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ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『ネゴシエーション』

ドラマ「正直不動産」に学ぶ―『ネゴシエーション』

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『正直不動産』は、2022年春に、NHK『ドラマ10』枠で放送された、不動産業界の裏側をコミカルに描いた作品である。ドラマを題材に不動産取引で気を付けるべきことを学んでいこう。第15回は、『ネゴシエーション』である。

ネゴシエーションとは

ネゴシエーションとは、『折衝・交渉』を指す。営業の場面だけでなく、社内調整においても重要なスキルである。さらに、個人においても、このネゴシエーションが必要な場面がある。その一つが婚活である。特に、お互いの結婚観が異なる場合、その調整にお互いが、ネゴシエーションを仕掛け、恋の綱引きを展開することになる。

永瀬の結婚観

永瀬はモテる。まず、顔が良い。さらに、筋肉質で、口もうまい。モテ要素しかないといって良いだろう。当然、逆ナンも、日常茶飯事である。しかし、永瀬には、結婚願望がない。永瀬は語る。『結婚は人生の墓場ですね。この言葉、知ってますか?人生最良の日は、結婚式の日で、最悪の日は、それ以降の毎日だ。24時間、365日、赤の他人と暮らすなんて、ただのバツゲームでしょう。』そう、永瀬は恋愛はしても、結婚はしない主義なのだ。 

榎本の結婚観

榎本は、秋田美人の銀行員だ。彼女には、結婚願望がある。田舎のおばあちゃんに、花嫁姿を見せたいのだ。しかし、相手が誰でも良いわけではない。まともな仕事に就いていて、犯罪歴がなく、体が丈夫で、食べ物の好き嫌いがなく、犬好きで、縦列駐車が得意で、イケメンであることが、結婚相手に求める条件だ。そんな榎本の目に留まったのが、永瀬である。めったにない、はぐれイケメンという外面特性に加え、正直営業という内面的なスタイルに惚れたのだ。永瀬というターゲットに狙いを定め、榎本の婚活が始まった。

榎本の婚活

ネゴシエーションを成功させる為の第一歩は情報収集だ。榎本も、永瀬の情報を出来る限り集めた。しかし、どうしても手に入らない情報があった。住所だ。タワマンであることは確からしいが、特定できない。永瀬に詳しい、月下すら知らぬのだ。そこで、榎本はリスキーな行動に出る。会社帰りの永瀬を尾行したのだ。そして、永瀬の意外な姿を目にする。なんと、昭和感満載の古びた木造アパートに入って行ったのだ?榎本も、驚愕だ。たまらず、声をかける。『永瀬さん、ひょっとして、ここに住んでるんですか?』タワマンイメージが強い永瀬にとって、このアパート暮らしは、トップシークレットであった。永瀬が、榎本の手を取る。『この事は、二人だけの秘密にしてください。』永瀬の極秘情報を入手したことで、榎本は結婚に一歩近づいた。

榎本は、実に積極的だ。翌日から、永瀬が住むボロアパートに毎晩、訪れた。もちろん、武器を携えて。手作りの夕食だ。『うまい。』榎本の手料理が、永瀬の胃袋を掴まえた。永瀬が、住まいについての本音を語る。『このボロアパート、最近、悪くないなって思ってて。なんか、ここだと生活してるって感じるんですよ。』一見、高級志向に見えた永瀬の気取らない生活感に、榎本が微笑む。『ますます、貴方が気に入りました。永瀬さん、私と結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?私は、永瀬さんの嘘を付かない正直なところが好きなんです。』堂々の逆告白である。だが、永瀬は、回答を保留する。榎本は、彼女として理想的ではあるものの、永瀬には、やはり結婚が重いのだ。しかし、この日から、永瀬の部屋が様変わりを始めた。段ボールの山は片付けられ、花なども生けられた。榎本の働きである。そして、榎本との夕食が、永瀬の新たな日常となった。確実に二人の距離は縮まっている。ただ、榎本には不安があった。月下の存在だ。いつも、永瀬の隣で、笑顔をふりまいている。二人は、付き合っているかもしれない。『月下ちゃんとは、何でもないですよね。』榎本は、永瀬に不安をぶつける。『あいつは、只の後輩です。』榎本は、永瀬の目を確かめる。『うそを付いていない目ですね。』そう、恋愛でも、永瀬は、正直なのだ。

永瀬のプロポーズ

そんな、榎本の婚活が暫く続いたあと、遂に、永瀬が榎本を呼び出した。榎本の逆告白に答える日が来たのだ。一流、営業マンの永瀬は、雰囲気づくりにも気を配る。ずばり、夜景が綺麗な公園だ。プロポーズの舞台は整った。榎本の手をとり、永瀬が告げる。『榎本さん。貴女と暮らしていく中で、貴女の優しさや、素敵なところを沢山知ることができました。僕と、結婚を前提に付き合ってください。』しかし、見事にゴールに到達したはずの榎本の目には、悦びがない。『永瀬さん。私をバカにしています?私は、あなたの正直なところが好きなんです。今の永瀬さんの言葉には、真実が一つも感じられません。』そういって、帰っていった。実は永瀬、神頼みで一時的に嘘が付けるようになっていた。だが、榎本には、そんな薄っぺらいライアー仕様のプロポーズなぞ、何の魅力も感じられなかったのだ。

二人の結末

二人はこのまま終わってしまうのだろうか?いや、永瀬は二人いる。ライアー永瀬とオネスティ永瀬である。こないだは、ライアー永瀬が失敗しただけだ。オネスティ永瀬のプロポーズが、まだ残っている。今度は行きつけの居酒屋だ。オネスティ永瀬は、あまり場所にもこだわらない。正直一本で勝負をかける。『榎本さん。こないだは大変失礼しました。貴女の言う通り、先日の私の言葉には真実がありませんでした。改めて、結婚を前提に。』ここで、一陣の風が吹いた。『する気なんて、一ミリもありません。もっと、ライトに、楽しく付き合いましょうよ。どうです。今夜は、ホテルに泊まりませんか?』オネスティ永瀬の真骨頂だ。例え、榎本が相手でも、永瀬にとって、結婚は墓場でしかないのだ。楽しく恋愛ができれば、永瀬は満足なのだ。これを聞いて、さすがに榎本も呆れる。『それは正直じゃない。正直な馬鹿よ。』そう言い残して去っていた。そして、二人は、二度と付き合う事はなかった。

今日も榎本は婚活中だ。ただ、永瀬と付き合ったことで、結婚観が少し変化した。『私の理想の相手は、まともな仕事に就いていて、犯罪歴がなく、体が丈夫で、食べ物の好き嫌いがなく、犬好きで、縦列駐車が得意で、イケメンで、馬鹿正直ではないこと。』正直は大事だが、もう馬鹿正直はお断りなのである。

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