お探ししますね。』すぐに、良さげな物件が見つかった。都内の4階建てのマンションだ。防犯は完璧。立地条件、部屋の広さも十分だ。相場なら、軽く10万円を超えるであろうが、なんと破格の7万円。若い女性に大人気である。40代後半位の男性オーナーが出迎える。実に、柔和な表情だ。いきなりの好物件に、二人の会話は弾む。『決めた。私ここに住みます。』あっという間に商談成立だ。皆に笑顔が広がる。ただ1人、永瀬を除いては。彼は見逃さなかった。備え付けのカーテンが、妙に古びていることを。

    オネスティ永瀬の登場

    契約の日、保証人である父親も同席する。『こんないい物件見つけて頂いて。』娘想いの父親も、顔が崩れっぱなしだ。いよいよ、契約書に判を押そうとした、その時、『俺なら、こんなクソオーナーの物件、カネ貰ったって、住まないけどな。』オネスティ永瀬の登場である。和やかだった場の雰囲気が一変する。『相場より安いのには、理由があるんですよ。多くの部屋が、3ヶ月~4ヶ月で退去されています。オーナーが追い出してるですよ。格安の家賃で若い女性ばかりを入居させ、ストーカーを装い、いやがらせをして。そして、敷金、礼金を全部せしめるんです。柿沢さん。部屋にあったカーテンや玄関マット、どうするつもりでした?』『かなり古かったので、すぐに処分して、買い替えるつもりでした。』『ですよね。契約書読みました?しつこい位に、書いてありますよ。備品を含めて、原状回復できなかったら、敷金は一切返金しないと。』これに父がキレる。『あんた、それを分っていて、うちの娘を入居させようとしたのか。バカにすんな。』さっと席を立つ。『一生懸命探してくれたの。全部、嘘だったんだ。もう二度と来ないから。』娘も怒りが止まらない。こうして、月下の初の商談は、失敗に終わった。登坂社長が永瀬に言い渡す。『この世界は契約が全てだ。契約を守れないやつは要らない。出ていきなさい。』永瀬、解雇の危機だ。

    オーナーとの対決

    登坂不動産に怒声が響く。あの温厚そうなオーナーが、鬼の表情だ。『俺が、ストーカーを装っているだの、無言電話をかけているだの、あることないこと言いやがって。名誉棄損じゃすまないぞ。こっちはな。出るとこ出てもいいだぞ。嫌なら、今すぐ、土下座しろ。』あまりの剣幕に、事務所内が凍り付く。立ちすくむ永瀬に、『おい、永瀬、今すぐ土下座しろ。』と、部長命令が飛ぶ。永瀬は、ゆっくり、床に両手をついた。そして、『この度は、誠に申し訳け…。』と言いかけた時だった。いきなり、オネスティ永瀬が立ち上がる。『土下座なんかするわけないでしょ。あんたみたいなクソオーナーに。こっちは、あんたに追い出された借り手に会って、証言とってきましたよ。みんな、口を揃えて言っていました。恐くて、泣き寝入りするしかなかったと。中には、盗撮用のカメラまで仕掛けたそうですね。あんたみたいな最低最悪のオーナーに、大切なお客様を紹介するわけにはいきません。』ここまで、証拠を握られては、オーナーも戦意喪失だ。『くっそぉ。』と言い残し、慌てて、逃げ帰った。

    意外な結末

    社長の前で、大立ち回りを繰り広げ、さすがに永瀬も首を覚悟する。1人、屋上で、次の職探しを考えはじめる。そこに、月下が現れた。柿沢親子と会ってきたのだ。月下は伝える。親子に感謝されたと。謝罪の場は、喫茶店。詫びる月下を、娘が遮る。『いえ、あの後、父と話したんです。永瀬さんが、本当のことを言ってくれなかったら、何も知らないまま契約していました。』父も続ける。『言い方は無礼だったけど、永瀬さんが、全部、正直に話してくれたから、娘は助かった。あなた方なら、信頼できる。また、娘の部屋探しをお願いできませんか。』オネスティ永瀬の正直営業が、感謝を生んだのだ。月下も感動だ。『永瀬先輩みたいな正直な人、私、初めてみました。』

    この意外な結末に、一度は解雇を決めた登坂社長も、『じゃあ、もう少し、置いておくか。』と、保留した。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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