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    ドラマ「クロサギ」に学ぶ―『出会わせ屋詐欺』

    詐欺師を騙す詐欺師。『クロサギ』。TBS系金曜ドラマ」枠で放送された。ドラマで描かれた様々な詐欺を題材にその手口を学んでみたい。第2回は、『出会わせ屋詐欺』である。
    ※一部ネタバレになりますので、ご注意ください。

    契約と詐欺  

    『契約自由の原則』は、民法の大原則だ。公序良俗に反しない限り、どんな契約でも、お互いの合意のみで成立する。そこに、国家権力の介入はない。つまり、自分の身は自分で守らねばならないわけだ。その為に、契約書をしっかり読む必要がある。それは同時に、詐欺への備えにもなっている。ドラマに登場するシロサギ達は、一見、普通のビジネスパーソンである。彼らは、ごく普通にターゲットと、契約を交わす。契約に罠を仕掛けて。今回は、契約に関するシロサギの手口を見ていこう。

    送り付け詐欺とは

    送り付け詐欺とは、頼んでもいない物を勝手に送り付け、代金を請求する詐欺である。ネガティブオプションとも呼ばれる。でも、安心してほしい。令和3年に特定商取引法が改正され、頼んでもいない商品が届いたら、直ちに処分できるようになった。だが、シロサギは狡猾である。巧みに法の目をかいくぐる。ターゲットは、独居老人。彼らは、孤独に飽きている。そこに、電話でアタックする。久しぶりの会話に、思わず心を許す。言われるままに、安価な弁当コースをポチッと押す。そして、弁当とともに健康食品が届けられるのだ。高額な請求書と共に。クレームすれど、『おめでとうございます。健康食品を申し込む権利が当たりました』とそっけない。『権利が当たった場合は購入する旨、了承したと、チェックを入れて頂いています。支払って頂けなければ、法的に対処させて貰います。』と逆に脅されてしまう。確かに、契約書には、健康食品に関する記載がある。さらに、半年以内の退会は別途違約金として10万円が必要とも。実質は送り付け詐欺であるが、巧みにカムフラージュされている。法による解決は難しいのだ。孤独に付け込まれたターゲットは、自分がみじめすぎ、周囲に相談することもない。そこで、クロサギの出番である。この難局を電話一本で鮮やかに解決する。『じいちゃんがおたくの弁当で食中毒を起こした、ネットに晒しますよ。』とお伝えするだけだ。シロサギは、面倒なターゲットを嫌う。すぐに諦め、別のターゲットを探す。クロサギは賠償金とともにターゲットの心も癒す。『顔も見たこともないやつに騙されたって、気にすることもないよ。俺は知ってるよ。毎日、アパートの周りを掃除してくれて、ありがとう』。

    出会わせ屋詐欺とは

    出会わせ屋詐欺とは書いたが、実は出会わせ屋自体は詐欺ではない。運命的な出会いを演出し、憧れの人との距離を縮めるちょっと特殊なサービスだ。契約自由の原則は、こうしたサービスも、容認する。では、何が詐欺か。今回のシロサギは、出会わせることなく、サービス料をふんだくるのである。手口はこうだ。ターゲットはアイドルの推し活に励む若者。彼らは、アイドルに会って、感謝の気持ちを伝えたいと願っている。シロサギは、この純粋な気持ちに付け込み、200万円を払わせる。もちろん、目的のアイドルには、いつになっても、出会えない。諦めたターゲットは解約と返金を要求することになる。ターゲットが訴える。『失敗したときは全額返金って書いてありますよね』。シロサギは答える。『まだ、工作の途中ですよ。中断するなら、違約金も頂きます』。実にあくどい。通常、この手の契約には期限を設定する。が、この契約書には期限がない。従って、工作の失敗を判断する根拠がないのだ。これなら、返金は発生しない。つまり、契約に関する知識不足に付け込んだ詐欺なのだ。クロサギは、こんなシロサギを、契約で喰ってしまう。クロサギの手口はこうだ。まずシロサギに大手プロダクションの幹部を紹介すると持ちかける。シロサギは、契約書を丹念にチェックし、手付金200万円を払う。契約書には、契約解消の場合、手付金の倍額をクロサギが払うと書いてある。シロサギに損はない。そして、幹部と出会うことはなく、シロサギが契約解消と、倍額の支払いを要求する。しかしである。手付金の倍額を払うのは、クロサギ側からの契約解消の申し出があった場合のみだ。これも契約書にちゃんと書かれている。シロサギは、契約書を正しく読めていなかったのだ。こうして、200万円は、無事にターゲットの手に戻った。

    クレジットカード不正利用詐欺とは

    クレジットカードは便利である。ネットとの相性もいい。カード番号を登録すれば、家に居ながら買い物ができる。そして、シロサギもこの利便性を享受する。偽のHPに誘いこみ、カード番号のみならず暗証番号まで盗み取ることが可能だ。そして、盗んだ情報で買い物を楽しむ。その上、被害届も出にくい。なぜなら、被害者には、カード会社から、代金が補填される。実害がないから、被害者は被害届を出せない。では、カード会社が被害者か?いや、補填した分は、商品を売った店に代金を返してもらう。チャージバックである。やはり、カード会社からも被害届はでない。そして、そもそも、ネット上での犯人特定が難しい。

    シロサギの手口はこうだ。個人売買サイトに商品を投稿し、ターゲットのカードで購入する。代金はシロサギが使う他人名義の口座に入る。他人名義の口座は、バイトを使って調達したものだ。確かに、自身の口座は使っていないが、出会わせ屋ユーザが次々と被害に会う状況に警察が動く。そして、クロサギはこれを利用する。まずバイトを味方につける。『あんた捕まるよ。』と軽く脅すだけだ。そして、シロサギが使っていた他人名義の口座を凍結し、『警察が動いている』とシロサギを追い込む。さらに、『お金隠すならこちらへ。』と、新規の口座を差し出す。まんまと罠にハマったシロサギは、残金全てを、急いで入金し、ほっと息をつく。そこに、クロサギから一言。『ご馳走様でした』。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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