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    投資用不動産の営業マンが言う「節税」は本当?考えるための注意点とは?

    「不動産の投資は節税になる」と耳にしたことはありませんか?「条件にあった不動産」を購入すると、税金が減るので、生活や貯金に負担がない形で資産形成できるという儲け話です。営業マンのセールストークとしてもよく使われますが、「本当に節税になるの?リスクはないの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。この記事では失敗したケースを取り上げながら、節税の仕組みと注意点を考えていきます。

    不動産を節税に使おうと思って失敗した3つのケース

    結論からいうと、不動産投資によって節税ができる人もいますが、業者のプランを盲目的に信じると思わぬリスクが待ち構えている場合もあります。ここでは失敗してしてしまった3つのケースを紹介しながら注意事項を確認してきましょう。

    CASE1:高値掴み?減価償却期間を過ぎ売却を検討したが狙った金額で売れない!

    木造の中古アパートを節税目的のために購入したAさん。不動産業者は「いまは空室もあるけれど、赤字がでても節税できるからむしろ得をする」といわれて購入に踏み切ります。資金は銀行からフルローンの借り入れに成功。「減価償却期間を過ぎたら物件を買い変えましょう」と言われていましたが、5000万で購入したアパートについた査定金額は3000万前後。売却予定が大幅に狂ってしまいました。

    解説:物件を買いやすい条件で購入できることになっても、売却がすんなりできるかどうかは未知数です。東京都心部でのタワーマンション投資が流行ったのは、タワーマンションが人気で価格が短期間で1.5倍から2倍にも上昇するケースもでたほどの過熱ぶりだった為ですが、売却時には不動産会社への手数料、登記変更費用、売買代金への税金もかかります。売却後に減価償却以上に儲かっているかの注意が必要です。

    CASE2:家賃保証会社から賃料引き下げ通知が来て計画が狂った!しかも家賃保証会社との契約が解約できない

    業者からマンション投資を勧められたBさん。新築物件だと表面利回りが6%台の提案が多くあまり魅力を感じていませんでしたが、中古マンションで利回りが10%台の提案をしてくれる業者さんがいたので決めました。家賃保証のサービスもついているということで空室リスクはないと説明を受けていたのですが、もうすぐ2年経つというタイミングで、賃料改定の通知がきてしまいました。いきなり家賃を30%も下げるという内容に話が違うと電話したのですが、不動産業者はとりあってくれず、家賃保証の会社にもまるでクレーマーを扱うように対応されてしまいました。あまり説明を受けた記憶はないのですが、契約書にも資料にも確かに小さな字で周辺相場をみて家賃改定する場合がある旨、記載がありました。

    ただどうしても納得がいかないので、自分で管理したいと考えたBさんは解約を申し出るのですが、解約には応じない旨、家賃保証会社から回答がきました。まるで詐欺のようだ、と感じたBさんは弁護士に相談したのですが、法的に対抗手段を取らないと解約できない場合が多いことを説明されお金と期間がかかってしまうことが判りました。

    解説:家賃保証会社との契約をよく見ましょう。家賃を保証する契約ではなく、転貸を前提として自分たちが借り上げるという一括借り上げ契約になっているはずです。定期借家契約でない場合、契約解除も難しく法律の専門家に依頼しても解決に時間がかかります。新築物件であれば、家賃保証をつけなくても客付けができる場合が多いです。

    CASE3:減価償却はできるけれど、中古物件で予想外の出費が続いて貸し出せなかった。

    不動産の減価償却が節税になると聞いて、自分で中古の木造一戸建てを探し、購入したCさん。しばらく人が住んでいなかった築40年以上の物件だったので、清掃してから賃貸向けに貸し出そうとしたのですが、いざ不動産会社と一緒に確認すると、給湯設備が故障していたり、床が傾いていたり、雨漏りが始まっていたりと、貸し出せる状態ではないといわれてしまいました。見積もりを取ると数百万円という金額が出てきてすぐには用意できません。購入してからも賃貸に出せず、放置が続いてしまいました。減価償却はできるのですが、収益化がむずかしい負の不動産を購入してしまった気分になってしまいました。

    解説:「中古の改修負け」とよばれるように、中古物件は思わぬ出費が出てしまうこともあります。ぎりぎりの予算で物件を購入する場合は、建築士などと一緒に物件を確認することでリスクの範囲を明確にできます。一人で物件を購入する場合は、改修にかかる費用や期間を見込むようにしましょう。

    投資用不動産で節税する仕組みとチェックポイント

    先ほどは失敗の例を3つ紹介しましたが、あらためて不動産で節税する仕組みに関してご説明します。具体的には(1)購入した不動産にかかる経費で課税対象額を下げる節税(2)所得税より不動産売却時の税率が安いことを利用した節税の2つがあげられます。

    購入した不動産にかかる経費で課税対象額を下げる節税

    銀行などからローンで不動産を購入し、発生した経費や減価償却を費用計上することで所得額を圧縮させ、住民税・所得税を抑える作戦が1の「購入した不動産にかかる経費で課税対象額を下げる節税」です。

    ここで大きな費目は「減価償却」です。不動産物件(建物)は、耐用年数の範囲で、資産の価値が減っていきます。税金の分野では減価償却という言葉で表現しますが、実際は支払いが発生しないのに経費として計算できるため、現金が減らない経費として課税対象所得から削減できます。(土地は劣化しないので、減価償却されません。)

    減価償却の考え方と計算例

    先ほど減価償却に関してふれましたが、不動産の耐用年数に応じて年間の減価償却額を計算する必要があります。

    例えばマンションの法定耐用年数は47年です。ですから新築で4700万のマンションのを購入すると減価償却は年間100万円計上できるというわけです。(本当は土地の値段が入ると思いますので、実際の減価償却費は100万円以下になります)

    築50年の場合、耐用年数を超えてしまいますがその場合は、法定耐用年数の20%で計算します。なので9年と計算します。900万で購入した場合は年100万ですね。

    いまはあえて減価償却が100万円になる別々のケースを3つ考えましたが、年間100万円の減価償却を実現できれば、100万円分、課税額を減らすことができるので、例えば900万円の課税対象額を100万円減らし、800万円にすることができます。すると100万円*33%=33万円の税金を削減できたことになるでしょう。4700万円のマンションを47年保有して節税できる金額は47年×33万=1551万円になります。売却しなくても47年間で1551万円余分に貯金や投資を行う原資を積み立てられると考えると大きな効果ですね。
    (上記の税率33%は課税所得金額が900万円-1800万円未満の場合となります)

    現金で物件を買うと経済的に負担が大きいですが、担保として価値がある不動産購入には、銀行のローンを活用することができます。「あなたの会社員としての実績をもとに、銀行融資で投資用不動産を購入すると節税の効果を手出しを最小限に抑えて発揮できる上に、将来のための資産形成を図ることができるんです!」と不動産業者は提案してくるわけです。

    考慮すべき点:高額な借金をして不動産を買うということ

    ここで考慮するべきは「節税のために、不動産の収入を当てにした借金をしている」という点です。不動産自体、数百万円から数千万円、時には数億円する高額な買い物です。その不動産を自分で使うのではなく貸し出すためにローンで買うのですが、不動産には空室や家賃下落のリスクがあります。空き家になったり賃料がさがれば逆に生活が圧迫されます。

    投資用不動産を勧めてくる人はこの点を「家賃保証というサービスをしている会社があるから、空室リスクがなくなるんです。もちろん手数料は発生しますが、これで心配はなくなりますよね」と笑顔で提案してくれるでしょう。

    しかし家賃保証会社もビジネスです。家賃保証するために、自社がその物件を借り上げ、不動産会社に営業して入居付けします。自社が貸せなくなってくれば当然家賃保証できる水準を切り下げてきます。その時大家さんが自分で客付けしようとしても転貸の契約をはがすことが難しいというのが先ほどお伝えした通りです。

    身の丈にあったリスクに制限しないと、不動産物件の収支が悪化した際に生活も悪化します。本当に安心できるのか、この不動産物件を人に貸し出せるのか、人に売れるのか、将来どうなる可能性があるのかを提案してくれた不動産業者以外にも相談しましょう。具体的にはその不動産に入居する人がいくであろう町の不動産屋さんや、SUUMOなどのポータルサイトで相場を確認しましょう。そこでつかんだ相場感覚をもとに自分でも判断しないと、だれも責任を取ってくれません。その節税を行うために大きなリスクも背負っていることを忘れてはいけません。

    所得税より不動産売却時の税率が安いことを利用した節税

    「総合課税で課税される住民税・所得税の税率と分離課税で課税される譲渡税率の差の大きさを利用して納税額を減らす」ことを目指す節税が「所得税より不動産売却時の税率が安いことを利用した節税」です。減価償却期間中の住民税・所得税と譲渡税率の差が大きくなるにつれて、節税できる金額も大きくなるのですが、逆に言うと年収がある一定以上でないと効果が実感しにくい打ち手です。目安は課税所得が900万円以上と言われています。

    課税される所得金額税率控除額
    195万円以下5%0円
    195万円以上〜330万円以下10%97,500円
    330万円以上〜695万円以下20%427,500円
    695万円以上〜900万円以下23%636,000円
    900万円以上〜1,800万円以下33%1,536,000円
    1,800万円以上〜4,000万円以下40%2,796,000円
    4,000万円超45%4,796,000円

    不動産の売却益は5年以上の長期間保有した際の税率が約20%となります。また、売却益は分離課税ですので、売却で大きく利益が出ても約20%の税率ということになります。それに比べて毎年の事業収支は総合課税でサラリーマンの給与と合算されます。ここで、減価償却や借入金利子、必要経費を計上することでサラリーマン給与と赤字を通算することができます。すると、サラリーマン給与が900万円以上ある場合は、税率33%で計算できるわけです。減価償却費を多く取ると、結局売却益になって帰ってくることになるのですが、このように税率の差分をうまく使うことでより節税ができる、ということになります。

    一時はやったタワーマンション投資は、そもそも日本のタワーマンションが海外からの投資家により買われたこともあって、高騰し物件価格が高止まりしていた点と、自宅の売却時には3000万円分控除を付けられるという制度があったため、節税策として取りざたされました。物件価格が大きく上がった状態で売却する(あるいは相場より大きく下げた物件を仕入れて相場並みや相場以上で売却する)ということが判ります。

    日本の都市部の不動産市場は世界的に人気があるとはいえ、目利きが求められます。

    まとめ:身の丈にあったリスクにとどめて賢く節税しよう

    不動産投資での節税対策は、高額な不動産を購入することが必要です。「節税できる」と勧められたとしても、自分の身の丈に合っている投資かどうかを確認してから行う必要があります。「こうすれば安全です」という手を提案されたら、その有効性をきちんと検証しましょう。自分で判断できない場合は、第三者のプロを雇うこともできます。どうしてもわからない投資は行わないことも必要です。(投資の神ともよばれるウォーレン・バフェットはわからない株は買いません。わかるように情報を集めて納得すれば購入するようです)

    節税ができたとしても不動産投資にはリスクがあります。節税だけに捉われず、運営していける物件かをよく判断しましょう。不動産投資で節税するためには、税金の仕組みをしっかり理解することが大切なので、この記事を参考に適切な節税対策を行ってください。

    投資と詐欺編集部
    投資と詐欺編集部
    「投資と詐欺」編集部です。かつては一部の富裕層や専門家だけが行う特別な活動だった投資ですが、今では一般の消費者にも未来の自分の生活を守るためにチャレンジしなくてはいけない必須科目になりました。「投資は自己責任」とよく言われるのですが、人を騙す詐欺事件は後を絶ちません。消費者が身を守りながら将来の生活に備えるための情報発信を行なっていきます。

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