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ドラマ「クロサギ」に学ぶ―『導入詐欺』

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クロサギ

詐欺師を騙す詐欺師。『クロサギ』。TBS系金曜ドラマ」枠で放送された。ドラマで描かれた様々な詐欺を題材にその手口を学んでみたい。第8回は、『導入詐欺』である。
今回でこの「クロサギ」シリーズは完結。最後はどのような詐欺だったのか?
※今回もネタバレとなりますのでご注意ください。

人はなぜ詐欺に騙されるのか?

人はなぜ詐欺に騙されるのだろうか?結論から言おう。心に隙があるからである。シロサギは、心の隙に忍び込み、罠をかける。隙が大きければ、大きいほど、人は容易に騙される。もちろん、人それぞれに、隙の様相は異なる。では、具体的に、見ていこう。

性善説の隙

騙されやすい人の典型は、性善説信者であろう。騙されても、人を信じて、また騙される。それでも、困っている人を見るとほっておけない。これほど人が良ければ、騙されないほうが、不思議だろう。隙というより、全開なのだ。クロサギは言う。『契約書だけで信じず、実態を見ないとね。』自らの隙に気づき、自己防衛から始めよう。

高齢の隙

振り込め詐欺などのターゲットは、圧倒的に高齢者である。高齢者は概して、老化などにより、判断力が低下している。これが、隙となる。しかも、相談相手は少ない、財産はあるなどの特性もみられる。まさに、シロサギの格好の餌食なのだ。クロサギは言う。『ちょっと周囲を見渡せば、違った景色も見えてくるよ』と、周囲の協力を得ることで、不足している能力をを補っていこう。

欲が生む隙

性善説信者や高齢者は、詐欺に対する耐性がとりわけ低い。常に、大きな隙がある状態だ。しかし、詐欺に対する耐性があり、日頃は騙される事がない人も、特殊な状況におかれると、やはり騙されてしまう。なぜだろうか。皆、なんらかの欲があるからだ。欲に駆られて、思考のバランスを崩し、そこに隙ができるのだ。そして、シロサギは、巧みにこうした状況を創り出し、心の扉をこじ開ける。

ドラマでも、様々な人達が、欲に駆られ、隙を作って、騙された。起業を志し、無料セミナーに出席して、騙された人もいる。楽して儲かる闇バイトに手を出した人もいる。デートに誘われ、詐欺の片棒を担がされた人もいる。もちろん、欲や夢があることは、当たり前のことである。ただ、夢中になりぎず、思考のバランスは保つように、注意を払いたい。

知識の差が生む隙

専門家と素人では、その知識量に大きな差がある。企業と個人の間でもそうだ。この知識量の差が、隙となる。そして、専門性が高いほど、この隙は大きくなる。

契約は、こうした専門性の一例である。シロサギは、契約に関する知識の差を利用して、通常あり得ない契約を結ばせる。契約書を正しく理解するには、高度な法律知識が必要だ。自分の努力だけでは、なかなか難しい。そこで、専門家の力を借りよう。法テラスや、消費生活センターなら、適切なアドバイスを得られる。

また、圧倒的な知識量は、信用に繋がる。その最たるものが、銀行員である。誰もがその言葉を容易に信じ、疑わない。そんな力を持った、もし、銀行員が、私利私欲に走ったら、どうなるか?最後に、銀行員が仕掛けた詐欺、導入詐欺を見ていこう。

導入詐欺とは

導入詐欺とは、融資に見せかけた、銀行の債権回収手段である。まず、銀行は、弁済能力を欠く顧客に、敢えて、小会社のファイナンスから融資を受けさせる。次に、顧客が、その融資で、銀行からの借金を返済する。これで、銀行は不良債権を回収できる。但し、顧客は、金利が高い借金への借換えとなり、ますますの苦境に追い込まれる。

クロサギの父は、導入詐欺のターゲットにされ、破産に追い込まれた。仕掛けたのは、銀行員の顔を持つシロサギ、ホウジョウだ。手口はこうだ。多額の借金に苦しむターゲットに、『3000万円、ご融資出来ますよ』と満面の笑みで、救いの手を差し伸べる。『通常の方法では、ご融資することが難しいお客様でも、一ヶ月だけ銀行にお金を預けて頂くことで、特別にご融資が可能です。』この時、ターゲットの目には、ホウジョウの顔が仏に見えたことであろう。信用ある銀行員の言葉だ。疑問を差し挟む、余地もない。預ける先も銀行だ。お金が無くなる心配はない。しかし、一ヶ月後に、ホウジョウの悪魔の顔を見ることになる。なんと、銀行に預けたはずの大金が、勝手に借金と相殺されたのだ。想定外の出来事に、必死の形相で助けを求めるターゲットを、『そのような契約であれば、仕方ないですね。』とホウジョウは、平然と突き放す。この時、初めて、ターゲットは、騙されたことに気づく。怒りを込めて、言い寄るも、『お力になれず、申し訳けありません。』と謝意のない、詫びで応える。融資を受けたはずのターゲットが手にしたものは、金利の上乗せと絶望だ。一方で、ホウジョウは、不良債権の回収に加え、金利の高い融資を行い、実績の二段重ねを手にするのだ。こうして、ホウジョウは、銀行の役員にまで昇り詰める。自分の出世のために、客を喰いものにするシロサギ、それがホウジョウなのだ。

ホウジョウの隙

ホウジョウは、クロサギの真の仇であり、かつてない強敵である。まず、メガバンクの役員という圧倒的な社会的信用がある。その裏で、フィクサーのマネーロンダリング係であり、シロサギ界でも重鎮だ。そんなホウジョウの夢はでかい。『ギガバンク、テラバンクという超巨大銀行を作り、日本経済界を支えたい。』と語る。そして、この夢の実現に向け、裏の顔を大きく覗かせていく。フィクサーは忠告する。『表と裏のバランスの良さがお前の武器だ。そのバランスを大事にして裏の顔を出し過ぎるなよ。ひずみが隙を生み、隙が破滅を招く。』だが、夢実現が見えてきたホウジョウに、最早、聞く耳はない。この隙をクロサギが、突く。命を賭けた喰い合いの末、不正の証拠を入手し、警察に渡したのだ。銀行も、ホウジョウをあっさりと切り捨てる。そして、夢破れたホウジョウに、法の裁きが待っている。

法治国家では、個人に復讐する権利はない。仇討ちを許せば国家は崩壊する。 法の無力に絶望し、仇討ちを重ねたクロサギも、最後は、法に従った。

最後に

今回は8回に渡り、ドラマ「クロサギ」を題材に詐欺の手口を見てきました。如何だってでしょうか?最後は銀行員の信用を逆手に取った「導入詐欺」という詐欺でしたが、融資を使って債務者から利益を貪り取るという恐ろしい詐欺の手口です。お金が無い人からも搾取できるのですから。(どこかの投資用不動産ローンの詐欺被害を思い出しました)

詐欺師はあなたのすぐ隣まで忍び寄って来ているかもしれません。自分は大丈夫と過信せずに常に詐欺に関する情報収集を怠らないことが詐欺被害に遭わないための一番の対策と言えるのではないでしょうか?詐欺の手口はどんどん進化していきます。

家族や大切な人を守るためにも情報収集を怠らないようにしましょう!

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