Home 投資を学ぶ ヤマダNEOBANK積立預金事件とは?

ヤマダNEOBANK積立預金事件とは?

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ヤマダNEOBANKが提供する「ヤマダ積立預金」は、毎月一定額を積み立て、満期時に積立総額の5%相当のヤマダポイントが付与される自動積立預金サービスです。さらに、2025年1月31日までの申し込みで、初回の積立振替を2025年2月までに実行し、満期を迎えた場合、特典として追加で5%のポイントが付与され、合計で10%の還元が受けられるキャンペーンが実施されていました。

おそらく思惑買いの投資家の参入

このキャンペーンは、元本保証に加えて高い還元率を提供することから、SNSなどで大きな話題となりました。おそらくヤマダ電機としては、自社の顧客になりうるユーザー層の口座開設を期待していたでしょうし、金融サービスとの連携によりローンでの買い付けや、かねてより押し進めていた住宅事業とのシナジーを見込んでいたはずです。

ですが真っ先に飛びついたのは利に聡い投資家でした。投資家たちがSNSで情報を発信し「ペイオフの制限額ぎりぎりにあたる毎月83万円を1年間積み立てる」と意思表明し、次々に実行しました。年利10%の投資は有利な投資案件といえるでしょう。また万が一ヤマダNEOBANKが経営破綻しても日本では、1000万までの預金は政府が保証してくれます。例えば83万円を12か月積み立てると、総額は996万円になります。これに対して10%の還元が得られると、約99.6万円の利益が生じ、合計で約1,095.6万円となります。

+10%のポイントはヤマダ電機のポイントですが、約100万円のポイントが積み立てることで手に入るとあって、特殊ですがかなり有利な投資といえるでしょう。

しかし、アクセスの集中が原因か、思惑を外れた状況に対するせめてもの抵抗なのか、2024年11月29日正午過ぎにはキャンペーンサイトが閲覧できない状態になり、その後、新規申し込みが制限されており、サービスページが閲覧できない状態が続いています。

家電量販店にとって多角化は避けられない路線

ヤマダ電機のような家電量販店は人口が減少する高齢化社会は大きなリスク要因です。核家族化が進み、家電の単価も減少していますし、今後人口が減少すれば売上に大きな影響があります。

ヤマダ電機、多角化戦略の必要性と今後の展望

家電量販店業界で最大手の一角を占めるヤマダ電機(ヤマダホールディングス)は、業界内外の変化に対応するため、積極的な多角化戦略を進めています。家電製品を主力とした経営基盤に加え、新たな分野への進出は、持続可能な成長を目指す上で必須の選択肢でした。


1. 多角化の背景

  1. 家電市場の成熟化
    • 日本国内の家電市場は既に成熟期に達しており、大幅な成長は見込みにくい状況です。
    • 少子高齢化の影響で、長期的な市場規模の縮小が予測されます。
    • 消費者の買い替えサイクルが延びたことで、従来の売上拡大戦略には限界が生じています。
  2. 競争環境の激化
    • 他の家電量販店やインターネット通販業者との競争が激化しており、価格競争が収益性を圧迫しています。
    • 特に、オンライン販売チャネルが増える中で、従来型の店舗ビジネスに頼るだけでは収益の多様化が難しくなっています。
  3. 新たな市場ニーズの出現
    • 住宅リフォームやスマートホーム関連サービスなど、家電周辺領域の市場が拡大しています。
    • 持続可能性や環境意識が高まる中、エコ商品や住宅分野へのニーズが増加しています。

2. ヤマダ電機の多角化の取り組み

ヤマダ電機は、家電販売を基盤にしながら、以下の分野への多角化を推進しています。

  1. 住宅事業
    • 住宅リフォームや新築住宅の提供を行う「ヤマダホームズ」を設立し、住環境事業に本格進出。
    • 省エネ家電やスマートホーム技術を活用し、家電と住宅の統合サービスを展開。
  2. リフォーム・エコ事業
    • エコ家電と連動したリフォームサービスを提供し、エネルギー効率の高い住宅改修に特化。
    • 太陽光発電や蓄電池、電気自動車(EV)充電設備の導入支援など、環境重視の事業を強化。
  3. 金融サービス
    • ヤマダNEOBANKを通じた金融サービスや、積立預金キャンペーンの実施。
    • 家電購入と金融サービスを組み合わせた新しい顧客体験の提供。
  4. 物流事業
    • EC市場の拡大に伴い、自社物流網を強化。
    • 配送スピード向上や、ラストワンマイルの効率化を進め、競争力を高めています。

3. 多角化の課題と今後の展望

課題

  • 初期投資負担: 多角化に伴う新規事業の立ち上げやM&Aには多額の投資が必要。
  • シナジー効果の最大化: 住宅事業や金融事業と既存の家電事業をどのように統合し、収益を増やすかが課題。
  • 競争激化: 各分野での専門業者との競争に直面。

今後の展望

  1. 家電事業との相乗効果
    • 家電と住宅、リフォーム事業を組み合わせた「トータルライフ提案型」ビジネスモデルを確立。
    • 例:リフォームと連動した家電セット販売や、スマートホーム機器のトータル提案。
  2. 地域密着型戦略
    • 地域ごとのニーズに応じた店舗運営やサービス展開を強化。
    • 高齢者向けサービスや地方店舗のリフォーム需要掘り起こし。
  3. デジタル化の推進
    • ECサイトの強化や店舗のデジタル化による顧客体験の向上。
    • オンラインとオフラインを融合した「オムニチャネル戦略」を加速。

ヤマダ電機の多角化戦略は、家電市場の成熟化や競争激化といった課題に対応し、持続可能な成長を実現するための必須の取り組みです。家電販売の枠を超え、住環境やエコ事業、金融サービスなど多岐にわたる分野で新たな価値を提供することで、次世代に向けた競争力を確保していくでしょう。

今後は、多角化による課題を克服しつつ、既存事業とのシナジーをいかに最大化するかが、成長の鍵となります。

ヤマダ電機にとっての銀行事業の位置づけ

そんな多角化のハブのような役割を果たすのが、金融サービス分野への進出でした。2021年7月にスマートフォン専用銀行サービス「ヤマダNEOBANK」を開始しました。ヤマダNEOBANKは、住信SBIネット銀行の「NEOBANK®」サービスを活用し、ヤマダHDのグループ会社であるヤマダファイナンスサービスが銀行代理業者として運営しています。

このサービスは、ヤマダデジタル会員専用のスマートフォンアプリ「ヤマダデジタル会員」内で提供され、預金や振込、住宅ローンなどの基本的な銀行サービスを利用できます。

ヤマダHDは、家電販売だけでなく、住宅事業やリフォーム、インテリア、家具など、「暮らしまるごと」の提案を進めています。銀行事業への参入は、これらの事業と金融サービスを組み合わせることで、顧客の生活全般にわたるサービス提供を目指す戦略の一環です。例えば、住宅購入時に家具や家電の購入費用を組み込んだ住宅ローンを提供するなど、グループ内のシナジー効果を高めることが期待されています。

今後の展望

ヤマダNEOBANKの導入により、ヤマダHDは金融サービスを通じて顧客との接点を増やし、グループ全体の売上増加に寄与することを目指しています。今後は、デジタル決済サービス「ヤマダPay」との連携強化や、デビットカード機能の拡充など、顧客利便性の向上を図る予定です。また、ポイント還元などの特典を通じて、顧客の囲い込みを強化し、家電販売や住宅事業との相乗効果を高める戦略を進めています。

このように、銀行事業はヤマダHDの多角化戦略において重要な位置づけを占めており、顧客の生活全般をサポートするための基盤として機能しています。かつてはコジマ電機がスルガ銀行の経営再建に手を上げたのも同じ状況を踏まえてのことでした。

スルガ銀行はアパートマンションローンをサラリーマン投資家に貸し付ける際に、違法な書類改ざんや法律違反の不動産物件自体を特定して融資スキームを組むなど営業目標を達成するために不正な取引に手を染めました。その結果株価が大幅に下落する事態になり、監督官庁である金融庁からの行政指導が2018年から解除されないまま続いています。そんなスルガ銀行の体質に嫌気がさしたのか、コジマ電機は2022年にはスルガ銀行から手を引いています。

ヤマダHDはそんなコジマをしり目に銀行業を開始していたのでした。

でもなぜ今この破格のキャンペーンを実施しているのか?

前述のように、ヤマダNEOBANKに関しては2021年から取り組んでいます。いまさらこんなキャンペーンを行う必然性はどこにあったのでしょうか?あくまで憶測にすぎませんが、最近の多角化により、ヤマダ電機のキャッシュフローが急速に悪化していることが原因ではないかとSNS界隈ではささやかれています。

実際にみてみると、ヤマダHDは、2024年3月期において営業CFとFCFが増加し、現金等残高も増加しています。しかし、2025年3月期第2四半期では営業CFがマイナスとなり、投資CFのマイナス幅も拡大しています。一方で、財務CFがプラスに転じ、現金等残高が増加しています。これらの動向は、事業運営や投資戦略、資金調達の変化を反映していると考えられます。

営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)

営業CFは、企業の本業による現金の流入出を示します。2024年3月期の通期では545億5,900万円のプラスとなり、前期から24.73%増加しています。しかし、2025年3月期第2四半期では59億6,000万円のマイナスとなっています。家電事業その他の実質的な事業で約600億円も業績が悪化しているのです。コロナ禍が収まり消費も一巡したが経済は好転していない。そんな状況を反映した業績に見えるわけですが、大赤字に対して何らかの資金需要があったのではないかという憶測は可能です。

少なくともSNS界隈の投資家筋はこうしたヤマダ電機の赤字額を理解した上で、ペイオフぎりぎりまで積み立てを行っています。真偽のほどはわかりませんが、銀行業にかけるヤマダHDの取り組みが大きく取りざたされた今回の騒動。

今後の動向に注目が集まっていますし、もし受付が再開された場合、かなり安全度が高い大きな投資チャンスといえるかもしれません。

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