Home その他 ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『カタカナ英語』

ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『カタカナ英語』

ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『カタカナ英語』

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『正直不動産』は、2022年春に、NHK『ドラマ10』枠で放送された、不動産業界の裏側をコミカルに描いた作品である。ドラマを題材に不動産取引で気を付けるべきことを学んでいこう。第17回は、『カタカナ英語』である。

カタカナ英語とは

住まいとしての不動産は、間取り、交通の便、耐震性など、誰にでも分かる言葉で語られる。従って、初心者にも分かりやすい。しかし、同じ不動産でも、投資物件として見る時、分かり難い専門用語で語り始める。こうした、専門用語の多くは、カタカナ英語という特徴があり、その意味を正しく理解していない人は、簡単に騙され高い買い物をすることになる。

専門用語は意味不明

銀行員、榎本は不満だ。昨日の合コンが最低だったのだ。『うちの会社、コアコンピタンスが、コモディティ化されて、今のデファクトスタンダードな時代に、オポチュニティーマネジメントをオルタナティブな形でやってるんです。って、何語だっつうの。』専門家は、カタカナ英語が好きだ。確かに、専門知識を正確に伝える時に役立つ。一方で、部外者には、全く意味が通じないという欠点を持つ。だが、本人が意味を理解して使っている分には、まだ良い。今回は、無理解なまま、カタカナ英語を振り回す、小室が永瀬のもとに、不動産投資の相談に来た。

小室の相談

小室は、とにかくファンキーだ。『不動産買うならジャストナウ。不労所得で、早期に仕事をアーリーリタイヤ。それが僕のドリームさ。』永瀬も合わせる。『不動産投資と申しましても、人に貸して収入を得るインカムゲインと、高値で売却して利益を得るキャピタルゲインがありますが、どちらをご希望でしょうか?』小室は、カタカナ英語を知らずに使っている。永瀬が投じた基礎英語にもついていけない。手元の分厚いカリスマ投資家の本で、その意味を調べる。『えっとね。賃貸だから、インカムのほうで。』永瀬は、早くも小室の実力を見抜いた。『投資資金は5000万円とありますが、手元資金は300万円ですね。キャッシュフローなどは、どのようにお考えですか?』不勉強な小室は付いてこれない。『そんな、スモールなことはどうでもいいんだよ。今すぐ、利回り10%になるサプライズな物件を今すぐカモン。』これには、オネスティ永瀬が対応する。『そのような物件がございましたら、あんたなんかに教えず、私が即買い致します。不動産投資は初心者でも始めることが可能です。でも、成功するためには、しっかりした計画が必要です。この本から察するに自称不動産帝王のインチキセミナーにでも行って、コロッと騙されたんではありませんか。あなたの言葉を借りるなら、まさにベリーベリースイート。飛んでファイアにインするサマーの虫。』これには、小室もうろたえる。『出たな。ドリームキラーめ。セミナーの講師が言ってたぞ。夢を語ると、無理だ、出来るわけないと人の心を折ろうとする輩が現れるって。』永瀬、またしても商談をぶち壊した。部長が間に入り、なんとか、その場を取り繕う。ともあれ、利率10%の物件なんか、詐欺以外にはお目に掛からないであろう。

数時間後、小室から電話が入る。『トゥ レイト。遅いよ永瀬さん。タイム イズ マネー。もう、お宝物件見つけちゃったよ。』永瀬が驚く。『ちなみに、どこの物件ですか?』 『リバーサイド神田川さ。予算オーバーだけど、ビッグチャンスさ。』永瀬が驚く。『それ、うちが仲介管理している物件です。』そして、マダム物件でもある。

最後のお願い

永瀬、何とか、登坂不動産にもチャンスをと、マダムの元を訪れる。この物件を売ったのは、ミネルヴァ社長であった。『彼は、言ったわ。自分と取引きして、後悔しないですかって。でもね、私、チャンスが来たら、いつでも手を伸ばすことにしているのよ。』永瀬が異議を唱えるも、マダムは動じない。『嘘だろうが、偽りだろうが、私は自分の気持ちに正直で生きたいの。』永瀬は引き下がらない。『本気で売りますんで、もう一度、登坂不動産に仲介させて下さい。』マダムが承諾する。『いいわよ。』但し、条件付きだ。『相場が5000万円のところ、5400万円で売る予定だけど、おたくにそれ以上出せる?そもそも、リバーサイド神田川、おたくに任せてたけど、ずっと眠らせたままだったじゃない。それを、ミネルヴァ不動産は何とかするって言ってくれたのよ。永瀬君。何かを手に入れたかったら、それなりの覚悟が必要よ。何の犠牲もなく、何かを獲得できるほど、人生は甘くないわ。』永瀬、マダムの覚悟に、完敗である。

マダムの祝杯

その夜、マダムはミネルヴァ社長とバーに居た。マダムが問う。『珍しいわね。たった、5400万円の成約で、祝杯をあげたいなんて。』ミネルヴァ社長がクールに答える。『今日は命日なんですよ。私を育てた父親の。』登坂不動産を追い詰めるミネルヴァ社長も親への感謝は忘れないようだ。さらに、続ける。『殺しても死なないような男が逮捕され、あっさり獄中で死にました。』『それは、お気の毒に。』マダムが気遣う。『だからって、お父様の弔いのために登坂社長に憎しみを向けるのは、間違っているわ。あの人は、お父様が起した地面師事件で、警察に協力しただけよ。』ここで、ミネルヴァ社長の表情が一変する。『弔い?ハッ?』全身から恨みがほとばしる。『とんでもない。父親のことは、本当は俺がこの手で殺す予定だったんです。それを、登坂は横取りした。この代償は、きっちり、払って貰いますよ。俺は、登坂を抹殺します。どんな手段を使ってもね。』実は、ミネルヴァ社長は孤児であった。それを、養子として、育てた父親は、詐欺師のドンだったのだ。そして、その養父は、あろうことか、養子であるミネルヴァ社長に虐待を繰り返した。ミネルヴァ社長は、父親を恨み、自分の手で殺すつもりだったのだ。そして、その機会を、奪った登坂社長に私怨をぶつけていたわけだ。

この話を伝え聞いた永瀬、ミネルヴァ社長の歪んだ心に、恐怖を感じた。

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